「今気になるのは、年上の先輩たち!」と語る神崎恵さんが、会いたい人に会ってじっくりと話を聞く、対談連載がスタート。記念すべき第1回は、「ずっとお会いしたかった」と、恋焦がれてきたファッションデザイナーの島田順子さん。終始興奮が止まらない対談となりました。
ファッションデザイナー
★1 「マフィア」の社長と島田さん。素足に真っ白いスニーカースタイルが眩しい。
★2「キャシャレル」時代、仕事で香港を訪れたときの一枚。革のパンツにトレンチコートをさらりと羽織って。
★3 秋に発表したパリでのファーストコレクションは、すべてのアイテムをシャツ生地で制作。モードなパリにおいて、日常的な服で勝負。その斬新な発想は話題に。今見ても素敵! 右は、コレクションのバックステージの様子。
1985年ごろ。愛娘の今日子さんと、アヴェニューニエールの自宅で。
1987年の夏休み。当時10歳の今日子さんと、島田さんが生まれ育った館山でヨットクルージング。
★4 セーヌ川に停泊した船上でのウエディングパーティ。映画のようなひとコマ。
★5 2023年秋冬コレクションは、フレンチエレガンスをテーマに、パリ3区にあるシックな「ジャン・ガブリエル・ミッテラン美術館」の中で、大胆な女性像を表現。モダンで多彩なパリジャンとして描かれたシルエットが印象的。
『島田順子 おしゃれも生き方もチャーミングな秘密 Shimada Junko Style4』(マガジンハウス刊)
島田順子さんのファッションからライフスタイルまでをまとめた「Shimada Junko Style」シリーズの集大成。ファッション哲学から愛用品、センスのいい暮らしぶりや料理、生き方まで、島田順子さんの魅力を丸ごと網羅した1冊。
今日はありがとうございます。ずっと、島田さんにお会いしたいと思っていました。インタビューで「憧れの女性は?」と聞かれますが、島田さんと答えてきました。
あら、ちょっと困ったわ。なんだか恥ずかしい。
いつか絶対にお会いしたい、お仕事をご一緒できるように頑張ろうと、ある意味、この対談の実現がひとつの目標でもありました。聞きたいことがありすぎて、何からお話ししたらいいのか……。興奮してしまい、すみません。ちょっと私、気持ち悪いですよね(笑)。
先日、春夏コレクションの展示会に、東京の会場まで来てくださったでしょう? ありがとうございました。あのとき初めてお会いして、なんて美人さんなのかしら、と思ったの。それで、今日は緊張しないようにと、気をつけているんだけれど、やっぱり緊張しちゃうわ。ごめんなさいね。
でも、実は6年前に一度、島田さんにお会いしているんです。
えっ、本当?
パリから東京に向かう飛行機で、隣の席だったことがあるんです。「島田さんだ!」って、うれしすぎて心の中でガッツポーズをしたんですが、声をかけられなくて。新聞を読んでらっしゃいましたが、あまり見ちゃいけないと思いながら、ドキドキしていました。
そうだったの? 声をかけてくださればよかったのに。私、飛行機では映画を観ないの。映画は、ストーリーよりも美しい映像を楽しみたいから、小さな画面でガッカリしたくなくて。だからたいてい新聞や本を読んで過ごします。ともかくね、あなたのような美人さんと一緒に写真に写るのは恥ずかしいわ(笑)。
今日は、ヘアもメイクも衣装も全部、ご自身でされているんですよね?
いつもそうよ。だって、私の場合はメイクと言ったって、顔を洗ってクリームを塗ったら、ハイ終わり。さすがに口紅だけは塗るけれど、上唇と下唇の色が合ってればいいかなって。
ヘアもご自身でですか? その美しいシルバーヘアとアップスタイルは、島田さんの定番、というイメージです。
美容師の友達はたくさんいるのに、美容院には行かないの(笑)。あの大きな鏡がどうにも苦手で、自分の姿を見ながら何時間も座っていることができなくて。だから昔から髪は自分で切っています。
髪の毛も、一度も染められたことがないとか?
ありません。髪のお手入れといえば、月に1回くらい、アボカドにオイルを混ぜたディップでするアボカドパックだけ。アップスタイルも、頭頂部でまとめた髪の根元に毛先を巻き込んでから、U字ピンで留めて、くるりとひねってまたU字ピンで固定するだけ。なんでもきれいにまとめようとしないこと。それがコツかな。
ヘアやメイクに時間をたくさん費やす人っているでしょ? 私はせっかちだし、その時間があればニュースを観たり食事をしたり、外で動いたり、違うことに使いたい。だからパパッとね(笑)。若い頃なんて、太陽にあたって日焼けすれば、お化粧をしなくていいと思ってたくらい。ガンガン焼いちゃったせいで、今ではそこらじゅうシミだらけ。
シミやシワは、つい隠しがちですが、その人自身まで隠してしまうようなメイクはちょっと違うな、と感じています。
シミもシワもつくろうと思ってできるものじゃないし(笑)、ともに生きてきた証でしょ。気にすることなんて全然ないと思う。若いならなおさら。もっと自分に自信をもって、シミやシワでさえ美しく見えるような装いをすればいいと思う。
日本の女性はシミやシワを恐れがちな傾向にあります。
鏡の見すぎなんじゃない? 私なんて、確認のため以外、ほとんど鏡を見ないの。不意に鏡に映る自分を見てギャッとなることもあるけれど(笑)。
最近は美容医療の技術が発達しているので、若いうちからリフトアップなどを始める方も増えています。年齢を重ねることに、どこか恐怖心があるのかも。
みんな、おばあさんになりたくないのね。
なぜでしょう?
男が悪いんじゃない(笑)? 日本の男性は特に、若さに重きを置きがちな気がします。フランスのマクロン大統領の奥様なんて、24歳年上。ヨーロッパの男性は、成熟した大人の女性にこそ魅力を感じる人が多いと思う。
成熟した女性……。
日本は、女性も男性も年齢を意識しすぎよね。
本当にそう思います。ところで、島田さんの30代はどんな時代でしたか? VOCEの読者の多くは30代なんです。
私は25歳でパリに渡って仕事を始めたから、30代はプロフェッショナルな先輩たちに囲まれて、無我夢中でした。40代、50代、60代の先輩たちは、強くてかっこよかった。年齢で何かを比べたことはなかったけれど、みんな、圧倒的な美しさがありました。
島田さんは、出産も30代ですよね。
そう、35歳のとき。私ね、娘を産んだあの頃がいちばんきれいだったかもしれない。夢中になれる仕事があって、守るべきものがあって、エネルギッシュで、うんと輝いてた。モンマルトルのアパルトマンを買ったのも30代よ。
私は30代の頃、やっと自分の進むべき道が見えてきた感覚がありました。
いろいろなことがわかってきて、やっと自分で選べるようになるのが30代だと思わない? 親に連れていかれるレストランじゃなく、自分が食べたいものを自分のお金で楽しめる。長い人生においてはやっとスタートラインに立ったばかりかもしれない。けれど、今、この歳になって改めて思う。やっと30代になれたわね、これからもっと磨きをかけていけるわよって。そんな、とても素敵で、美しい時代が30代だと思う。
確かに、手探りの20代を経て、30代はよりパワフルに人生を突き進んでいたかもしれません。島田さんの言葉を聞くと、歳をとるのが怖くなくなる。むしろ楽しみだと思えるから不思議です。
年齢もそうだけれど、とにかく、人の目を気にしないことです。私は昔から、自分の好きなものに対して、ものすごく正直なの。好きなものは変えられない、とても深いところでね。
だれがなんと言おうと。
そうよ。私の愛車はずっとポルシェなんだけど、それも、10歳くらいのときかな、初めてポルシェを見て、あまりの美しさに、いつか絶対これに乗るって決めたの。あの衝撃は今でも忘れない。
何に惹かれたんですか。
美しい流線型のフォルム。子どもながら、「なんてきれいなの!」って、車の前に座り込んでずっと眺めていたら、母が「ポルシェっていうのよ」と教えてくれたの。それから、衝撃といえばもうひとつ、子どもの頃に見た、兵隊さんの姿。ビシッとセンタープレスされたズボンに、パリッと糊のきいた白いシャツを着たスタイルがスマートで、とても美しかった。あの頃から、好きなもの、素敵なものへの感覚は、はっきりしていたんだと思います。
愛車のポルシェと。パリで運転中、追い抜きざまに『かっこいいね、マダム!』と声をかけられることも。「ちょっとうれしくなっちゃう」
初めてのパリコレクションも、シャツの生地だけですべてのアイテムをつくられたんですよね。
ファッションは衝動。どうしようもなく惹かれるものってあるでしょう。それを信じればいい。自分が好きだって思えば、どんな服だって着られるんだから。
メイクも同じだと思います。他人のためでなく、自分のために装う、キレイになる気持ち。
自分がどうしたいか。服でいえば、いかに楽しく、快適で気持ちよくいられるか。人の目を気にしておしゃれが楽しめないなんて、つまらないじゃない? 私は昔のインタビューで、「80歳になっても白シャツとスニーカーでポルシェに乗る、粋なばあさんでいたい」なんて言ったけれど、81歳の今、その通りに生きてるの(笑)。
私も、そんな風に自分らしくありたいです。
私の話ばかりになっちゃった。あなたのことを聞かせて。お子さんはいらっしゃるの?
息子が3人います。シングルマザーになって、息子たちは戦友みたいな存在ですが、毎日必死です。学校の入学金を払い込んだ夜は、ひとり、シャンパンで乾杯したりしています(笑)。
3人も育てられて、立派よ。ときには自分に「頑張ったね」って言ってあげることは大事です。
今は、仕事があって健康で、息子たちがいれば、それだけで幸せ。仕事に関しては、まだまだやりたいことがたくさんあります。
最高ね。愛する子どもたちがいて、好きな仕事ができて、これほど幸せなことはないわよ。だから、あなたはこんなにシワがないキレイなお顔なのね(笑)? でも本当に、摑みたいものがあって、それを思い描けることは幸せなことです。仕事だけじゃなく、恋愛もね。
それがもう、恋愛は死ぬまでしたくないと思っていて(笑)。
もったいないわ。5年後かも、来週かもしれない。またいつでも恋ができるように心を柔らかくしておくことよ。閉ざす必要も、決めつける必要もないんだから。
島田さんにそう言われると、心がふっとほぐれていきます。
うふふ。またお会いできること、楽しみにしています。
母がいつも「素敵ねぇ」と言っていた人。その言葉を聞きながら、いつしか私自身にとっても憧れとなっていた人。それが、島田順子さん。
25歳で単身パリに渡り、自身のブランドを立ち上げ、50年以上デザイナーとして第一線で活躍するパワフルウーマン。そんなとてつもない経歴に圧倒され、勝手にものすごく強い女性だと思っていました。でも、実際にお会いしてみると、驚くほどキュートで、最高にチャーミング!
対談中、「困ったわ」「恥ずかしいわ」と少女のようにはにかむ姿も、あまりに可愛くて、こちらがドギマギしてしまうほど。
かと思えば、澄んだ目で「鏡の見すぎなんじゃない?」「男が悪いんじゃない?」とバッサリ、「30代はいちばん素敵」「きれいにまとめようとしないで」「自分の好きなことに忠実に」とキッパリ。どの言葉にも、第一線で闘ってきた人だからこその凄みと重み、優しさがありました。
「仕事をやめたいと思ったことはありますか」という問いに、「何かを生み出す、クリエイティブな仕事はすごく辛くてストレスフル。でも、デッサンを描いているうちに、自分の感覚とピントがパッと合うようなときがあるの。その瞬間、ストレスが消える。でも、何年やっても自信はもてないわ。だから、やめたいことは?って聞かれると、仕事って答えちゃう。
それでもやめなかったのは、この仕事が好きだってことと、何より“パンの糧”だったから。だって、仕事をやめてしまったら、どうやって子どもを育てるの? どうやってパンを買うの? つらいときはいつもそう問いかけていたの」と笑う姿が印象的でした。
これほど世界的に活躍しながらも、躊躇なく「パンの糧」と言える潔さと率直さに脱帽。
今まで、誰かになりたい、と思ったことが一度もない私が、こんな女性になりたいと切望するほど、本当に素敵な人でした。次はぜひ、パリのご自宅にお邪魔させてください!
From 神崎恵
島田さんのコレクションが並ぶ展示会場にて。憧れの人にスタイリングをしていただき、大感激。
対談当日の装いもこの日に即決したお気に入り。
ニットトップス¥36300、スカート¥29700、ベルト¥19800/すべて49AV.JUNKO SHIMADA その他/本人私物
この記事に登場したプロ
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