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似て非なる緑色/Novel by 奈木

似て非なる緑色

3,552 character(s)7 mins

何だかんだで楽しくあちこち巡っていますグランドオーダー。
ハサン先生のシナリオと絆5のセリフにじたばたしたくせに、最初に書いたのは緑茶のお話という不思議。
ロビンフッドのマイルーム会話やらシナリオあれこれやらネタバレしている感じですのでお気を付けください。
赤いのと緑色のは手段も行動も全く違うくせに、願ったものとか望んだものは同質だったんじゃないかなーとマイルームのあのセリフを聞いて思いました。

ぐだ子とロビンフッドと本人自体は出てこないけどエミヤのゆるいお話です。

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 それは確か、昨日の探索の際のことだったように思う。
 エミヤとロビンフッド。同じアーチャーのクラスに属しているはずなのに、全く違う戦い方をするサーヴァント二人を連れて、戦いに出ていた。その時のことだ。
「ゲッ、弓兵のくせに前に出たがるバカが居るよ! おい、そこの赤いの! おたく、マスターを守るって自覚はある!?」
 戦闘が始まったとみるや、アーチャーという肩書の癖に夫婦剣を手にして真っ先に敵へ向かって突っ込んでいった赤い弓兵。その背に向かって、実に肩書らしく弓を携えた緑の弓兵が叫んだのだ。
 とは言え、その時は状況が状況。戦闘の真っ最中にあっては、無駄話もしてはいられない。ロビンフッドの非難に、エミヤの返事はなかったように思う。或いは、人間並みの聴覚しか持たない私では分からないところで、言葉のデッドボールの応酬があったりしたのかもしれないけれど。いずれにしろ、私はその言葉から後の顛末は知らない。
 だから、ひとりでぼんやりと考えていた。――あの二人は、アプローチ方法が違うだけで、実はひどくよく似た英雄なのではないかと。
 自己の利益の為でなく、不特定多数の為に陰で戦って散った弓遣い。違うのは、対峙の仕方。一人は守るべきものの為に、真っ先に脅威へと立ち向かっていく。一人は守るべきものの為に、傍にあって脅威を遠くから狙い撃つ。
 守るべきものに暴威が及ぶ前に、護るべきものが危難に晒される前に、それが遠くにいるうちに仕留めてしまおうという思惑に違いはない。だからこそ、その戦い方に当人の心象が反映されるのだろう。まるで背中合わせに同じものを見ているようだ、と些か矛盾したことを思い、少しだけ笑う。
 同じなのに、正反対。だからこそ、あの二人はああも衝突するのかもしれない。
「マスター、いるかい?」
 ――等と考えていたところに、外からお呼びがかかった。入室を待たずとも分かる。声の主は、思考の渦中の人物だ。
 カルデアの施設内に用意されたこのマイルームは、任意のサーヴァントを一名に限り、自由に出入りすることができる。その権利は今彼にあるというのに、一々許可を取ってくれる気遣いが嬉しかった。
 どうぞ、と声を上げれば、扉が開いて緑衣の青年が部屋に入ってくる。
「どーも、お邪魔しますよっと。何かお仕事中だったりしましたかね?」
 大丈夫だ、と答えると、「さいですか」と軽い風で答え、ロビンは何やら小脇に抱えていた物体を私へと差し出した。これは……布? 毛布なら、前に差し入れでもらったけれど。
 両手に布の塊を抱いたまま、その旨をロビンに告げる。すると、彼は呆れた顔をして肩をすくめた。
「いやいやいや、いくら何でも同じものを続けて差し入れたりしないでしょ、普通。毛布じゃなくて、外套ですよ、外套。俺が被ってるのみたいな」
 そう言って、ロビンは自分の外套の裾をひらひらと揺らしてみせる。ほほう、外套とな。
「そ、外套です。次の聖杯を探す時も、どうせ長丁場になんでしょ。移動中に雨風に見舞われない保証もねえんですから、何か備えがあった方がいいと思いましてね。折角なんで、ちょいと合わせてもらえます? 大体間違っちゃいないと思うんですが、本人が居ないところで選んじまったんで、丈が違い過ぎたら問題だ」
 とても巧みに罠を仕掛けるロビンは、細かなところにもよく気が付く。その彼の目をもってすれば、そうそう間違いがあるとも思えないのだが……。
「いやいや、マスター。アンタ、ほんと俺を買いかぶりすぎですからね。オレはそんな何でも屋じゃねえですっつの。いいから、ホラ。羽織ってみてくださいよ」
 何だか今日のロビンは少し押しが強い。とりあえず言われるままに布を広げてみると、確かにフードや小さな刺繍飾りが施されてあり、毛布とは似ても似つかない形をしていた。上下左右を確認し、肩に羽織ってみる。……どう、だろうか。
「お、さっすがオレ! 丈もぴったりだ。似合ってますよ、マスター」
 破顔して、ロビンが言う。に、似合っているのか。そうか。それは嬉しいけれど、真っ向から言われると、なんだろうか。少し照れる。ありがとう、と発した声は、さすがにいつも通りとはいかなかった。
「……そう素直に反応してもらえると、なんつーんですか、オレまでむず痒くなってきちまうんですけどね」
 それは、何と言うか、申し訳ないな。
「いや別に、悪いとか嫌だとかって訳じゃねえんですけどね――って、何言ってんだよ、オレ」
 自分で自分の言葉に突っ込みながら、ロビンは一人で百面相をしている。割と表情豊かな方ではあるけれど、ここまで感情を露わにしているのは少し珍しい気がした。
「あーもう、オレのことはいいとして、マスター! 仕事中じゃないって言ってましたけど、何してたんです?」
 話を逸らすことで、感情の鎮静を図ったらしい。妙に勢いよく、ロビンが私に話を振ってきた。
 何をしていた、か。何と言われれば――エミヤとロビンのことを考えていた、ということになるのだろうか。それをそのまま伝えると、ロビンは「オレとあの赤いののことぉ!?」と嫌そうな、或いは苦そうな、何とも言えない表情をした。
「あー、もしかして、昨日のことですかね? 確かにあの戦闘の後、ちょっとやり合いはしましたけど、あんなの些細な口論ってもんですよ!」
 ……なんと。そんなことになっていたのか。ちょっとやり合いはしたけど、些細な口論。その言い方から想像するに、実は結構な大騒ぎをしたと見た……!
 洗いざらいすべて白状したまえ、ロビンフッド! ずびしと指を突き付けて宣告すると、ロビンの表情は一層苦々しげなものになった。
「ゲッ、藪蛇!? くっそ、何でアンタはこういう時ばっかり勘がいいんですかねえ! いやほんと、ありゃあの赤いののせいで――」
 赤いののせい、ときたか。では、ここは公平を期すためにエミヤも呼ばなければなるまい。
「ちょっとお!? オレの話聞いてるマスター!?」
 聞いているとも。だからこそ、エミヤの話も聞かなければ不公平だ。
 そう言い置いて、扉に向かう。エミヤならどうせ調理場とか倉庫とか、その辺にいるはずだ。探してこよう。
「要らんとこで正義感発揮しないでもらえますかね!? いいじゃねーですか、あんな野郎のとこに出向かなくったって。差し入れに免じて、この一件流して下さいよ」
 そうはいかない。差し入れは有難いけれど、賄賂に屈する私ではないのだ。
「その無駄な男前さはどこから来るんですかね……」
 溜息を吐けども、ロビンは積極的に私を止めるつもりもないらしい。マイルームを出ると、大人しく後からついてきた。
 人気の乏しい廊下を二人前後に並んでトコトコと進んでいく。進みながら、そう言えば外套を着たまま出てきてしまった、と今更に気付いたが後の祭りだ。
 ちらと視線を落とせば、右胸の辺りに施された可愛らしい刺繍飾りが目に入る。ふと足を止めて、ロビンを呼んだ。 
「はいはい、何ですかっと。オレの言うこと聞き入れて、大人しく部屋に戻る気にでもなりました?」
 それはない。即答すると、背後で「そーですかい」と露骨な溜息が聞こえた。
 うん、そうだ。……でも、まあ、あれだ。差し入れは確かに嬉しかった。情状酌量の余地はなくもない。この刺繍、可愛いし。枝に止まる青い鳥とか、縁起もよさそうだし。それに、何だかロビンみたいだ――
 そこまで言った瞬間、ばさりと視界が半分閉ざされた。後ろからフードを被せられたのだと気付いて振り向こうとすれば、頭の天辺を掴む手によって阻まれる。……これは、何事だ。
「ほんと、アンタは趣味の悪いマスターですよ。いいから、あの赤いののとこに行くんでしょ? さっさと行こうぜ、マスター」
 さっきまであんなに嫌がっていたのに、どういう風の吹き回しだろうか。
「いや、別に? いつもと違う衣装のマスターを見せびらかしに行くってのも、それはそれで面白いかと思っただけですよ」
 あの朴念仁にはできねえ芸当でしょうしね、とどこか意地悪い感じに笑う背後の気配。……よくは分からないけれど、ロビンが乗り気になったのなら、それはそれでいいことなのだろうか……?
「さ、行こうぜマスター」
 頭を押さえていた手が離れて、見慣れた後ろ姿が前に出ていく。そのまま先導するように歩き出したロビンを、私は慌てて追いかけた。ロビンは何やら口笛を吹いている。いつの間にかご機嫌だ。

 しかし、この後顔を合わせたエミヤとロビンが昨日の再現とばかりに私を挟んで舌戦を繰り広げることを、残念ながらこの時の私は知る由もないのだった。

Comments

  • 照山 紅葉

    何このロビン可愛い( 'ω' ) たま期待させていただきます!

    August 15, 2016
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