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誰が想像しただろう/Novel by ぷふた

誰が想像しただろう

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ど素人による槍弓の現パロ妄想ですごめんなさい。 /予想外に反応を頂きまして大変ありがたいです。タグ、コメントともに嬉しくて身悶えいたしました、ありがとうございます!広げた風呂敷をちゃんと畳めるよう努めます。

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 ゆったりとしたソファに男二人が腰掛け、静かに杯を傾けている。
 薄暗い部屋はキッチンのライトが申しわけ程度に点いているほかは、チラチラと踊るテレビの青白い明かりが唯一の光源だ。

 アーチャーは珍しく、そしてランサーはいつも通りにのんべんだらりと酒を酌み交わしていたが、気づけば会話も途切れ、何とはなしに流れるドキュメンタリー番組を眺め続けていた。
 32型の液晶には先ほどから、雪山に暮らすオオカミたちの狩りの様子が高画質の映像で映し出されている。
 厚い冬毛に包まれた一見愛らしい外見を裏切って、執拗に獲物を追い詰めていく彼らの瞳と牙は鋭い。粉雪を舞い上げて軽快に雪原を駈ける美しい獣たちを見ながら、アーチャーはふと、隣の男に似ているなと思った。そう言葉にしかけた舌を寸でのところで縫いとめ、眉をひそめる。少し飲みすぎているかもしれない。
 いいかげん瞼の筋肉は疲労を訴えている。遠距離通勤のサラリーマンや一部業種の人間ならそろそろ起床する頃合いだろう。
 もっとも、大学生という肩書きで生きる若者達にはおおよそあてはまらないことでもあるのだが。

 大型連休を前に、ひと足先に学期末の試験課題を消化した二人には、もはや時間を拘束するものがない。だからといって浮かれて酒盛りに走るような思考回路はアーチャーには存在しないが、例のごとく晴れ晴れしい顔をした友人に誘われれば、断る理由も見つからなかった。

 ランサーとはもともとは所属学部も違う、接点など何もない他人同士だった。それが、たまたま聴講した講義で隣り合わせたのをきっかけに、気がつけば互いの家に入り浸るほどの間柄になっていた。
 人付き合いの悪い真面目な苦学生アーチャーと、交友関係が広く派手な留学生のランサーは、傍目に見れば仲良くやっていけそうな組み合わせではない。その点はまあ、需要と供給が合致した故といえるのかもしれない。
 家庭の事情から学問にバイトに家事まで器用にこなすアーチャーの手料理をランサーはいたく気に入ったようで、とある機会に夕食を振るまってからは、何かと理由をつけて食材を買い込み調理をねだるようになった。
 君の専属シェフになった覚えはないのだが、と口では言いながらも、二人分の食費を負担したうえ美味い美味いと気持ちよく平らげてくれるのは悪い気はしない。時として尊大で皮肉なアーチャーの物言いに堪える様子もないランサーは、彼が今まで人との間に築いていた壁をたやすく飛び越え、するりと懐に入り込んでいた。

 今日だって、さぞ解放感にまかせて学科の仲間達と派手に飲むのかと思いきや、ランサーはアーチャーを誘ってきた。
 お前のメシが食いたい、と満面の笑みで言われ、厭味を返すより先に頷いてしまったのは仕方があるまい。そういうことは将来、嫁にでも言ってやれと内心思うが。

 ──さて、そろそろ休むとするか。
 こまめに台所を往復していたので、いまさら片付けるべきものも見当たらない。
 乾きものは平皿にまとめてあるし、中途半端に中身の残る酒瓶はじきにランサーが空けるだろう。そのままソファで眠りそうな様子だし、寝室のベッドは自分が借りて問題あるまい。
 言葉をかける必要性も感じなかったので、使っていたグラスを手に静かに立ち上がった。
「ん、休むか?」
「ああ、ベッドは借りて構わんだろう?」
「おー」
 自宅までは歩くなりタクシーを拾うなりして帰れない距離ではないが、あえてこの時期、早朝の凍てつく冷気に耐えてまで帰宅を急ぐ必要性は感じない。

 扉を閉めていた寝室は、暖房のきいていたダイニングに比べてさすがに肌寒かった。皺にならないようシャツだけは脱いで肌着になると、アーチャーは逃げるように羽毛布団に潜り、丸くなった。
 眠りの匂いがする。
 ミントやムスクのまざったような香りのなかで感じるのは、ランサーの匂いだ。
 男の体臭など意識しても気持ち悪いだけだろうに、不思議と嫌悪感はなかった。体温の熱がぽかぽかと布団にうつり、じきに眠気がおりてくる。
 遠くでプツ、と電子音が途絶えるような微かな音が聞こえた。テレビを消したのか。ゆっくりとした床鳴りが聞こえる。あちらも眠る準備に入るのだろう──。

 一瞬おちた意識は、唐突に流れ込んできた冷気に揺り起こされた。
「んぁ……?」
 なんだ。寒い。口に出そうとした言葉は、なだめるような囁きに遮られる。
「あーごめんな、いいから、寝てろ。んでちっとつめて」
 うーさみぃ、と呟きながら隣に滑り込む体に、なんで君までベッドに入ってくるとか、ソファで寝るんじゃなかったのか、とかの疑問はもはや浮かばなかった。
 眠いのだ。布団をめくられた拍子に入り込んだ空気がはやく温まればいいのに。隣でこちらの熱を奪う体も。
 心を読んだかのように、相手の腕が伸びて、向かい合わせのままアーチャーを抱き寄せた。おまえあったけー、とかいう身勝手な台詞が聞こえる。こちらはさむい。いいからとっとと温まってくれ。
 冷気を追い出したくて肩を寄せ隙間を埋めると、そのまま頭と背中を抱え込まれた。さらに逃がさないとでもいうように、片足がのっしと太腿にかけられる。私はあれか、人間湯たんぽか。
 いったん布団に入ればじっとしていても熱があがるだろうに、まるで部屋の寒さが増したみたいに、ランサーはますますアーチャーを抱き締める。
 はやく夏になればいいなー。一緒に海行こうぜ、海。
 ──真冬に言うには高望みが過ぎるぞ。
 そういえばアイルランド出身の彼は、灼熱の太陽や焼けるような砂浜にはあまり馴染みがないと言っていたか。
「アーチャー?」
 もはや口を開くのも億劫で、答えるかわりに喉を鳴らして上向いた。瞼は持ち上がりそうもない。

 小刻みな吐息が頬にかかって、相手が笑ったのだとわかる。咎める気にならないのは、先ほどから大きな掌が、トントンと子供をあやすようなリズムで優しく背中をたたいているからだ。
 柔らかな感触がそっと鼻筋を撫でた。
 そして温かい吐息に包まれたのを最後に、アーチャーの意識は眠りに沈んだ。



大好きなLily Allenの曲で妄想。アーチャーがいとしすぎて死にそうですたすけて。

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