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The Works "プロローグとランサーの荒ぶる深層心理(キャスターを添えて)" is tagged "槍弓" and "コメディ".
プロローグとランサーの荒ぶる深層心理(キャスターを添えて)/Novel by あきら

プロローグとランサーの荒ぶる深層心理(キャスターを添えて)

6,067 character(s)12 mins

槍弓とはなんぞや。
どっちかというと、今は槍+弓程度の距離感です。

………

Fate初心者なので詳しいことはさっぱりですが、色々と見てる限り、ランサー青年は不運さえなければ、まともなタイプなんじゃないかと思う今日この頃です。一応、FGO時空を想定しています。
槍弓ってことは、最終的にランサー青年にゴリ押ししてもらう必要があるわけですが、うちのランサー君はエミヤさんのゴーイングマイウェイにドン引きするだけなので、果たして収集はつくのか…?

………

「おい坊主、なんで視線下げた?」
「……クーフーリン、よく聞いて。あいつは『シャイガイ』って言って、シャイなんだ」
「ほう」
「シャイだから、彼の顔を見てしまうと、恥ずかしすぎて、見た相手を殺しにかかってくる」
「なんでそんなことになった?」
「だから、あれと遭遇したら絶対に目を合わせちゃいけない。近くを横切るときも、視線を下げて通るしかない」
「へぇ、じゃあ気をつけるしかねぇな…おっと操作ミs」
っていう、幸運Eのランサーとそれに巻き込まれる不憫なマスターが送る、SCP実況が見たい。

なお、SCP containment Breachは割とガチなホラゲなので、検索する際は自己判断でお願いします。

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「恋とは何ぞや」とは古今東西の悩みの種であるが、大方はその一年以内に解決するのが「お決まり」というものだ。「お決まり」とは、まぁ、同人誌とか二次創作とか、よく見るだろ、君たち。同業者なんだから。物語の冒頭で、「恋愛何それ美味しいの食べれるの」と気の抜けた顔をしていた主人公が、結末ではその味に魅了されて瞳を輝かせる。そういうことさ。

さて話に戻るが、このエミヤという男、ドン・ファンだの人たらしだの散々言われながら、恋とはとんと無縁の人生を送ってきた。それも当然だ。それらしい気持ちを恋に昇華できないまま、大切な人の想いに気づかず、弓だこの絶えない大きな手から、決して多くはない宝物を溢し続けた。挙げ句の果てに人としての生も取り落とし、そうして生まれたのが"エミヤ"の名を冠するだけの、抑止の歯車である。生前から人間らしからぬ言動で周囲を困らせていたものが、ここにきてついに、なけなしの人間性すら失くしてしまったのだった。
と本人は思っているらしいが、台所周りの属性が色濃いのと、根っからのお人好しと言いつつ、割とズケズケ物を言うせいで、重い設定は今となってはお空の彼方である。第一、本当に人間を辞めた輩は「自分の選択が大切な人を傷つけたから」と後悔して、過去の自分を殺すような真似なんてしない。善人にしてはちょっと過激だとは思うが。たぶんあの男のお得意の自嘲癖だろう。当人がそう信じ切っているので、それを力尽くで覆そうとは思わないが(面倒くさいし)、むしろその態度が誰かを苛立たせることを、奴はそろそろ覚えたほうがいいと思う。
とまぁ、そんなこんなで、生々しい感傷だの霊基だのを擦り減らしながら、守護者として「真面目に」働いてきたエミヤに転機が訪れる。

人理の消却と、カルデアの召喚だ。

「初めはとても驚いたものだ。またいつものように小競り合いに呼び出されたかと思えば、人の世が失せたと言う。マスターの少年が言うことには、私は彼と共に人類悪を滅ぼすのみで良いと。」
目元を緩ませて心なしか楽しそうな辺り、「やっぱりこの男は相当イカれてるな」と、もう何度目にも関わらず、槍属性のクーフーリンこと、ランサー(論文だろうが小説だろうが、初っ端の頻出語句の定義は大事だ)は思う。エミヤが供物のように差し出してきた酒をツマミ片手にちびちびやりながら、その実この男の自分語りなど、ほとんど聞き流している。いかに今回の現界が素晴らしいものであるか、自分のマスター運が良いか(それについてはランサーも大いに同意する)を、言葉を変えてのエンドレスリピートだ。ズバリ、君の話しはもう聞き飽きた。物には限度があるし、はっきり言ってこれでは洗脳だ。何度も同じ話を繰り返される身にもなってほしいというものである。自慢話はツマミにもならない。不幸は蜜の味と言うが、これも酒のアテにもならない、べたべたしたロクでもない味をしているので、好んで舐める奴の気が知れないとランサーは思う。極端な辛さも本当にどうかしていると辟易するが。
結局のところ、先ほどから味覚のみに集中して「なんかよく分からん食い物だが、なかなか旨いな」みたいな、頭の悪そうなことばかりを考えてしまう。行儀を嗜められるレベルだが、寄せ箸をして、今や全てのツマミがランサーの手元にあるので、次はどれを食べようか非常に悩ましい。どれもこれも、ランサーの肥えた舌を唸らせる絶品ばかりだ。エミヤが体現する正義の在り方はややこしくて理解し難いが、このツマミの旨さが正義に値することは、ランサーにも分かる。相手には失礼だが、たぶんこの男は実現可能な正義の限界値を見誤ったのではないかと思う。「美味い料理で世界を救う」なんて馬鹿げた台詞を口にできたなら、エミヤも世界も、誰も傷付かずに幸せでいられただろうに。だが、守護者としてのエミヤを一定評価しているランサーにとっては、プラマイのマイ程度に複雑な話ではある。好敵手がいないというのは、戦闘狂の自覚のある身としては、それなりに辛いものがあるのだ。
お、これ、プチプチした食感が楽しいな。

話という話は、小一時間ほど前に遡る。

いつものように、ケルトの身内と派手な飲み会を繰り広げていたランサーの元に、彼の因縁の相手であるエミヤが訪れたところから、薄々嫌な予感はしていた。幸運Eのサガか、そういうときは背筋が粟立つというか、何となく分かるものだ。命中せぬ得物とは裏腹に、こちらの的中率はご覧の通りである。
キッチンの冷蔵庫から勝手に拝借したツマミを酒で流し込んだランサーは、自分に向けられる、馴染んだ視線に気が付いた。殺意という物騒な色がないだけで、この感覚はおそらくランサーの肌から消えてなくならない。圧倒的多数の灰色の群像の中に、一つだけ鮮血を想う赤色が混ざっているのを見つけたときの、えも言えぬ興奮。的確な表現は難しいが、そんな感じだ。
一瞬今までに己がしでかしたアレやコレを咎めるつもりかと思ったが、そういう訳ではないらしい。思い至ることはいくつかあるからだ。アレやコレ、まぁ、現状を踏まえると、アレやコレと「これ」。仕方がないので、思い出せばキリがないと開き直ってみる。微妙な不安は拭い去れない。
しばらくして、外された視線を辿ってみると、その先には案の定おかn、いや紅c、じゃなくて赤い弓兵がいて、キッチンの中で何やらごそごそと作業に励んでいるようだった。
そして、いつもの如く、聖杯の知識は頼りにならない。が、あの男を初めて件の飲み物と絡めた人、ブラボー、まったく尊敬に値する。

今晩のエミヤは見慣れた緋色の衣を脱ぎ捨て、黒い戦闘服のみ身に纏っていた。こんな夜中であれば夕食の片付けを終え、明朝の仕込みでもしていたのだろう。軽装がその証拠だ。手が動いているのは、エプロンでも畳んでいるに違いない。エミヤにはお気に入りの一枚があって、母の日にマスターとマシュの嬢ちゃんが手作りで手渡したものだ。「見ろランサー、猫さんだ」と満面の笑みで見せびらかしてきたことを覚えている。猫さん。それで「まぁ、君は駄犬だが」とドヤってきたので、物理的な話し合いを小一時間行ったところ、目蓋が半分ほど落ちていたバーサーカーのオレの逆鱗に触れて、満身創痍になった。オレだけ。
では、そのエプロンの手入れも終わらせて、なぜこの男が己のもとを訪れるのか。あの堅物のことなので、理由もなしに動くとは考えにくい。これまでの聖杯戦争だの謎の三日間だの、色々と、本当に字の如く色々と巻き込まれた記憶を思い浮かべて、ランサーは思わず身構えた。その倍ほどエミヤを巻き込んだことは、もちろん棚に上げている。
いや、だって、コイツには運命感じちゃうくらい遭遇するし?そんなのいちいち覚えてないってーの。あーやだやだ。

そんな内心で挙動不審なランサーに特に気に留めることもなく、エミヤはグイグイ近づいてくる。あまりの迫力にタコわさを摘む箸を小皿に置き、ぐっと息を呑む。実力的にはランサーに及ばないはずのエミヤの背から、神域クラスの尋常じゃない覇気が漂っている分、下手な動きが取れない。「ありゃ、マスターの坊主と組んで、夕飯の摘み食いしたのがバレたときのレベルだわ」と、まるで死刑宣告を待つような居心地の悪さでランサーは来る時を待つ。あのときはたしか、エミヤの逆鱗に触れて、その日の夕飯を抜きにされたんだった。オレだけ。
ついでに便乗して騒いだ挙句、キッチンの皿を割ったキャスターのオレも一緒に干されていたので、知的とかいう自己紹介は今後一切やめたほうがいいと思う。理想を抱いて溺死する前に。もう乾いてるけど。
別に庇うわけではないが、特別エミヤの沸点が低いとか、そういうわけではない。誰にだって譲れない何かの一つや二つあるはずだ。それがあの男の場合は料理全般なだけで。料理全般は一括り、どこか踏み抜けば連鎖的に全てが爆発大フィーバーだ。そう思えば、飯抜きなんてまだ序の口だし可愛いほうかもしれない。やろうと思えば、いくらだって躾ける方法はあるのだ。キッチンの守護者であるエミヤには、それが許されるだけの技量と経歴がある。

そして、程なくして時は来た。ついにランサーの席を真上から見下せるほど、エミヤの接近を許した。ちらりと上を見やると、爛々と輝く灰色の瞳とかち合う。戦闘時でも滅多にお目にかかれない気の入りように、ランサーの背筋を薄ら寒いものが駆け上がった。「何にそんな力んでるんだコイツ」と、言いたいことはそれに尽きる。しかも近付いたは良いが、次の行動に移る気配が全くない。あれか、この前マスターとやったホラゲに出てきた、SCP173とかいうクリーチャーみたいに、目線を外すと首をへし折りにかかって来る仕様なんだろうか。もしかして今、オレの首の皮一枚繋がった状態なわけ?などと、壊滅的に下らないことにしか知恵が回らない。訳も分からず、ランサーとエミヤが視線を交えたまま、時間ばかりが過ぎていく。すり鉢でゴマをするような音はさすがにしない。

余談だが、先ほどまでランサーを囲んでいた酒の輪はエミヤが彼にモーションを掛け始めた辺りから解散しているので、この不思議な空間に物申す者は、残念ながらいなかった。それも二人の日頃の行いが生んだ結末とも言える。出会い頭に口喧嘩は当たり前、下手をすれば乱闘にまで発展することもある彼らを、一体誰が気に掛けようとするだろうか。周囲から「あーはいはいいつものことですねー(棒)」だの「雉も鳴かずば撃たれまい」だの「マスター、令呪予約ね」だの、完全に見放されていることに、悲しい哉、気付いていないのは当事者だけである。ランサーの師匠たるスカサハに限っては、その展開を見守っている節があるが、酒飲みの言動ほど信用ならないものはない。彼女の場合は間違いなく見世物として楽しんでいるだけだ。そういうところがある。そのスカサハはというと、導き手を自称し始めたキャスターの弟子を引き摺って彼の部屋に乗り込み、その他の仲間たちと共に二次会と洒落込んでいるのだった。

とは言え、星3レアリティの割に持久戦に強いと評判のランサーにも限界は来る。変に張り詰めた時間という攻撃の前に、矢除けの加護もガッツも尽きている。攻撃を分散してくれるチームメイトなどそもそも存在しない。残るはジリ貧だ。

こうなれば、大変遺憾ではあるが、こちらから先手を打つしかない。あの男から迫ってきておいて、なぜ被害者たる自分が踏み込まなければならないのか納得できないが、このまま「ランサーが死んだ!この人でなし!」と外野に叫ばれることは絶対に避けたい。"死因:エミヤの接近による不審死(二重の意味)"とか、本当に勘弁してほしい。またアニメでダイジェストにされた挙句、謎の生き物に誑かされて、バッドエンドを迎えるオチが目に見えている。そんなことになれば、クーフーリン、末代までの恥である。末代もなにも、諸事情によりランサーで直系は終了しているわけだが、誰にでも黒歴史はあると目を瞑ってほしい。「どうにかならんかったのか」とは、ランサー本人が一番気にしていることなのだ。

「……用があるなら、手短に頼む」

ついにランサーは会話への第一歩を踏み出した。長い道のりだった。美女は大歓迎だが、何が悲しくて野郎と見つめ合わねばならないのか。あまりに苦痛で、思考が変な場所に飛んで行ってしまって、もう戻って来られないかと思うほどだった。愛用の朱槍はきちんと手元に戻るのに、肝心の主人が戻って来ないのではお話にならない。
ランサーの発破に、エミヤは呆けたように目を瞬かせた。その様子が「え、今なんで話しかけられたんだろう」という字幕に自動翻訳されて見えたので、うっかり目の数を増やしてしまうところだった自分を、ランサーはドウドウと宥めるしかなかった。ここには大量の水桶も、裸体の処女も存在しないのだ。全ては勇気を出してきっかけを生み出した、あの時の自分に報いるために。件の逸話と現状の怒りが同レベルに分類されているのは、よくよく考えてみれば変な話ではあるのだが、ランサーも相当、エミヤの謎の気迫に毒されているのだった。
しかし、エミヤは黙りこくったまま、一向に話しかけてくる気配がない。もういい加減ブチ切れてもいいかなと、頬の辺りから赤い目玉が浮き出してきたところで、エミヤが意を決したように口を開いた。くわっと、文字通り。あまりの覇気に、ランサーの髪が漫画みたいに後ろに吹き付けられるほどだった。見えてないけど、そんな気がした。
もう一度言う。なんでこいつこんなに力んでるんだろう。

「サシで、飲みたい」

それなのにたった一言だけ、まるでエミヤは申し訳なさそうに、呟くように言った。彼特製のツマミ盛り合わせと、秘蔵の清酒を両手に携えて。

目の前の鍛え上げられた腕がぶるぶる震えてることなんか、わりとどうでもいい。差し出されたツマミに涎が出そうなことも、重要案件ではあるが、今はそういう問題ではない。

「んなもん、早く言えよチキショウ!!」

ランサーの忍耐力は、あまりにもあんまりな結末の前に呆気なく陥落した。何の茶番だ。こんなことのために、自分は迷走を極めたというのか。目の前の褐色ガチムチ男が「おっと、心は硝子だぞ」なことを、すっかり忘れていたランサー青年である。大丈夫だ、うっか凛は憑依してない。してないけれども。ランサーもまさかこんなしょうもないクダリになるとは思ってもみなかったので、その落差分のダメージが酷い。すまんマスター、令呪か聖晶石を使ってくれ。補填はできないが、後者はあの青いリンゴのカードがあればいいんだろ。キャスターのオレに頼んでおくから心配するな。イカサマで銭稼いでるの、知ってるんだ。それと、アーチャークラスに膝をつくのはランサークラスの名折れだが、許してほしい。この男、たぶん弓兵の皮を被ったバーサーカーなんだろう、そうに違いない。もう今日からコレがバーサーカーだ、オレが決めた。
とはいえ、土産を持ったまま立ち尽くしているエミヤを放っておくほど冷酷ではないので、さりげなく自分の目の前の席に誘導する。

「………とりあえず、座れよ」

でもなぜだか、まだ嫌な予感がする。
不穏な気配を何とか押し隠して、ランサーは彼らしく快活に笑った。

ところで、件の女神様がくしゅっと可愛らしいくしゃみをしたことをきっかけに、彼女と兵器(自称)の間でウルク大乱闘が勃発したことは、彼らが預かり知らぬところの、全く別の話である。

「あーーー心労で賢王様がお隠れに!?」
「冥界への旅、一名様ごあんなーい!」
「…帰っていただいて、結構なのだわ」

犠牲者も一名。


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