なぜかスルーされる少子化の本質的な構造的要因「20代での第一子出生率の低下」がすべて

荒川和久
独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
写真:イメージマート

止まらない少子化の要因

先ごろ発表された人口動態統計2025年速報値でも、出生数は前年比2%減。外国人を含む出生数は70.6万人だが、日本人のみの確定報見込みとしては67.1万人程度となるだろう。いずれにせよ、過去最少を更新していることに変わりはない。

日本のみならず少子化は世界的なもので、出生率の低下を止められている先進国はひとつもないが、少なくとも「なぜ出生率が低下しているのか」という要因は各国共通して明確で、以下のふたつである。

1.第一子出生率の低下

2.女性20代の出生率の低下

出生率減少は上記ふたつの要因に尽きると言っても過言ではない。

参照

「20代が結婚できない」韓国と中国の現状を見て、日本が最優先でなすべき少子化対策とは?

第一子出生率の低下

まず、第一子出生率の低下が出生率低下の決定要因となっている事実から説明する。

人口動態調査結果から、出生順位別の出生率の推移を、2000年を起点として2024年まで第一子、第二子、第三子以上の何がマイナス要因となっているかをまとめたものが以下のグラフである。

ここで明らかなように、マイナス要因として最大なのは、第一子の出生率の低下であること。全体の出生率を押し下げるトリガーとなっているのは常に第一子出生率で、反対に押し上げた場合も第一子出生率がそれほど減少していないか、増加している場合である。近年全体が急降下したのも、この第一子出生率が大幅に減少したことに尽きるわけである。これは至極当たり前の話で、第一子が産まれない限り、第二子も第三子もないからだ。

一人以上産んだ母親が出生する子どもの数は減ってはいない。第一子を生んだ母親のうち約8割近くが第二子を産む。これは1995年頃から全く変わっていない。さらに、第二子を産んだ母親が第三子以上を産む割合も大体3割で、これも長期的に不変である。

つまり、一人の母親が生む子どもの総数が減っているのではなく、そもそも結婚して第一子を生む数が減っているからこその出生減であり、私が「少子化ではなく少母化」と繰り返しお伝えしているのはそのことである。

参照

「少子化ではなく少母化」婚姻減が生み出す少子化加速の負のスパイラル

すでに子のいる夫婦に第二子、第三子を産んでもらえば少子化解決などという論があるが、それが間違いであることはこれでおわかりだろう。肝心なのは第一子であり、少子化とは「第一子が産まれない問題」に尽きる。

第一子出生がない限り出生率は永遠に下がり続けることになる。

20代出生率の低下

そして、この「第一子が産まれない」問題を年齢別統計と組み合わせると、浮かび上がるのは20代での第一子出生減少が大きな要因であることだ。

以下は、第一子だけを抽出して年代別の出生率の推移をグラフ化したものである。

30代以上での第一子は増えているのに、それを全て帳消しにしてしまうほど20代での第一子出生が減っていることが明らかである。

これら出生順位別と年齢別の出生率推移から導き出される結論は、「出生減は、20代での第一子が産まれないことに尽きる」と言える。

加えて、統計的事実からは、35歳以上の出生率が極端にあがっていないことも事実で、決してイメージで語られているような晩産化などは起きていない。晩産化という後ろ倒しになったのではなく、20代までに減った分はそのまま全体のマイナスになってしまうということである。

逆にいえば、この「20代女性の第一子出生率」の減少を改善しない限り、出生率を下げ止まらせることは不可能ということだ。そして、これらふたつのもとになるのは20代婚姻率の減少である。

つまり、少子化とは20代婚姻率の減少を抑えない限り絶対に解決しないのだ。

20代の人口が減っているのだから婚姻数が減るのも当然だという論があるが、数の問題ではない。婚姻率、特に20代の初婚率が減っている。

子育て支援の皮肉な逆効果

これは事実として明確で、さすがに政治家も官僚も自治体も承知の話なのだが、なぜか少子化対策といえば相変わらず「子育て支援」一辺倒に終始している。

残念ながら、そこにどれだけ予算をかけても効果は出ないこともすでに証明済みである。

それどころか、繰り返しお伝えしている通り、子育て支援を拡充すればするほど、今いる子に対する投資選好が高まり、一人当たりの子育てコストの意識インフレが進み、夫婦当たりの子どもの数も減少させる上に、そうした「子育てには金がかかる」という意識は、そもそも若者が結婚しようとする意欲を失わせるという二重の逆効果にしかなっていない

参照

「予算3倍増なのに出生数3割減」年間11兆円もの子育て支援関係予算は何に使われているの?

ここ10年で急激に進んだ「子どもを持てるかどうかの経済的階級制」どんどんしぼんでいく所得中間層以下

20代の若者が「子どもはほしくない6割」というニュースがあったが、「ほしくない」のではなく20代で結婚して子どもを持つことのハードルがあがりすぎているのだ。世帯年収800万円以上でなければ結婚も出産もできないということになれば、企業勤務や公務員を除く経済階級3割以下の7割の若者は「とても無理だ」と諦めざるを得ないだろう。

参照

若者の6割「子どもはほしくない」の背景にある現実的な問題と皮肉な結末

物価高より深刻な結婚のインフレ「20代で結婚するには夫婦合わせて最低800万円以上が必要?」

「結婚すること、家族をもつことには、経済的要件を満たさなければその資格がない」というような社会では、絶対に少子化は加速していくばかりであり、皮肉にも今までの少子化対策はそれをより強固なものにしたに過ぎない。

いい加減に、対策や予算の効果検証をした上で、抜本的に「本質的な課題解決」に向けての真摯な見直しが必要だろう(少子化をなんとかしたいと政府が本当に思っているならば、の話だが)。

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広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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