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救いと芽生え/Novel by 朱星

救いと芽生え

4,742 character(s)9 mins

ha設定で槍弓といいますか槍+弓といいますか…そんな感じのお話です。ランサーがかっこよくてアーチャーが可愛くてアニメが楽しくて楽しくて仕方がない今日この頃です。ゲームはVita版snとhaだけやりました。どの子も可愛い。

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 繰り返される四日間は退屈で退屈で、しかし終わらせるにはほんの少しばかり惜しい。その最たるものがあの赤い弓兵の存在である。双剣を好んで使い、弓の腕はもちろんのこと、盾も保有する異質な存在。アレとの対峙は楽しい。気分が酷く高揚する。しかしその精神性はいただけない。あの男に決定的に欠けているもの。欠けたまま歩んでしまったものは、いったい。

まぁいいか、と槍兵は目の前の相手を見据えた。三日かけて口説き落としたのだ。楽しまねば損だろう?

***

 まるで舞のようだ、と。
 誰の邪魔も入らないように人避けのルーンを四方に刻んだ森の中。嵐のように荒々しい刺突を繰り返す槍兵と対峙しながら、弓兵はこの場に不釣り合いな言葉で彼を形容した。

 弾丸のように飛来する魔槍。それが己の皮膚を貫く寸でのところで双剣を交差させて受け止め、しかし膂力の差で弾き飛ばされる。彼が追ってきた。先程受け止めた双剣には罅が入っており、まともに受け止めることすら出来まい。ならば、とそれを投げ捨てて創り直す。鋭い刺突を白刃で弾き、勢いを殺すことなく身を翻して殴打しに襲い来る魔槍を黒刃で受け流す。そうして互いに数歩引いた。


「っは! 楽しいなァ、アーチャー」
「ふん、君のような戦闘狂と一緒にしないでくれ」
「その戦闘狂に付き合ってんのはどこのどいつだ、よッ!」


 瞬きを一度。
 する間もなく、瞬時に詰められる距離。

 眼前に迫る穂先をかろうじて避けたものの、頬に赤い一閃が刻まれた。ほんの少しタイミングを見誤った。だがそれがどうしたと言わんばかりに双剣を投擲し、投影しては再び投擲。これを三度繰り返し、槍兵が得物を回転させて防いでいる間に宙へ飛ぶ。その間、彼から目を逸らすことはない。逸らせない。即座に弓を投影し、矢の雨を降らす。矢避けの加護を持つ槍兵に当たるとは思えないが、数瞬は目くらましになるだろうと考えていたが。


「甘い!」


 矢の隙間を縫うように槍兵が飛び込み、己の肩を蹴り砕きにきた。咄嗟に身体が動く。背に重心をずらし、勢いに身を任せて飛ぶ。いくつかの木がへし折れたものの、肩は骨に罅が入った程度だ。問題はない。ふ、と息を吐いた。十数メートル先では槍兵が笑っている。心底楽しくて仕方がないという類の笑みだ。


「相変わらず、巧く防ぐ野郎だ」
「全く、手が付けられんな」
「おーおー、テメェには言われたかねぇよ。無節操に使いやがって。弓兵なぞ名ばかりじゃねぇか」
「何を言う。私の最も得意とする得物は弓だというのに」


 まぁ白兵戦の方が好みだがね、と肩を竦めてみせれば、だろうよ、と槍兵はくつくつと笑いを零しながら得物を構えた。

弓兵も双剣を手にし、向かい合った。途端、始まる閃戟の嵐。掠る穂先に体を傷つけられながらも、その間弓兵は思う。

 (あぁ、私も楽しいよ、ランサー)

 命を奪う訳ではない。地獄に一人、生存している訳ではない。ただ満足したいがためのこの行為。それがとても心地いい。久しく忘れていた。本当に、いつまでも続けていたいものだ、と考えていたら。


「? ランサー?」


 槍兵の手が止まった。魔槍を地面に立て、「あー…」と頭をがしがしと掻き混ぜている。この戦闘狂が止まる理由が分からず、どうしたのだろう、マスターからの呼び出しでもあったのだろうか、などと首を傾げていたら――いきなり頭を殴られた。
存外に威力があったためにズキズキと痛む。


「何をする!」
「うっせぇな! んな顔すんじゃねぇよ萎える!!」
「訳が分からん!!」


 再び殴られそうになり、身を屈めて避ける。すると今度はしなるような踵落としを背中にくらった。屈んだせいで逃げられず、地に膝をつく。拙い。次に攻撃されたら回避も防御も間に合わない。


「――この馬鹿が」


 馬鹿とはなんだ馬鹿とは。少なくともそんな心底呆れたように、どうしようもないとでもいうように言われる筋合いはない。そんな言葉が口から零れる前に、こん、と魔槍で頭を小突かれた。


「気に入らねぇ」


 槍兵の酷く冷ややかな声。


「ふざけた目をしやがって。お前の中のつまんねぇ括りで区別すんな。んなこと考えながらオレとやり合うな」


 そんなにも顔に出ていたのだろうか。だとすれば気が緩み過ぎている。弓兵はぐっと眉間に力を入れ、槍兵を見上げた。


「分かった分かった、分かったから叩くな鬱陶しい」
「いーや、分かってねぇだろ。お前がんな物分かりのイイ奴なら嬢ちゃんは苦労してねぇ」


 迷惑をかけている自覚は、ある。
 あの強い、宝石のような眩しい彼女から距離を取り、突き放したくせに現界するための契約をさせているのだから。


「苦労、だからな。迷惑じゃねぇ。そこんところ間違えんなよ」
「……君は心が読めるのか?」
「たわけ。何度繰り返していると思ってんだ」


 今度はぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。子供を宥めすかすようなその手付きにどこか安らいでしまって、弓兵は思わず唇を噛みしめる。
その態度に槍兵は呆れの混じった穏やかな笑みを浮かべ、弓兵と目線を合わせるためにしゃがみ込んだ。


「お前は本ッ当に面倒くせぇなぁ」


 安寧や幸福を、与えられるままに甘受出来ない男。そうなるまでに何を見、味わい、強固な意志を植え付けてしまったのか知る気もないし、知ろうとも思わないが、どうにかしてやりたいと思ってしまう。放っておけないのは性分だ。


「やり方は邪道だし考えが捻子くれ曲がってるし口を開けば皮肉まみれだしなんでもかんでも隠し通す馬鹿だけどよ」
「喧嘩を売っているのかね。ならば買ってやろうそこに直れ」
「いいから聞けって。んで剣は仕舞え」


 殺意の混じった眼差しを受け流し、双剣を手にした弓兵の両腕を瞬時に力づくで押さえ込む。腕に筋が浮いて見えるあたり、抵抗しているつもりなのだろうが悲しいかな、膂力の差でびくともしなかった。


「っ、このっ、」
「だから聞けって。いけすかねぇとこばっかだけどまぁ、それはそれとして――技量は本物だろ、お前」


 抵抗が止んだ。


「なに、を、」
「そのままの意味だ。なんだ、意味が理解出来なかったか?」
「違う!」


 弓兵の唇が戦慄き、鋼の瞳が揺れていた。心なしか血の気も引いている気がする。褒めてやっているのにどうしてそこで動揺し、その上否定するのか。


「ちが、違う、私は、オレは、」
「何が?」


 今にも泣いてしまいそうな顔をしているくせに、滲む気配すらない弓兵に対し、槍兵は問いかけつつ静かに言葉を待つ。うろうろと視線を彷徨わせていた弓兵は、やがて掠れた声で諦めたように呟いた。


「全部――助けたかった、だけなんだ」


 からん、と双剣が地に落ち、そして消える。


「幸せであってほしいと、笑顔でいてほしいと、ただ、それだけを願って、走り続けて、けど、届かなくて……結局…」
「結局?」

 槍兵はもう斬りかかってこないだろうと手を離し、自身も魔槍を消した。何が琴線に触れたのか。精神に爆弾を抱え込んでいるような危なっかしい彼を、不思議と突き放す気にはなれなかった。

「オレがしたことは所詮、ただの人殺しだ」

 人殺し、と槍兵が口にすると弓兵がそうだ、と返す。

「英雄である君は国を、民を、守るために武器を振るい、敵を殺した。それは気高き精神に基づいた立派な行為だ。だが私は違う。自身のエゴのために殺戮を続け、守護者と成り果てた今も殺し続けている。そんな生き物が身に付けた技量など、本物なんかじゃない」

 一旦言葉を切り、嘲りを含んだ笑みを浮かべ。

「…罪の証だ」

 ブチッと何かが切れた。
 よしよく分かった。この男が面倒くさい原因はよく分かった。それを踏まえた上で槍兵は弓兵の両頬に手を添え、そうして。














「馬鹿かテメェは!!!!!!」

 渾身の力で頭突きした。






 頭を抱えて悶絶する弓兵など知ったことか。同様に痛む自身の額も知ったことか。はらわたが煮えくり返っている今はそんなことどうでもいい。


「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたがここまで馬鹿だとはな!! おいコラアーチャー顔上げろ!!」
「~~っ!! っ!! 毎度毎度っ、突然なんなんだ!!」
「うるせぇ全部テメェが悪い!!」
「はぁああああ!? 事実を告げただけだろう!? 何に対して怒っているんだ君は!!」
「お前のその認識についてだよ!!」


 ビシッと指を突き付け槍兵が吠える。


「英雄だなんだ言われちゃあいるがな、どいつもこいつも自己中心的なやつばっかだ! 自分のやりたいように生きてやりたいように死んだやつばっかりだ!! それが結果的に国や民を救ったにすぎない! テメェみてえに最期まで他者のために尽くしたやつなんか極めて稀なんだよ!!」


 手段を選ばないやり方は気に食わないが、他者の幸福を願うその精神は尊いものだ。そうそう掲げられるものではない。故に、槍兵は。


「だからな、アーチャー」


 罪の証など。
 (人殺しに善も悪もあるか。)


「誇れ。」


 英雄か守護者かなど。
 (どっち側にいるかってぇだけだ。)


「貴様はオレと戦える、オレを満足させるに値する、優れた技量を持った戦士だと、誇っていい」


 くだらない括りなど。
 (捨ててしまえばいい。)


 弓兵の瞳が揺れた。揺れて、光を失う寸前に瞼を下ろし、再び開けた時、そこには喜びが混じっていた。


「…いいのか」
「当ったり前だろ。光の御子が許してやんよ」
「私なんかが、」
「なんかとか言うなっての。穿つぞ」
「ふ、ふふ、君は、本当に、もう、」


 ――無茶苦茶だな。


 くすくすと笑いながら柔らかい表情を浮かべた彼は酷く幼く、とても愛らしく――いやいやいや待て、待て。落ち着けクー・フーリン。今己は何を、考えかけた。どんな言葉で彼を形容しようとした。これはあれだ、滅多に拝めない、というか奇跡の瞬間に惑わされただけだ。男色嗜好などない。断じてない。…ないはずだ。


「どうしたランサー? 続きはしないのか?」
「やる」
「そうこなくては。折角君に認められたのだから、このままやめてしまうのは勿体ない」
「……お前卑怯。そういうこと言うのすっげぇ卑怯。あー…くっそ、まぁ、いいかぁ」


 こちらの思考がショートしている間に立ち上がっていた弓兵の手にはいつもの双剣が握られている。その状態でこちらの言葉の真意が掴めず、頭上にクエスチョンマークを飛ばしている彼に不覚にもときめいてしまい、槍兵はいろいろと諦めた。

とりあえず日付が変わる前に叩きのめして告白でもしてみようか。


end?

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