見なよ世界、私の太陽を
特別エキシビションでアイスダンスをする事になり一度限りの復活を果たしたひとつかペアと、そんな彼等を取り巻く周囲の話。
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「特別エキシビション?」
「はい!」
何処か熱の籠った目線で此方を見上げる女性に、瞳は困惑の視線を返した。彼女の説明を掻い摘んでまとめると、新たなアイスダンス大会の設立に際して大会前に“元“選手達によるショーを行う、という企画が進行しているらしい。そのショーの出演者として声が掛かったのが瞳という訳だ。何やら電話口でも強烈な勢いで捲し立てられたが、どうやらこの女性は選手時代の瞳のファンでもあったようで妙に此方に対する押しが強い。
「是非とも其処に高峰瞳選手に出ていただきたく!!」
「そうねぇ…」
「高峰選手なくして今回のレジェンド達による特別エキシビションは完成しないんです!!」
瞳とてアイスダンスに対する想いは強い。実際にコーチとして今でも関わっているわけでもあるし。それにアイスダンスは兎角大会が少ない、経験がものをいう世界において一つでも他者と鎬を削り合う機会が増えることは喜ばしいし、その大会が盛り上がれば引いてはアイスダンスの広い普及にも繋がる。そもそも父もこの大会の設立には関わっていたので自分も力になりたい。まぁ多少のブランクがあるのは辛い所ではあるけれど、
「分かりました、喜んでこのお話受けさせて頂きます」
「ッ!!ありがとうございます!!……あっ、ではパートナーの方はどうされますか?」
「え?」
この人、司くんのこと知らないのかしら。宜しければ何人か候補の方も見つけてきましたよ!なんて鞄から取り出した資料を机に並べる姿に、瞳は思わず首を傾げる。
「パートナーは当然、明浦路司でお願いします」
「えっ」
「……何か?」
「でも、だって…彼は、貴方の経歴に傷を付けたのに?」
ヒュッと自分の喉が締められたかのような心地になった。彼が周囲からどう評価されているのか、それは瞳もよく分かっているつもりだ。幾ら彼女があれは二人の失敗だ、誰も悪くないなどと言い回ろうともそれを瞳の優しさと思い込んで信じてくれない人達は多い。それ故に彼がこのクラブの保護者達から厳しい目で見られていることも気付いてはいる。それでも、瞳が動けばそれは逆効果にしかならず、だからアイスダンスのコーチとして彼を認めさせたかったのに何の因果か彼は才能の塊に見つかってシングルの道に行ってしまった。まぁ司くんが楽しそうだからそれは良いんだけれど。それでも、いまだにこうして面と向かって彼を貶されると如何に瞳といえども穏やかではいられない。
「あれは彼のせいではありません」
「でも!」
「もし、貴方がそう信じているのなら私達のスケートを見てもう一度、判断してください」
私のパートナーは明浦路司でお願いします。そうキッパリと言い切って、今だに名残惜しそうなスタッフを急かすように瞳は追い返した。多少強引であった自覚はあるが構うものか、こうなれば全員に思い知らせてやるしかない。いのりちゃんの言葉を借りるなら、『見なよ、私の司を』作戦である。
「お疲れ様です!!……あれ、お客さんでも来てたんですか?」
「司くん!」
「はい?」
「死ぬ気でやるわよ……」
「何を!?」
難点を言えばご存知かも知れませんがペアではなくカップルです。ペアだとペア競技のことになります。 ひとつかカップルは現役復帰してコーチ兼選手でもいいと思いますが