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エミヤ先生のコミュニケーション養成所/Novel by 凍護@コメント嬉しい

エミヤ先生のコミュニケーション養成所

10,892 character(s)21 mins

アップルパイを作るジャンヌオルタとエミヤの話、以前のりんごの形のアップルパイの別側面の話のようなものです(知らなくても読めます)おまけにジャンヌオルタVSアルジュナとおまけのおまけにジャンヌオルタがエミヤと絆レベルを上げるまで/うちカルデアではエミヤはアベンジャーズにツンデレで慕われていたり、アルジュナと仲がいいのでそれを形にしたかったので100%趣味です!!/ブクマや評価いつもありがとうございます!!お蔭様でルーキーランク78位いただきました!!///
※こちらの作品はあくまでジャンヌオルタ+エミヤとして書いておりますので、CPタグを付けるのはご遠慮ください

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それはエミヤが大量のリンゴでアップルパイを作っていた時のこと。
レイシフト時に収穫した丸い実はルビーのような深い赤で、香る甘い香りは中にたっぷり蜜が詰まっているのだと主張してくる。
まず作った生地をカルデアの誇る電撃コンビが改造を施した業務用冷蔵庫に入れて寝かしている間、シンクの上で山となっているリンゴを手に取ると包丁を当てる。

もう数え切れない個数のリンゴの皮をむき、何十個めかのリンゴを手に取った時、ふと顔を上げるとキッチンのカウンターにいつの間にいたサーヴァントと目が合う。
黙々と作業をするエミヤをじっと見つめていたそのサーヴァント、アベンジャーのジャンヌオルタは見合った鋼色の瞳に一瞬驚いた顔をしたが、すぐに普段の皮肉気な笑みを浮かべた。
「ちまちまちまちま、ほんっとよく飽きないものね。男のくせにエプロンなんてつけちゃって、いつも人の世話を焼くつまらない男」
「つまらない男をずっと見ている君も大概じゃないのか?まだ焼きあがりには時間がかかる。待つ間に紅茶でもいれようか?」
いつからいたのかわからなくとも、ジャンヌオルタがずっと前からそこに居たのだと察するには十分だった。
包丁を置いて食器棚のポットを取ろうと背を向けたエミヤに、鼻を鳴らしたジャンヌオルタは腕組みをすると唇を歪める。
呆れた雰囲気を感じて振り向いてみると、端正な顔を悪徳歪めたジャンヌオルタが下から見上げるようにエミヤを睨めつけた。
「バカな事を言わないで!…はんっ、そうやって都合のいい妄想ばかりふくらませて、楽しそうね?でも残念、あんたのお節介が嬉しいものなんて、頭の中の想像よりもずっと少ないわよ」
「わかっているさ。私は私がやりたい事のために君たちを付き合わせているに過ぎない、独りよがりも甚だしいものだ」
明らかに揶揄する含みを持たせ、言葉の鋭い切っ先でエミヤを刺したジャンヌオルタは、それをあっさりと認められて拍子抜けをする。
もう少し反論をしたり動揺する姿が見られるかと思いきや、今更それを口にするのか?というような雰囲気に、用意した言葉の棘ばかりがとっかかりを得られずに思わずつんのめる。
自分が会ってきたどの者とも違う反応に、二三回口を開閉させたジャンヌオルタはぷいっとそっぽを向く。
「…でも、ここの連中は物好きが多いから、そこまで迷惑しているとは聞かないわ。よかったわね」
皮肉を込めても覆い隠せないフォローへ笑いかけたエミヤは瞬時にそれを収め、もしもそんな反応を見せてしまえば確実にジャンヌオルタから怒りをかうため咳払いをして誤魔化す。

会話が途切れてからしばらく、再開された皮むきをまだずっと見続けるジャンヌオルタにエミヤは小さく嘆息すると包丁を置いて腕を回した。
何故あの堕ちた聖女が飽きもせずキッチンにいるかなんて、真意はわからなくとも理由ならだいたいわかる。
大方カルデアで親しい数少ないもの、マスターとキャスターのジル・ド・レェが揃ってレイシフトでいないため、暇を持て余しているのだろう。
素直に暇だと言ってくれればこちらも動きようがあるものの、きっとストレートに仕掛けては倍の罵詈雑言が返ってくる気難しい猫のような相手、ここは腕の見せどころだ。
「…はぁ、やれやれやはりここの人数分のデザートを作るのには私ひとりでは骨が折れるな。ジャンヌ、大変申し訳ないがもし手が空いていれば手伝ってもらえないだろうか?もちろん、無理にとは言わないが」
「言い出しっぺの責任も持てないなんて、情けないものですね。仕方ないわ、そんなに言うのなら手を貸してあげましょう」
あくまでも心底困ったように、あくまでも自分に非があるように。
押しつつちょっと引いて見ると、まんまとジャンヌオルタは銀色の猫っ毛を揺らしていそいそとキッチンに入ってきた。
小さくガッツポーズをしたエミヤは、それからも細心の注意を払って言葉を選ぶ。
あくまで自分は助けてもらっているという体、あくまでジャンヌオルタは仕方なく来たんだと言い聞かせる。
たとえ促さずとも戸棚からジャンヌオルタ自ら新しい包丁を取り出して、腕の武装を解除していても。
「ありがとう、恩に着るよジャンヌ。この埋め合わせは私に出来ることならなんでもしよう」
「そんなもの要らないわ。ここのいけ好かないサーヴァント達の口に入るものですもの、貴方が作るただ美味しいものを食らわせるのは癪ですからね。せいぜい味の調和を乱してやらないと気が済まないわ」

ジャンヌオルタを新たに隣へ増やし、エミヤがリンゴの皮むきを続ける。
無意識に動く手は滑らかに、しょりしょりと伸ばしていく皮の尻尾はあっという間にまな板の上でとぐろを巻いて積み上がっていく。
一個を向き終わるのに3分もかからないエミヤの手際を見たジャンヌオルタは自らの手元、30cm程度の長さが最長記録の皮へ唇を尖らせた。
「…あんた、本当に無駄に器用ね」
「これだけが唯一の特技だからな。そういう君も才能がある」
「お世辞なんていらないわ、馬鹿じゃないの」
「いいや、本音だ。りんごの皮むきなんて経験がなければ毎日台所に立つものでも難しい、それを初めてでここまで出来るのは珍しいぞ」
素っ気なく顔をそらしたジャンヌオルタはすかさず続けられた料理上手のエミヤからの褒め言葉にうっすら頬を紅色に染める。
エミヤも過剰なお世辞は言わない主義であるため、むやみに果肉を削ることなくむかれている皮に視線を落とすと、わざとらしく憂いた顔で首を振った。
「だからこそ勿体ない、りんごの皮むきは包丁よりもりんごを動かした方がやりやすいということを知らないことが」
「…こう?」
独り言の体を装って言われたアドバイスに素直に従ってみると、確かに包丁を支点にリンゴを回した方がよりスムーズに皮がむけていく。
チラッと横目でそれを伺ったエミヤは、残念だと言わんばかりの態度で額に手を添える。
「そうだ。そしてもっと肩の力を抜けば、君ほどの者ならばセンスで出来るだろうに」
「当然でしょ、これくらい。目を瞑ってもできます」
「ああ、素晴らしい。君の上達ぶりを世の未熟者へ見せてやりたいさ」
エミヤのアドバイスでジャンヌオルタも驚くほど皮むきがやりやすくなった。
担がれた気は否めないものの、捻くれ者の動かし方を心得たエミヤにうまく転がされて心がささくれ立つ隙がない。


人手を増やしたことにより、山となったリンゴはみるみる姿を消し、エミヤは最後のリンゴの皮をまな板の上に落とし終える。
「君のおかげで予想よりずっと早く終わった。ありがとう、ジャンヌ」
「安っぽい礼なんて要らないわ、私のご機嫌取りをする暇があるのなら次の作業を教えなさい。のろまは嫌いです」
「そうだな、では君にはリンゴを煮る係をやって欲しい。私が切り分けていくからたまにかき混ぜてくれるととても助かる」
カルデアのキッチンは元から大人数用の食事を用意する想定がされており、一般家庭のものよりもコンロは大きく数もある。
先にざく切りにしたリンゴを入れて、上から砂糖と軽くレモン汁を絞った鍋をジャンヌオルタに渡したエミヤはコンロに火をつけた。
続けて半分に割って中の種を抉り出し、一口大に切ったリンゴを鍋に入れては煮詰める準備をしていくエミヤに合わせて、ジャンヌオルタは空いたコンロへ次々に鍋を載せてフィリング作りのペースを上げていく。
ジャンヌオルタの案外本当に筋がいい様子へ、いい助手ができたエミヤは小さく微笑むとスピードをあげていった。
キッチンは瞬く間に煮詰められたリンゴの香りに包まれ、甘酸っぱいその香りにエミヤも食欲がそそられる。
布巾を置いた上には出来上がったフィリングの鍋が、早々に自分の役目を終えたエミヤはオーブンの余熱とパイシートの調整に取り掛かり、頼んでから休まず鍋を見てくれているジャンヌオルタの長髪の後ろ姿へ視線をやった。
「そういえば、再臨されてから姿が変わったな。今の髪型も素敵だ」
これまでの作業中も交わしていた他愛のない雑談のそれに、ジャンヌオルタは今回は苦々しく顔を歪める。
触媒を糧に魔力を得て、ジャンヌオルタはより強力な姿へと至った。武装は変化し、彼女の銀髪は腰までの長さに一気に伸びたのだ。
そうそれはまるで、彼女が元にしたとある聖女のように。
「お褒めの言葉ありがとう。そうよね、長い方が女はいいわよね。まるで聖女みたい?…はっ、武器を取り上げられて、男へ生殺与奪を任せるしかないか弱いものって見ていて気持ちいいわよね?」
「誤解だ。単純に、君個人としてその髪はとても美しい」
背中で揺れる髪を忌々しげに睨んだジャンヌオルタは嘲りを唇に乗せてエミヤを見上げる。対してエミヤは慌てることなく首を降り、表情を和らげてなんの手入れもされていない髪を目で追う。
少しでも神経を逆なでするようなことを言えば激昂も出来たところを、まるで手応えのない相手にジャンヌオルタは居心地悪そうに顔を背ける。
そんな相手に、失礼と声をかけてから髪をひと房取ったエミヤは、伸びてからジャンヌオルタ自身もろくにさわらなかった髪へ微笑んだ。
「これからパイにりんごを詰めていくんだが、作業の邪魔になるといけない。よければその髪を結わせてくれないか?」
「…好きにしなさい」
投げやりに許可を与えられたエミヤは早速キッチンへ椅子を持ってくるとジャンヌオルタを腰掛けさせ、手のひらに投影させた黒いリボンを手に手櫛で銀髪を整える。
褐色の指が波を描くそれは癖がついていて、所有者同様素直ではなさそうだ。
とりあえず髪を改めて背中へ集めて引っ掛かりがないように梳いていたエミヤは、膝の上でぎゅっと手を握りむすっと膨れているジャンヌオルタを窺った。
「美しい髪だ。私が生きている間もこれほど綺麗な銀髪はお目にかかったことがない」
「こんなくすんだ灰のような髪ですらそんなに喜ぶなんて、随分貧相な人生だったのね」
「そうかもしれないな。さて、どんな結び方がいい?」
皮肉もさらっと受け流され、まるで動揺一つ起こせないエミヤに観念したジャンヌオルタは、少し考えると吐き捨てるようにリクエストを伝えた。
「そうね、なんでもいいけど。…三つ編みはやめてちょうだい、吐き気がするわ」
「了解した」
ジャンヌオルタが何を思い、そして三つ編みを忌避するのか、聞いてみれるのはとても簡単なことだろう。
しかしそれは当人が持つ感情であり、彼女が飲み込んだものを喉に手を入れ暴くのはエミヤ自身も望むところではない。
簡素な了承を伝えると、エミヤはリボンを手にジャンヌオルタの髪を上げる。

淡々と結われる自分の髪に渋い顔をしていたジャンヌオルタは、しばらくすると後ろから手渡される鏡に気づき、顔の前にあげた。
エミヤが選んだものは単純なポニーテール、普段なんの装飾もされないジャンヌオルタのウェーブのかかった銀髪ではそれだけでも十分目を引く変化だったが、瞬間ジャンヌオルタは視界の端に見える編み込みに表情を険しくさせる。
顔の側面の毛を頭皮に沿うように三つ編みにされ、毛先はリボンにまとめられた髪へと続く、指の腹の感触と鏡から見返すひどく可愛らしい髪型となった女の顔は今にも唾を吐き捨てそうなほど歪んでいた。
「どうかな?ジャンヌ」
「…ねぇ、やめてって言ったのが聞こえなかった?それとも嫌味かしら?」
鋭く睨む瞳を受け流したエミヤは背後のオーブンから鳴るタイマーの音に肩を竦め、さもしょうがないという顔を作ってジャンヌオルタの手から鏡を取ると魔力を解いた。
「君が言うのは三つ編みであって編み込みなら良いかとつい勘違いをしてしまったようだな、本当に申し訳ない。あぁ、しかし…そろそろオーブンも余熱の時間が終わってしまう。編み込みを取るにはまたすべて解かないといけないから、今回はどうか見逃してはくれないだろうか?」
「よく回る口だこと。こんな忌々しい姿は到底他のサーヴァントには見せられないわ。アンタみたいな格落ちがギリギリね」
後ろで恭しく頭を下げるエミヤに小さく舌打ちをしたジャンヌオルタは、自分からリボンを解くことなく椅子から立ち上がった。
椅子を戻したエミヤは手伝いに戻ったジャンヌオルタへ視線を向けると、度々無意識に編み込みへ手が伸びる竜の魔女に微笑む。
「では私と共に君が時間を過ごしてくれる時がまたあるのなら、期待してもいいのかな?」
「女の髪を弄りたい変態的な欲望は私以外に向けられないものね。まぁ、いいでしょう」
あのジャンヌオルタから引き出した次への約束に、エミヤは自分の心が華やぐのを感じていた。他との交流を絶った彼女が、たとえ自分のようなものでもそういう姿勢を見せてくれるのは歓迎すべきこと。しかしそれがエミヤは気まぐれに選ばれたのではなく、エミヤだからこそと本人が気づく時はない。
用意された生地にリンゴを詰めていく傍ら、隣に立って同じくアップルパイを完成させていくエミヤの存在に、再度頭へ手を伸ばしたジャンヌオルタは胸中で誰に言うでもなく悪くない…と小さく呟いた。


後は焼くだけ、というところまで完成させたパイがシンクにずらりと並び、それを次々にオーブンへ入れていく男の姿を先に椅子に腰掛け休んでいるジャンヌオルタが見るともなしに見る。
人の世話がそんなに楽しいかと思うほど、エミヤは休むことなく人のため働き続ける。
なんの見返りもないのに馬鹿な男、と頬杖をついて視線を外し、毒を吐くジャンヌオルタの元へ不意に芳醇な花のような香りが舞い降りた。
顔を上げてみると、一段落したエミヤがポットとカップをテーブルに用意しているではないか。
花の香りはカップから立ち上る紅茶の湯気が正体で、心の泉を満たすような華やいだ香りはジャンヌオルタの眉間のシワを容易く溶かす。
「ここまで手伝ってくれて本当に助かったよ、ジャンヌ。お礼といってはなんだが、もう少し君の時間をくれ」
そう言ってエミヤはトレイの上に用意した紅茶セット以外のもの、紙ナプキンと銀食器を続けて置くと、最後につい先程出来上がったアップルパイをテーブルの上に載せた。
「アップルパイの一番美味しい時は焼き立てだ。功労者の君にはどうかその最高の瞬間を味わってもらいたい」
焼く前に塗った卵の照りでツヤと光るパイ生地に、1ピースに切られた断面にはみっしりと詰まったりんごが見える。
皿の上に置かれたアップルパイを、しばらくじっと見つめたジャンヌオルタはおもむろにフォークを手に取るとポニーテールを揺らして一口に切ったパイを口に運んだ。
「…悪くないわね」

Comments

  • hiro

    で?アルジュナのエピソードは何処かな?

    February 5, 2025
  • 鴉八丸
    December 15, 2022
  • p13
    May 30, 2022
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