私が2月の末から3月の初めにかけて、ここで「日常、時として起こる火傷は、従来の定説のように、すぐ水で冷やしたりせず、逆に入浴温度か、それよりやや高い程度の湯に、しばらく浸し、浸した当初のジンジンした痛みが和らいでくるまで浸していると、水で冷やした場合より桁違いに早く経過する」という対処法に対して、「そんな馬鹿なことがあるか、火傷は冷やすに決まっているだろう」「危険な誤情報を広めるのは犯罪だ」「年をとって耄碌したのだろう」「晩節を汚さぬように」等々といった、かつて一度も体験した事がない批難の数々が送られてきた。
中には、私の言うことに同意する人の意見も少数あったが、私がこの「火傷は温める」という事を発表し始めてから一度もなかった批判の嵐である。
しかし、この現象は心理学を専門にされている研究者や社会学者にとっては「人間の思い込み」ということが、どれほど深く多くの人達の意識に刷り込まれ、それが今後どのように変わっていくかを見ることが出来る滅多にない機会ではないかと思う。
何しろ、今後この「火傷は温める」という処置法の話題がより大きく社会に広がっていけば、公平な視点を持った人もこの事に関心を持つようになるだろうし、そうなれば冷静にこの課題と向き合う人も出てきて、海外の研究で、「火傷は冷やす」とは違う研究論文にも気付くようになるだろう。
そうなってくれば、声高に 私を罵っていた人たちは 次第に 黙るか 、 いろいろと 理屈をつけて 自己弁護をするようになるだろう。
何しろ、この「ちょっとした火傷は温めた方が冷やすより、ずっと早く回復する」という事は事実なのだから。
私は武術の研究を通して人間の思い込みにより、ちょっとした手の向きの変化にも多くの人が長年気付いていないことを見つけだした。
例えば寝ている人を起こす時、頸椎から胸椎にかけての辺りに掌側を当てて起こそうとする一般的な方法より、親指を鉤がたに曲げて緊張させた手の甲側を、頸椎から胸椎の辺りに当てて起こした方が、遥かに楽に起こす事が出来る事に気付き、それを伝えて来た。
この方法は「古武術介護」という名称で、かなり世間に広まっている。
あらためて考えてみれば、私が「火傷をした時、冷やさずに温める」という方法に接した時、驚きはしたが、同時に強く興味を持ったのは、日頃から常識的方法が、最善とは限らないという事に、常に意識が向いていたからだと思う。それに、この「火傷は温める」という処置法は、別々に複数の方々から呈示されたので、わざわざ複数の人が、出鱈目な処置法を、私に知らせる確率は極めて低いと考えられたからである。
最後にあらためて言うが、この「火傷は温める」という方法は、日常のちょっとした、皮膚に損傷のない、熱湯が手にかかったり、熱い鍋に触れてしまった火傷に有効な処置法で、とにかく火傷してから温めるまでの時間が勝負である。
湯沸かし器のある場所でなら、すぐ湯が得られるだろう。電子レンジに濡れたタオルなどを入れ、それで覆うという方法もある。ジンジンと激しく痛むが、それが和らいだら数時間後から1日も経てば、火傷した事も忘れるぐらいになっていることが多い。
新しいことにチャレンジする気持ちを持たれている方で、たまたまちょっとした火傷をされた方が試されれば、その効果はまさに身体で納得されると思う。