「調停で元夫と向き合うことは苦痛でしかない」離婚後の共同親権4月スタート…DV被害者の不安
■子どもの意思、きちんと尊重を
山梨県立大大学院特任教授(臨床心理学)の西澤哲さんは「被害を受ける親と自分を同一視したり、親を守れない無力感を抱いたりし、自己肯定感を破壊される。フラッシュバックなどの心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症することもあり、重大な影響を及ぼす。子どもは双方の親と血がつながっているだけに、身が引き裂かれる思いを抱きがちだ」と話す。
親権や親子交流を考える上で最も重視すべきは子どもの利益だが、愛知県弁護士会の岡村晴美弁護士は、「家庭内にDVがあり子どもが別居親と会うことを嫌がっていても、調停で親子交流が取り決められるケースはこれまでいくつもあり、多くの子が傷ついてきた。家裁でDVや虐待による子どものトラウマが適正に評価されているとは言いがたく、子どもの意思がきちんと尊重されるか不安が残る」とする。 中国地方の30代女性は大学卒業後、看護師になったが、「『女は大学に行かず、結婚して相手に従え』と言っていた父が親権者だったら、望む進路に進めていなかっただろう」と話す。両親の離婚後も時折父に会っていたものの、名字を変えたことを「(母に)言われたんだろう」と問い詰めてきたり、娘である女性の年齢を間違えたりし、「私への愛情は感じなかった」という。 それでも、当時もし共同親権の制度があったら、「きっと父は求めていた。母への怒りのためだけに私たちの生活に干渉してきただろう」と語る。 「親権は子どものためにあるはずだが、自分のために主張する親もいる。協議離婚でも調停でも、子どもの気持ちや意見を大切にし、取り上げる機会を保障してほしい」と訴える。
■「妻を『所有物』のように思っていた」
「子どもに会えなくなることが一番怖い。一生かけてでも変わりたい」 妻にDVをしていた中部地方の30代男性は、そう語る。一般社団法人「アウェア」(東京)が行う被害者プログラムに2年前から参加。少しずつ別居中の妻と幼い娘2人に会える機会が増えたという。 機嫌が悪いと一方的に妻をどなり、反論されると首を絞めた。「相手が悪いから」と考えていたが、妻が弁護士に相談したことを機に、初めて加害を自覚した。別居後、久しぶりに会った娘に申し訳なさがこみ上げ、更生を決意。受講を通し、妻を「所有物」のように思っていた自分に気づいたという。 アウェアのプログラムは、オンラインで週1回2時間、52回以上あり、費用は1回3500円。グループワークで行動を振り返るほか、教材を通じて相手の気持ちに思いをはせる。「相手を支配する」という誤った価値観を自覚し、正しい関わりを学ぶのが目的だ。 代表理事の山口のり子さんは「DVの原因は身に付いた価値観と行動であり、治療ではなく教育と訓練が必要だ。DVはパートナーだけでなく、子どもも傷つけ苦しめる行為。親が変わろうと努力することは、子どもへの責任を果たすことにもなる」と話す。