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(無配再録)ドルイドと小さなふたり (槍+術)×弓/Novel by tom

(無配再録)ドルイドと小さなふたり (槍+術)×弓

8,155 character(s)16 mins

2021/12/31 クーエミ広義デフォルメオンリーイベント DEFOTTE! で配布した無配コピ本の再録です。

小さくなった槍弓と、ひとり難を逃れたドルイドが問題解決のためにあれやこれやする話。
魔術に関しては色々とご都合主義ですので予めご了承ください。
小さなふたりはシ○バニアファミリーサイズでご想像いただければ^^

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 にぎにぎと動かした弓兵の両手は随分と小さく、まるで小動物の赤ん坊の手のようでした。元の自分の手と同じところといえば、褐色の肌の色くらいです。
 そっと触って確かめた自分の腕や頬や腹は、ふにふに、ぷにぷに、ぽよぽよん。たゆまぬ研鑽により身に付けたあの筋肉たちは一体どこへ? と、弓兵は呆然としています。
「いや筋肉どころか、体ぜんぶ縮んでるだろ…」
 かしかしと小さい手で頭を掻きながら、槍兵が言いました。縮んだ自分の体を見れば、ちゃんと元と同じ第二再臨の姿をしています。弓兵もいつもの明るい赤色をまとっており、体の造りはだいぶん省略されていますが、大きさ以外はおおよそ元の姿を保っていました。
「食堂のコップよりちぃと小せえくらいだな」
「十センチ弱、といったところか…」
 弓兵は、ちらりと自分たちが立っている場所を振り返りました。そこには、縮んでしまった二人にぴったりの大きさのベッドやタンスがありました。L字に向かい合った対岸の部屋には、豆本の詰まった本棚とロッキングチェアが、一階部分には可愛らしい台所と、ピアノの置かれたリビングルームがありました。
「ま、どう考えてもこの模型? が原因だろうな。どうしたんだ、これ?」
 槍兵が、可愛らしいカバーの掛かったベッドをぽんぽんと叩きました。そのまま、ちょこんとベッドに腰掛けます。弓兵は小さく息を吐いてから、ふにっとした腕を何とか胸の前で組んで、おもむろに口を開きました。

***

「のりでもくっつかないね」
「テープはとれてしまうし…」
 お昼過ぎ、弓兵が自室への帰りしなに談話室をのぞいたところ、そこには何やら困った様子の二人の少女がおりました。
 少女たちが向かっている机の上には、ハサミやのり、セロハンテープといった工作用品と、ログハウス風の家の模型が置かれていました。そこにひとつ、脚が一本ぽっきり折れた小さなロッキングチェアが転がっていました。
「ああ、椅子の脚が折れてしまったのか」
 すっと机に近付いた弓兵が、くしゃくしゃになったセロハンテープを指に付けたままのナーサリー・ライムと、のりで手がぺとぺとになっているジャック・ザ・リッパーに声をかけました。少女たちが、ぱっと顔を上げます。
「おじさま! そうなの、ロッキングチェアのあしが…」
「テープものりもだめだった…」
 弓兵は、しゅんと落ち込む少女たちの手元に視線を落としました。
「ふむ、木製のミニチュアか。とても精巧にできているな」
「ええ素敵でしょう! このドールハウス、去年のクリスマスにもらったの」
「ベッドはふわふわ、本もたくさん、ピアノが弾けて、ここでお茶会もできるんだよ!」
 そう言いながら、ジャックはぱかっと開いたドールハウスの中を案内してくれました。どの部屋もとても良く作られています。
「ずっと大事に遊んでいたの、本当よ。でも今日はちょっとはしゃぎすぎてしまったの」
「ゆらゆら、ゆらゆらしすぎちゃった…」
 再び落ち込んだ二人が、壊れたロッキングチェアを悲しそうに見つめています。弓兵も、もう一度脚の折れたロッキングチェアとドールハウスを観察しました。
 ドールハウスには、所々この一年の楽しい思い出が刻まれているようでしたが、書斎も寝室も台所もリビングルームも、どの部屋もきれいに手入れされていました。
 弓兵は身をかがめて、少女たちと視線を合わせました。
「このドールハウスがとても大切にされているのは分かるよ。…それで、君たちさえよければその椅子の脚、私が修理をしてもいいだろうか?」
「まあっ本当に? ぜひお願いよ!」
「やったぁ!」
「嬉しいわ、嬉しいわ! ありがとう!」
「ああ全霊で修理するよ。…それと、寝室部分の壁紙も端が少しはがれかけているようだから、ドールハウスも一緒に預かって補修しよう。夕方までには終わるだろうから、またここに返しに来るよ。それで構わないだろうか?」
「うん! ありがとう」
「私たち、おじさまにお礼をしなくちゃね!」
 何がいいかな? とうきうき話す二人に、弓兵はもともと来週予定していた地下菜園での収穫作業の手伝いをお願いしました。賑やかな苺狩りになりそうだと思いながら、弓兵は預かったドールハウスと共に自室へと戻ったのでした。

***

「よし、これでいいだろう」
 端の壁紙まできれいに接着された小さな寝室をひと撫でして、弓兵は机上のドールハウスからそっと手を離しました。
 そして、先に修理を終わらせていたロッキングチェアを、もう一度確認のために指で揺らしてから、寝室の対岸にある書斎に収めました。
「…ふむ、まだ少し時間があるな」
 ちらりと時計を確認した弓兵は、折角だからとドールハウス全体の点検も行うことにしました。両手をドールハウスの壁に添えて、ゆっくりと魔力を流します。その瞬間、ドールハウスが淡く発光し、弓兵は何らかの魔術が起動するのを感じました。
「…っ?!」
 下手に手を離すこともできず、弓兵はドールハウスに触れたまま、頭の中であれこれと対処法を考えていました。
 そして、なんと間の悪いことか、そんな最中に青い槍兵が戻ってきたのです。
「たでーまーって、あン? 何してんだ」
「ばっ、触るな!」
 机の上の模型に触れたまま動かない弓兵を訝しんで、槍兵がとんと赤色の肩を叩きました。すると瞬く間に、ドールハウスはより一層強い光を放ち、あふれた光が二人を包み込んだのでした。

***

「嬢ちゃんたちの玩具とはいえ、正体がよく分からんモンに不用心に魔力通すなよ…」
「ぐうの音も出ないな…、しかし、訳も聞かずに私に触れた君も大概不用心だと思うがね」
 腕を組んだまま、ふん、と少し気まずそうに弓兵が視線を逸らしました。槍兵はぴょいとベッドから立ち上がると、ぐいーっと短くなった腕を上げて背伸びをし、下ろす腕で弓兵のまろいお尻をぽよんと叩きました。
「おい!」
「ま、お互い様っつーことにしようぜ。取り敢えず、ここから出るか」
 階段を無視して、二階の寝室からひょいと槍兵が飛び降りました。弓兵も赤い腰布をひらりと揺らして槍兵に続きます。てってって、と二人は開けたリビングルームを突っ切って外に出ようとしましたが、ちょうど床板の途切れる部分で見えない壁にぶつかりました。
「ああ? 何だこりゃ」
 ぼわぁん、と触れた見えない壁に波紋が広がります。
「結界か」
「面倒だな、…ちょっくら突いてみるか」
 槍兵の手に朱槍が現れました。こちらも可愛らしくお団子の串ほどの長さになっています。
「待て! ドールハウスが壊れたらどうする!」
 つんつんと見えない壁を突こうとする槍兵を、慌てて弓兵が止めました。
「つってもよぉ、この手の魔術は解除するための手順が分からんとどうにもならん。…俺らじゃ力尽くで破って出るしかねえぞ」
 お互い魔術に心得があるとはいえ、完成された術式を正しい手順も踏まずに解除するようなすべは持っていないのです。しかし、無理矢理この結界を突破して、万が一ドールハウスを破壊してしまっては元も子もありません。
「…………キャスターを呼ぼう」
 弓兵が、なぜか観念したようにそう言いました。
「そりゃ、そうできれば助かるが、どうやって呼ぶ?」
「…たまたま今、パスがつながっているのでね」
「………ほ~お? 俺とは今切れてんのに?」
 ぐっと言葉を詰まらせた弓兵の顔を、意地悪く槍兵がのぞき込みます。その視線から逃れるように背を向けた弓兵の背中に、槍兵がむぎゅっと抱き付きました。弓兵の小さい肩には乗らなかったので、槍兵は近付けた顔をそのまま褐色の項にぐりぐりと押し付けることにしました。ついでに、柔らかい首筋にもかぷりとかじり付きます。
「ラ、ランサー、待てっ」
「犬扱いすんな、ほら、さっさと杖の呼べよ」
 どうやら、もう一人の猛犬と内緒で楽しんだことに多少の罪悪感を持っているらしい弓兵。槍兵は、実はそんなに気にしていませんでしたが、せっかく弓兵がしおらしくしているので、ドルイドが到着するまで、そのぷにぷにとした体を堪能することにしたのでした。


 しばらくして、弓兵の部屋にドルイドが現れました。
 ちまっとした二人を見てひとしきり笑った後、目尻に滲む涙を拭いながら、ドルイドはドールハウスをじっと見つめました。
「あー、小さくなってこの家に入り込むのは、元々こいつに仕掛けられてる魔術みてえだな。出るための方法もあるんだろうが…、そこまでは分からん。力尽くで破るのは、まあ止めておいて正解だったな。家と魔術が一体になってっから、無理に出ると壊れかねん」
「やはりそうか…」
 難しい顔をして呟く弓兵には、相変わらず槍兵がくっついていました。ふにふにとした二人の体を触ってみたいと、ドルイドが手を伸ばすと、意外にも結界に阻まれることなく、すんなりと触れることができました。
「お、外からは入れるんだな」
 むぎゅうっと二人まとめて掴んで、ドルイドがその小さくもっちりとした体を持ち上げました。もにもにもにもに、と優しく二人の感触を楽しんでいます。
「おいっ止めろ杖持ち!」
「ひぁ、揉むな! …ランサー、ひざっ当たる!」
 その反応が楽しくて、ついにドルイドは両手で小さな二人を包み込みました。左右の親指で、それぞれの頬をぷにぷにと擦っています。揉みくちゃにされた槍兵が、悪戯な白い手を朱槍で突きました。
「いって! おい刺すな!」
「うるせー、俺らで遊ぶんじゃねえよ!」
「キャスター、駄目元でこのまま私たちを持ち出してみてくれないか?」
 ドルイドの手と槍兵の体をぐいぐいと押し退けながら、弓兵が提案しました。ドルイドは小さく頷くと、二人を包んだ手をそっとドールハウスの外へと移動させましたが…
「わっ」
 なぜか弓兵だけが結界に引っかかって、ドルイドの手からころんとこぼれ落ちてしまいました。
「ちょっと待て、杖の!」
「分かってるよ」
 ぺちぺちと槍兵がドルイドの手を叩きました。それから先程は弾かれた見えない壁の辺りを朱槍で探りましたが、今は穂先に何も当たりません。首を傾げた槍兵は、ドルイドの手からするりと抜け出すと、再び朱槍を見えない壁に突き出しました。今度はまた、ぼわぁん、と弾かれました。
「どういうことだ?」
「ああ、何となく分かったわ。多分、俺とお前の魔力の質がちけえから、俺が掴んでると俺の一部だと誤認するんじゃねえか? ほら」
 ドルイドがもう一度槍兵を握って持ち上げます。もにょぉん、と多少引っかかる感じはありましたが、そのままドールハウスの外へ出られそうでした。
「だが、これじゃアーチャーが出られんだろう」
 ぺちぺちぺちと槍兵がもう一度白い手を叩くと、ドルイドはハイハイと言って、弓兵の隣に彼を降ろしました。
「取り敢えず、君だけでも脱出しては…」
「残ったお前はどーすんだよ」
「それは、」
「アーチャーも出られる方法あるぜ」
「「えっ」」
 ドルイドの一声に、小さな二人が勢いよく振り向きました。
「要は、アーチャーが俺の一部だと誤認されるくらいに、俺か槍持ちの魔力に染まればいいってことだ」
「な、なるほど…?」
「てことは…」
「魔力供給っつーよりは、一方的な魔力譲渡って感じかねぇこの場合」
 そう言うと、ドルイドは再び小さな二人を両手で掬って、ぎゅうっと包み込みました。
「本当は俺がすんのが一番良いんだろうが、…なんつうか、ちぃとばかし絵面がやべえだろ…」
 ドルイドが乾いた笑いと共にこぼしたその言葉に、思わず二人は〝小さな弓兵に魔力供給をするドルイドの姿〟を想像してしまいました。
「…間違って食われそうだな」
「むりだ…」
 槍兵は唾液交換を想像しましたが、弓兵はもっと濃い魔力の摂取方法を思い浮かべたようでした。
「つー訳だから、ほれ、さっさとしろ」
「君の手の上で?!」
「家の仕掛けが反応するから魔力を通すわけにはいかんが、今お前とはパスがつながってるだろ? 手にくっついてりゃ微々たるもんだが俺からも魔力が染みるからな」
「だが、しかし…」
「おらアーチャー、つべこべ言ってねえで口開けろ」
「ちょ、まて、何で君はそんなに思い切りがいいんだ!」
「ああ? 今更キスくれえで何言ってんだよ」
「へ? キス…? あ、ああ、そうか、キスだな!」
 慌てて取り繕いましたが、弓兵の小さな耳は大きな勘違いに真っ赤になっていました。それに気付いた猛犬たちは、にやにやと締まらない顔をしています。
「ん~、アーチャーは槍のと何するつもりだったんだ? 俺の手の上で」
「すけべ♡」
「うううるさいっ! ほらっランサー口を寄越せ!」
 むいん、と槍兵の顔を引き寄せて、弓兵がその口に吸い付きました。むちゅむちゅ、と顔ごとくっつける勢いです。
 いつもより小さい口に、二人とも勝手が分からずもごもごとしています。ドルイドは、少し緩めていた両手に、またじわじわと力を込めていきました。むぎゅうっと小さな二人の体が重なり合います。
「ん、んっ」
「…ぁ、」
 ドルイドが、もちもちとした弓兵の頬を親指でくすぐりました。少し指先が湿ったのは、小さな口から唾液がこぼれているからです。こぼしてるぞー、と声をかけながら、ドルイドは親指を弓兵の耳に移動させました。くりゅくりゅと優しく円を描くように、小さな耳を愛撫します。ぴくぴくと、弓兵の体が震えました。
 触り心地のよい弓兵の感触に気をよくしたドルイドは、もう一人、小さな槍兵にもちょっかいを出しました。むにむにした背中に、すうっと人差し指を滑らせたのです。
 つーっと項まで届いた指が、そのままぷにぷにとした白い頬を突くと、槍兵から迷惑そうな視線が向けられました。くく、と小さく笑ったドルイドは、人差し指を背中に戻して、かりかりと優しく引っ掻くように槍兵の腰を撫で続けました。その指の動きがまあまあ気持ちよかったので、槍兵はそのままドルイドの好きにさせることにしました。時折ぴくぴくと震える弓兵につられて、槍兵も指の動きにもぞりと体を震わせました。
 ドルイドの手の中で、優しい指使いに浸りながら、小さな二人はいつしか口付けに夢中になっています。
 口からはあふれるほどの槍兵の魔力を、体に触れる温かい手の平からは、じんわりとにじむドルイドの魔力を。やがて弓兵の体は、すっかりと青い猛犬たちの魔力に染まりました。
「よし、そーらよっと!」
 ぽちゅん、と水の中から掬い上げるように、ドルイドがドールハウスから両手を引き上げました。
「うおっ」
「ぅぐ」
 勢い余ってドルイドの手から放り出された二人は、白いシーツの張られた弓兵のベッドの上に、ころころと転がっていきました。
「家は、…ん、何ともねえな。おい、お前ら大丈夫か?」
 ドルイドはドールハウスの無事を確認すると、ベッドに仲良く転がる小さな二人に目を向けました。
「…キャスター、縮んだままなんだが」
「外に出ただけじゃ戻んねえのか?」
 長い口付けで小さなほっぺが林檎のようになった二人が、縮んだままの体を残念そうに眺めています。ドルイドはドールハウスを閉じると、二人の転がるベッドに近寄ってしゃがみました。
「正攻法で出た訳じゃねえからなぁ、仕方ねえ。お前らの中にあの家の魔力がまだちぃと残ってるみてえだから、…今度こそ魔力供給の出番かね」
「えっ」
 ドルイドが小さな二人の前に見慣れたルーン石をひとつ、ちょんと置きました。
「体の中から余計な魔力を押し出せば戻るだろう。慣れねえ体でやりにくいかもしれんが、頑張れよ~」
 そう言うとドルイドは、ドールハウスを小脇に抱えて扉に向かいました。
「キャスター待ってくれ、どこに行くんだ?!」
 弓兵が慌てて声を掛けます。ドルイドは抱えたドールハウスを小さく持ち上げて答えました。
「そろそろ嬢ちゃんたちに返す時間だろ? こいつの修理が終わってんなら、返すついでに仕掛けについても少し聞いてくるわ。…誤魔化して出ちまった後だから、あまり意味ねえかもしれんがな。まあ帰って来てもまだ戻れてなかったら、俺も手ぇ貸すからよ」
 ドルイドが出て行き、シュッと閉まった扉を小さな二人はしばらくの間見つめていました。
 あー、と間延びした声を漏らして、槍兵は横に転がる弓兵に近付きました。同時に、くいっと自分の下衣を引っ張って、その中身を確認します。大幅に省略された大事な部分には、いつもの青い毛はなくつるんとしています。ちょん、と股間に収まったものが想像以上に可愛らしい大きさで、槍兵は大きな溜息を吐きました。
 槍兵のその様子に、弓兵もそろりと自分の股間に手を伸ばしました。布越しに触れた膨らみがあまりにもささやかで、弓兵は槍兵の溜息の意味を理解しました。
「まあ何とも心許ない大きさだが、一丁やってみるか」
「…あ、ああ」
 さらりと礼装を溶かして柔い肌をさらした槍兵が、ちゅっと熟れた弓兵の頬に口付けました。槍兵に倣って全裸になった弓兵は、のし掛かる白い体を引き寄せながら、ぽてんとその身をシーツに沈めたのでした。

***

「よお、嬢ちゃんたち、待たせたな」
 予想外のドルイドの登場に、二人の少女は大きな目をぱちくりとさせました。
「まあ! 杖のおじさまが持ってきてくれたの?」
「赤い弓兵は少々野暮用でな。修理は終わってるから、ちょいと確認してくれや」
 談話室の机の上にドールハウスを置いて、ドルイドが手招きをしました。少女たちはさっと机に近寄ると、ゆっくりとドールハウスを開きました。中の書斎では、脚が直ったロッキングチェアが小さく揺れています。
「椅子、直ってる!」
「お部屋の壁紙もきれいになっているわ!」
 喜ぶ二人に、ドルイドが尋ねました。
「なあ、この家、何か魔術が仕掛けられてるみてえなんだが、嬢ちゃんたち知ってたか?」
「あら、さすがはドルイドのおじさま! そうよ、このお家には楽しい仕掛けが隠れているの」
 ふふふ、と秘密を打ち明けるようにナーサリーが答えました。ジャックも楽しそうに続けます。
「合い言葉を言ってノックするんだよ!〝ただいま〟」
 こんこん、とジャックが魔力を込めた手でドールハウスをノックすると、ぱぁっと光ってその中に引き込まれました。ちょこんと可愛らしく縮んだジャックが、ドールハウスのリビングルームをとてとてと歩き回っています。
「出るときはこう!〝いってきます〟」
 リビングルームを一回りしたジャックがそう言ってドールハウスを飛び出すと、再び光って元通りの少女が現れました。
「時々、このお家の中で秘密のお茶会をするの」
「みんなで大きなお菓子を食べたりするよ」
「なるほどねぇ、…あー、たぶん大丈夫だとは思うんだが、修理するとき少しばかり魔術に干渉しちまったんだ。本格的に遊ぶ前には、悪いが念のため一度点検してくれ」
「ええ、分かったわ。ありがとう、おじさま!」
「ありがとう!」
 嬉しそうに笑う二人にひらりと手を振り、ドルイドは談話室をあとにしました。静かな廊下をひたひた歩きながら、ドルイドは頭を捻ります。
「…今更かもしれんが、合い言葉を言わせてみるか…、それで駄目なら、魔力供給でやるしか…、しっかしあのナリじゃなぁ…なかなか難しいかねぇ、…手乗りサイズ、…ん~」
 ドルイドがあれこれと考えを巡らせていると、ふいに何処ぞの聖杯からあらぬ知識が流れ込んできました。ぴたり、とドルイドの足が止まります。
「………綿棒、ねぇ」
 まあ一応用意しておくか…と呟いたドルイドは、医務室へと進む方向を変えたのでした。

***

 後日。魔力供給に大貢献した綿棒が、医務室の某女史から入手したものだと知った弓兵が、ドルイドに盛大な八つ当たりをするのですが、それはまた別のお話。


《解決編(R18)へ続く》

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