JRの誤取扱に対して訴訟を起こすための「訴状テンプレート」を公開します

JRの窓口で運賃や乗車券の取扱いについて誤った対応を受けることがあります。特にJR東日本においては、知識レベルの低い係員がロクに教育を受けないまま現場に出され、トラブルになったという話をよく聞きますし私自身も遭遇したことがあります。

多くの場合はその場で解決しますが、場合によっては

  • 明らかに規則と異なる取扱い

  • 正しい制度を説明しても是正されない

  • 結果として本来不要な運賃を支払わされる

といったケースもあります。

このような場合、本来支払う必要のなかった金額については 不当利得返還請求として返還を求めることができます。

本記事では、実際のJR窓口での誤取扱を想定した 簡易裁判所用の訴状テンプレートを公開します。


今回想定している典型ケース

今回のテンプレートは、次のようなケースを想定しています。

2026年3月13日をもって 往復乗車券(往復割引を含む)の新規発売は終了しました。

しかし同時に、旅客営業規則の改正に伴う 経過措置が設けられています。

この経過措置により

3月13日以前に発行された乗車券を原券として乗車券類変更を行う場合には
往復割引を適用した往復乗車券へ変更することが可能

とされています。

ところが実際の窓口では

「往復乗車券はもう発売していない」

という理由だけで往復割引の適用を拒否されるケースが発生しています。

これは制度の理解不足による 典型的な誤取扱です。


なぜ少額でも裁判を起こせるのか

このような場合、法律関係は非常にシンプルです。

本来支払うべき運賃

実際に支払わされた運賃

の差額は

法律上の原因なく受領された金銭

となるため、民法703条の 不当利得に該当します。

そのため、差額について返還請求を行うことができます。

金額が小さくても、簡易裁判所では通常の民事訴訟として扱われます。

また、金銭債務は民法484条により 債権者の住所地で履行する持参債務となるため、原告の住所地の簡易裁判所に提訴することが可能です。

さらに、代理人弁護士を依頼しなくても「本人訴訟」という形で提訴することはできますし、訴訟費用(印紙代・切手代・日当など)は敗訴者負担となります。


この訴状テンプレートを公開する理由

鉄道会社の誤取扱は、利用者側が制度を理解していないと是正されにくい側面があります。

しかし

  • 正確な規則

  • 明確な計算

  • シンプルな法律構成

が揃えば、裁判としては非常に判断しやすい案件になります。

本テンプレートは

  • 区間

  • 運賃

  • 人数

  • 駅名

などを空欄で入力できるようにしており、様々なケースで利用できる形にしています。

また、窓口で係員の氏名を確認し、その場で訴状に記入できる形式にしています。

これはトラブルを起こすことが目的ではなく、

取扱いの責任主体を明確にする

という意味があります。


利用する際の注意

このテンプレートは 制度に基づく正当な請求を行う場合にのみ使用してください。

当然ながら

  • 実際に誤取扱があること

  • 金額計算が正しいこと

  • 証拠(乗車券など)が残っていること

が前提になります。

また、本記事は法律相談を目的とするものではありません。
個別案件については必要に応じて専門家へ相談してください。


訴状テンプレート

訴状(不当利得返還請求事件)

令和  年  月  日

[         ]簡易裁判所 御中


第1 当事者

原告
住所 〒[         ]
氏名 [         ]
電話番号 [         ]

被告
東京都渋谷区代々木二丁目2番2号
東日本旅客鉄道株式会社
代表取締役社長 喜勢 陽一


第2 請求の趣旨

1 被告は原告に対し、金[         ]円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。


第3 請求の原因

1 往復乗車券取扱終了と経過措置

被告は令和8年3月13日をもって、往復乗車券(往復割引乗車券を含む)の新規発売を終了した。

しかしながら、同制度の終了に際しては経過措置が設けられており、旅客営業規則(以下「旅規」という)第248条及び同規則改正に伴う経過措置規定に基づき、同日以前に発行された乗車券を原券として乗車券類変更を行う場合には、往復割引を適用した往復乗車券への変更を行うことができる取扱いとされている。


2 本件乗車券類変更の申出

原告は令和[    ]年[  ]月[  ]日[  ]時[  ]分頃、被告が運営する[         ]駅窓口において、令和8年3月13日以前に購入した[         ]駅から[         ]駅間の乗車券(以下「本件原券」という)を提示し、[         ]駅から[         ]駅までの往復割引乗車券[   ]名分への乗車券類変更を申し出た。

同区間の営業キロは600キロメートルを超えており、旅規に基づき往復割引の適用対象となる区間である。また、本件原券は前記経過措置の適用対象であった。


3 被告係員の取扱い

しかしながら、本件窓口担当係員

氏名 [         ]

は、往復乗車券の発売は終了していると主張し、原告が経過措置の適用を指摘したにもかかわらず、往復割引の適用を認めないまま乗車券を発売した。

その結果、原告は往復割引を適用しない片道運賃を基礎とする乗車券の購入を余儀なくされた。


4 過払金の計算(金額は全て税込、端数処理済み)

(1)本来適用されるべき往復割引運賃(1名あたり)
[         ]円

(2)実際に支払わされた運賃(1名あたり)
[         ]円

(3)1名あたりの差額((2)-(1))
[         ]円

(4)請求金額合計((3)×[   ]名分)
[         ]円


5 法律上の評価

被告は、旅規及び経過措置に基づき適用されるべき往復割引を適用せず、法律上の原因なく原告から本来の運賃を超える金額を受領した。

したがって、被告は法律上の原因なく原告の財産によって利益を受け、原告は同額の損失を被ったものである。

被告が受領した上記差額金についてはこれを保持する法律上の原因がないから、被告は民法第703条に基づき同額を返還する義務を負う。


第4 管轄

本件請求は金銭の返還を求めるものであり、民法484条に基づき債権者の住所において履行すべき持参債務である。

したがって、本件債務の履行地は原告住所地であり、民事訴訟法5条1号により[         ]簡易裁判所に管轄が認められる。


証拠方法

甲第1号証 本件原券の写し
甲第2号証 本件変更後乗車券の写し
甲第3号証 旅規該当部分
甲第4号証 運賃計算資料


付属書類

1 訴状副本
2 証拠説明書
3 証拠写し


最後に

本来的には、この訴状テンプレートを実際に使う機会がないまま、経過措置期間を終えることができるのが最も望ましいと考えています。

しかしながら、制度に反する不当な取扱いに対して利用者が泣き寝入りするしかない状況が続くのも健全とは言えません。

適切な制度理解と、必要な場合に法的手段を取ることができるという抑止力を社会として保持しておくことは、公共交通の適正な運用という観点からも重要であると考えます。

本記事で公開したテンプレートが、実際に使われることなく役目を終えることが理想ですが、万一同様のケースが生じた際には、制度に基づいた適切な対応の一助となれば幸いです。

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