【槍弓…?】いつかのおとしもの
ホロウ期間滑り込み!…が、どうしてこうなったorz ぬるいしよくわからないことになりましたが、一応ホロウのアレ的な一つの可能性ということで。
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それはビルの屋上に佇んでいた。
空に赤い帯を走らせる航空障害灯が、1分に1回、その異物を照らし出す。
何かいるのは確かだ、しかし目立った色味がないせいで結局濃い影のようにしか映らず、何かはさっぱり分からない。
そして時計の針がぴたりと虚空を向いて重なり、重油のようにべたべたと重苦しく腐乱死体のように生臭い「残骸」が湧き出すとともに、それは突如銀や白い光を飛散させた。
「ふん、馬鹿が」
数時間後、屋上で吐き捨てるような呟きが聞こえた。
それは黒い影“だったもの”が発したもの。今ははっきりとそれが人の姿らしいことが見てとれた。
しかしそれは、掻き上げられた白い髪以外はほぼ黒一色のパーツで覆われていた。
「厄介なものだな」
彼が夜通し行っていたのは、「掃除」だった。
闇の中から湧き出て冬木の街を覆い尽くそうとする赤目の黒い獣の群れをただただ矢を射て吹き飛ばす。
矢が当たるたびに大小の爆発音が鳴り、獣共は金切声のような叫び声をあげるのだが、なぜか街の平穏が乱されることはない。
それもそのはず、男は「幻」を「幻」で消していた。
「幻」には光も音も熱も力もない――物理空間においては。だから物理空間のみに存在する事物には何ら影響しない。
影響するとすれば、「幻」に手を伸ばした者やそれによって生み出されたものにだろう。
だから毒を以て毒を制す、ならぬ幻想には幻想を以て対抗する、ということだ。
男は手に持っていた艶のない黒いボディの洋弓と数本の銀の矢を纏めると、奇術のように一瞬で消し去った。
「掃除」が済むのは決まって朝方、太陽が昇り始める頃だ。太陽の光とともに魔物は何事もなかったかのように消え去る。
裏を返せばそれまでは延々とゴミを掃き続けねばならない。
しかし先程触れたが、一般人にも街にも影響しないなら獣を吹き飛ばす必要はない。獣がいなくなるのを眺めて待っているだけでもよさそうなものだ。
それをしないのは、そもそもこんな獣が湧くという異常事態を黙って見過ごせずあまつさえ事態を究明して本を断ちたいと考えてしまう、正義感溢れる――そしてどうしようもないくらい面倒臭い彼の性によるものだった。
「ああ、厄介と言えば――」
男は掃除の前に行った「狩り」を思い出した。
とはいえこれは"hunting"ではなくあくまで"game"。"game"と言っても「勝負」の方だ。
だから殺す気などさらさらなく、単に警告を兼ねた威嚇射撃のつもりだった。
ただ今までの獲物とは違って――はなから分かっていたことだが――今回のは以前と変わらず執念深く闘争心に溢れていた。
だからこちらもつい本気で相手を仕留めにかかってしまったのだ。
「猟犬を追い回す狩猟なぞ、本場でも聞いたことがないがな」
ふんと皮肉気に笑む。本来の責務を外れて楽しんでしまったことを否定できないことへの自嘲も含んだ笑みだった。
だが次の瞬間また表情を消し、薄闇が混ざっているのか昼間より濃い青の空を見上げる。
「しかし今回は疲れた。『真っ当な』獣に付き合ったせいか」
男は苦々しげにひとりごちて、ふっと目を瞑った。