②なんちゃってカレードリア
「さて、片付けをするか」
夕食時も過ぎ、食堂で騒いでいた団体も去っていった
つまみを作りながら明日の下ごしらえを済ませていたのであとは使用した調理器具を片付けるのみ
それも調理の合間にこまめにしておいたのでほとんど残ってはいない
ぐるりと見回すと大きな寸胴がひとつ
覗きこむと今夜のメニューであった中辛カレーがほんの少し残っていた
ほとんどの者がおかわりを楽しんでいたので5つあった大きな寸胴はそれぞれの辛さを好む者が群がりあっという間に無くなっていった
「ふむ、保存するには少なすぎるな」
鍋からカレーをこそげおとしながら考える
寝る前だがカレーくらいなら夜食として入るか
残れば明日の昼ごはんにでもすればいい
「よし、少し工夫をして食べよう」
カレーの量に合わせグラタン皿を二枚取り出す
冷凍庫にいれる前に冷ましておいたご飯を皿に入れバターを一欠片と残り物の福神漬けを混ぜこむ
その上にカレーをかけて少し窪みを作り生卵を落としまわりにチーズをまんべんなくかける
トースターにグラタン皿を入れ10分様子を見ながら焼く
その間に寸胴を洗って布巾で拭いてしまう頃にはチンとトースターが出来上がりを知らせてくれる
途中焦げが広がりそうだったのでアルミホイルを被せたおかげがチーズも卵も丁度いい焼き加減である
グラタン皿が熱いので木の板の上に乗せてカウンターへ
「よー何か食べるもんあるかー?」
「…よく効く鼻をもっていることだ」
「あ?犬扱いすんなや!大体にしてカレーの匂いなんて犬じゃなくてもわかるっつうの!」
「夜の餌だけでは不十分だったのかね?」
「餌いうな!」
ふぅと息を吐き、持っていたグラタン皿をカウンターに置き
「…どうぞ」
「あ?食べていいのかよ?」
「腹を空かせてるんだろう?夕食でも食べたカレーで良ければ、だがね」
「んじゃ、お言葉に甘えて
て言うか、夕食のカレーより豪華になってんじゃねぇか?」
「何を言う、夕食時は様々なトッピングやバランスのとれたサラダにドリンクを用意していた
これは残り物をつっこんだだけのなんちゃってカレードリア風だ」
「なんちゃってカレードリア風…」
「本気で作ったカレードリアはもっと洗練されている
これとは比べ物にならないよ」
「えー旨そうだけどなー」
「…まぁ元のカレーが良いものだからそれ以下にはならないだろうが、万人受けたでもないだろう」
「じゃあ、ま、いただきます」
「…召し上がれ」
トースターに入っている残りのグラタン皿を持ってきて隣に座る
「うんまー!!え、滅茶苦茶美味いじゃんかよ!」
「そ、そうか」
「あーチーズトッピングって美味いのか…次のカレーの日は絶対やろ
卵も夕飯のときはぷるぷるだったけどこれはちょっと固めなんだな…あ!黄身は半熟じゃん!カレーと混ぜると味がやわらかくなるのがいいよなー」
「…」
「ご飯も何か風味がついてるし、コリコリした食感があって良いな!」
「ご飯はバターを混ぜてある
コリコリしたものは福神漬けだ」
「あーバターなー!ご飯だけでイケるし、フクジンヅケも甘じょっぱいのがスゲーいい
めちゃめちゃ美味いな!!!」
「…それは良かった」
「はー、もう無くなったぜ…
カレーってだけでヤベーのにドリア?ってのがスゲー好きだわ」
ピカピカした笑顔を振りまいて満足そうに腹を押さえる姿に叫びだしたいような気持ちになる
正面に座ってなくて良かった
顔を見られたらまずい気がする
「なー、このあと部屋に戻るだけか?」
「な!う、ぐ」
「おーゆっくり食えよ
ホレ、水飲め」
「う…部屋がどうした」
「一緒に部屋に戻っていいか?」
「…っ!」
「夜食でカレー食べたなんて知られたら何かちょっかいかけられるからさ、このまま部屋に戻りたくないんだわ」
「そ、うか。…まぁそれならば別に構わんが」
「おっサンキュー!」
…自意識過剰にもほどがあるな
期待をしていないといえば嘘にはなるが…
「俺もお前も明日は休みだろ?だから…」
/みんなに内緒の夜食カレードリア