「調停で元夫と向き合うことは苦痛でしかない」離婚後の共同親権4月スタート…DV被害者の不安
■「真意」見極める手立て必要
改正民法では、DVや虐待の恐れがあれば家裁は単独親権にしなければならない。DVの認定について、法務省は「被害者側の立証責任は求めておらず、証拠は必ずしも必要ではない。諸般の状況を総合的に考慮する」との見解だが、被害を見抜けるかは大きな課題だ。 NPO法人「ひとり親家庭サポート団体全国協議会」が行った2022年の調査(複数回答)では、調停を経験したひとり親1147人のうち、23・1%が「DVを主張しても『子どもに(対して)はなかった』と言われた」、27・2%が「精神的DVを主張しても証拠がないため軽く扱われた」とし、子どもと元配偶者との交流を求められたと回答した。 また、改正民法施行後は、父母が協議して親権者を「単独」にするか「共同」にするかを選び、離婚届に記すことになるが、DV被害者が相手に逆らえずに共同親権に同意させられる危険性もある。改正法の付則では、「父母双方の真意」の確認措置を検討するとの文言が盛り込まれ、法務省は離婚届にチェック欄を設ける方向で検討するが、機能するかは不透明だ。 神奈川大教授(法哲学)の井上匡子さんは「現状でも人手不足の家裁は共同親権の導入で業務がパンクしかねず、態勢強化が急がれる。協議離婚については、離婚届のチェック欄だけで真意を確認するのは不可能で、受理する自治体が窓口で真意を見極めるための手立てが必要だ。ただ自治体が独自に取り組むのは難しく、国は率先して具体的な方策を示すべきだろう」と指摘する。
■子どもの心に大きな傷
DVは、大人だけの問題ではない。 本来安心して育つはずの家庭で一方的な暴力が繰り返される状況が、子どもの心身に与えるダメージは大きい。 関西地方の30代女性は、「子どもが最も傷つくのは、会いたくもない親に無理やり会わされること。親の権利を振りかざすことが、子どもの幸せにつながるのか」と問いかける。 毎日酒を飲み、母と兄に激しい暴力をふるう父だった。女性が中学生の時、父が仕事に出た隙に3人で逃げた。父が母のSNSを探し当て、「殺しに行く」とメッセージを送ってきた時は恐怖で眠れず、外出もできなかった。離婚調停で父が親権を主張していると母から聞いた時は、「子育てに関心もなく、私たちの生活を奪った本人が平然と親権を求めるなんて」と激しい怒りを覚えたという。 女性は20代前半まで、威圧的な男性を見るとパニック発作で呼吸が苦しくなった。男性と交際しても、「いつかこの人も私を傷付けるのでは」と感じ、信じ切ることができない。「心の傷は深く、簡単には癒えない」と語る。