ぼくの愛を食べて生きてよ
恋だの愛だのと押し問答する槍弓がすきです。そして最終的に根負けしちゃう弓はもっとすきです。■タグありがとうございます!賛同者がいてくださって嬉しいです結婚を前提にお付き合いしてくださry
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すきだ、と告げると薄い瞼がぱちりと見開いた。そうして瞳は細まって、やわらかな唇がまあるく弧を描く。冷ややかな鈍色の目は、何時だっておれの愛に応えてくれるのに。
「私もだよ、ランサー」
――どうしても分からないのだ。おれはこいつの言葉が信用できない。
いや、信用できないというのは流石に失礼な話だ。どう言ったらいいのだろう。アーチャーのような、歌うように嫌味を吐けるほど語彙がないから上手く言えやしないが、腹の底が見えないというのか、「好意」の感情を何処か別のところに切り離しているというか。
結論を言えば、アーチャーはおれの愛を信じていない。
おれを好きなんだろうな、とは分かる。その控えめに注がれる視線から、その躊躇いがちに伸びる指先から、痛いほど愛が伝わっている。だけど、どんなにアーチャーに触れても心には触れられない。いくら強く抱きしめても優しくキスをしても甘く身体を重ねても、あいつの本心に届かない。もどかしい距離。触れる度に感じるおれのこの幸福を、あいつに感じてもらえないのは寂しくて、むなしい。
「なあ、好きだ。嘘じゃねえ」
「まさか、君が私に嘘をついてなんの得があるというのかね」
知っているとも。と、言ってのけるアーチャーの頬を両手でがしりと挟み込む。顔との距離を詰めるとたじろいだ様子のアーチャーと目が合った。まっすぐ。はっきり。真剣。
すきだ。
アーチャーの表情が曇った。
「どうしたんだ」
「好きだ。お前がすき、すきだ。本当にすきなんだ」
「なに、を、今さら。知っているとも」
「いいや、お前はもっと思い知るべきだ。おれが、アーチャーを、好きなんだ。本気で好きだ」
「…わかってる」
「分かってねえ!」
「、」
「必要なんだ。お前が想ってくれるのと、同じように」
形の良い眉が歪む。かなしい顔だ。たまに見せたかと思うとすぐに消える本当の表情を、おれは今までずっと見て見ぬ振りをしてきた。けれど。もう無理。待つなんて柄じゃないんだ。
「なあ、すきだ。いい加減分かれよ。馬鹿なくらい好きなのに、信じてもらえねえなんて酷ェ話じゃねーか」
ぐっと首を伸ばして額に口付けた。動揺する肩は無視して、瞼にも鼻先にも頬にも唇にも。ちゅ、ちゅ、と羽のように軽やかにそっと。
生前、惚れた女の父親を殺してまで娶ったのだ。こんな風に穏やかに誰かを愛せるとは思わなかった。男相手など考えたこともない。なのに今や愛おしさが込み上げて止まらないのだ。おかしいだろうか。だけど、こんな優しい恋をしたのは初めてだった。大事に、大事にしたくてたまらない。
―――ぽろり、と。
がらんどう色からこぼれた涙は、海よりもずっと美しかった。
「ランサー、」
「…泣くなよ。お前に泣かれたら、どうすりゃいいかわかんねえ」
「君のせいだというのに」
「だから泣くなってんだ。苛めたみてえだろ」
おれはお前にやさしくしたいんだ。そう続けて、情けなく鼻をすするアーチャーの背中をあやすように叩いた。とん。とん。とん。鼓動のリズムに合わせて宥めていれば、アーチャーはゆっくりと口を開く。
恋だの愛だの馬鹿みたいだろう。無意味じゃないか。
しかしそこで言葉を切って、アーチャーは微笑んだ。
「だが君が、好きだと言ってくれるのなら、もういい」
光る涙の跡を拭って、再び好きだと囁いた。
「私は愛しているさ」
生意気に返してみせるので、その唇にまずは噛み付いてやった。
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- わんわんおJanuary 27, 2025