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きれいなきみときたないわたし/Novel by 羽衣

きれいなきみときたないわたし

3,376 character(s)6 mins

槍弓にドはまりしすぎて課題が手につきません。誰か助けてください。なんというか、アーチャーはランサーの事大好きで大好きで仕方がないが故に、自分のせいで汚れて欲しくないと身を引くような気がしてなりません。アーチャーがランサーの事好きすぎてどんどん自虐化していくのを、アニキが全力で甘やかしてそれすら受け入れてしまえばいいのに。 アーチャーが泣くくらい甘やかせばいいのに。 衝動のまま書きなぐったので文章があやふやすぎてどうしようもない 槍弓萌え… ■ひええブクマ、コメありがとうございます!エミヤ幸せになれ そしてルーキーランキング入り…だ…と…?ざわ…

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何故、私はこの男に殴られているのだろうか。

ふと、馬乗りになられながらそんな事を思う。
きっかけは些細な事だった。
いつものように伸ばされた手を、払っただけ。
それがいつもと少し違ったのが、それにほんの少しの言葉が足されたというだけだ。
どうやら目の前の男は、それが大層気に入らなかったらしい。
それが耳に入るや否や、私を殴り倒して今に至る。
最初こそ殴り返していたのだが、今はそれすら面倒になり、されるがままになっている。
怒りだとか疑問だとか恐怖だとか、そんなものを手放してしまえば、余計な事を考えなくてすむことを、私は経験上嫌というほど思い知っている。
耐えることは得意だった。
よく耐えることは苦痛だと勘違いされるが、苦痛というものは所詮感情でしかない。
ようは、感情さえなければ何にも耐えられるという事だ。

そう、たとえば今のように。

もう私を殴る拳が疲れたのか、彼の腕がだらりと下がる。
少しだけ赤くなった彼の手を見て、ああ、痛かろうに、とぼんやり思う。

「…お前は、本当に救いようのない馬鹿だな」

苦々しく口に出された言葉に、私ははて、と首をかしげた。
今更だ。
自分が馬鹿であることなど、もう十分自覚していた。

「今更だな。ところでランサー、もう気は済んだのか」
「済むわけねぇだろ」
「そうか。だが、それ以上私を殴っても、君の手を傷めるだけだ。止めておいた方が懸命だと思うが」

素直な感想を述べれば、彼は赤い目をぐにゃりと歪めた。
悲しんでいるのだろうか。何故。
先ほどからこの男には疑問しか沸かない。
殴られた理由にしろ、今彼がそんな、泣きそうな顔をする理由にしろ。
到底私には理解できない。
彼が差し伸べた手を振り払ったことは悪いとは思っている。
でも、私にはその手を取る資格などないのだ。

彼は私に愛してると言った。
私はそれに気の迷いだと答えた。
気の迷いなんかじゃない、と言い、彼は手を伸ばした。
そして、私は彼の手を払いのけたのだ。

一言、君を穢したくない、と言葉を添えて。

恐らくはそれが起爆剤だったと思う。
けれどそれは彼を想っての忠告だった。
彼は正真正銘、誇り高き英霊。
私はただの、擦り切れた守護者。
例えるならば、水面に映る太陽のような、輝き揺れる彼と、アスファルトの上でただ干上がるのを待つばかりの泥水。
光を反射し透き通るほど美しい彼の中に、私という泥水を入れるなど、誰が許すだろうか。
彼は綺麗なままで居てほしかった。
私になど構わず、ただ、私の前でその姿を見せてくれるだけで満足だったのだ。

恐らく、それが彼に伝わらなかったのだろうと、己の説明能力の低さにため息が出る。
どうやって説明すれば彼に納得してもらえるだろうか。
そう思案にふけっていると、ぐ、と、顎を掴まれた。
逸らしていた視線が、赤い目に囚われる。
きれいだ、と、思った。

「どうしてお前はそうなんだ」
「どうして、と言われても。悪いが君の言っている意味が解らない」
「そうやって自分すら否定して、俺の心すら否定すんのか」
「違う。君を否定するつもりはない」
「なら、」

なんで、そう自分を貶めるような言い方をするんだ、と。
彼は泣きそうな声で私の胸に頭を押し付けた。
さらり、と、絹のような青い髪が首元にかかる。
やはり、きれいだ。

「貶めているつもりはない。これは事実だ」
「…アーチャー」

搾り出されるように彼の口から零れ落ちた声は、獣のそれに似てとても低い。
先ほど私に馬乗りになって殴ったときの声に似ている。
するり、と、私の頬に彼の手が触れた。

「…殴って、悪かった」
「何故謝る」
「お前がこんなにわからずやだと思わなかった。殴ったら人間らしく反抗してくるとばかり思ってた」
「…私は誰にでも無抵抗な人間ではない。第一、最初は抵抗しただろう」
「ほんの2、3発は抵抗って言わねぇ。…いや、もういい。俺のやり方が間違ってた」

ごめん、零された言葉に再度首をかしげた。
彼の指が唇をすべる。
ちり、という痛みが走った。どうやら切れてしまっているらしい。

「何で反抗しないんだ」
「反抗して欲しかったのか、君は」
「その方がマシだった。俺が殴ったら、その何倍もの力で殴りかかってくれるほうが、清々したさ」
「…そうか、それは済まなかった」
「もういい。お前がどういうやつなのか今ようやく理解できた。…これでも、理解してたつもりだったんだがな。まさかここまで、どうしようもない奴とは思わなかった」

そうして、彼はようやく私の上から退いた。
彼の重みと、熱が離れる。
それに少しばかり惜しいと思ってしまう私は、随分と強欲になってしまったようだ。
途端に、頬や唇、肩の辺りがじんじんと痛む。
今更痛みに自覚したらしい。
まあ、この程度の痛みなど、どうでもいいのだけれど。

「なあ、アーチャー」

彼の声が私を呼ぶ。

「…なんだ」
「お前は、俺がどれだけ好きだと言っても、それを間違いだと言うのか」
「ああ」
「…そうか。お前も、俺と同じ感情を抱いてても、か?」
「ああ」
「随分迷いが無ぇんだな」
「生憎、迷い悩むような感情はとうの昔に擦り切れてしまったのでね」
「ああ、そうだろうな。だからこそ、お前はこんなに壊れて脆い」
「……壊れてなど」
「壊れてるだろうが。思い切り俺に殴られても悲鳴すら上げず、涙すら流さずに死んだような顔する奴の、何処が壊れてないって言うんだ馬鹿」

そんなひどい顔をしていたのか。
今更ながらに自分の顔を撫でる。

「もういい。お前は殴ったところで解らない奴だってことがよーくわかった」
「なら」
「勘違いすんな。俺がそんな事で諦めるわけがねぇだろうが」
「…ランサー」
「そんな顔したってダメだ。俺は」

お前をぐずぐずに甘やかすって決めたんだ、と、発せられた言葉と共に伸ばされた腕。
それを振り払う間も無く、痛いほどに抱きしめられる。

駄目だと言ったのに。
私に触れるなと。
言ったのに。
何故彼はためらいも無く私に触れるのだろう。
自分が汚れるのも厭わず、私には眩しすぎるほどのその綺麗な体で、私を抱くのか。
引き離そうと腕に力をこめれば、はなすものかと彼の腕の力も強まる。
やめてくれないか。
君の体温は、優しすぎて私には痛すぎる。

「はなせ」
「いやだ」
「放せと言っているだろう!!」
「ぜってぇ嫌だ。お前が慣れるまでずっとこうしてやる」
「だから君が穢れてしまうと言っている!私などに触れるな…!」
「お前のせいで穢れるならそれでもいい」

くしゃり、抱きかかえられたまま、髪の毛を撫でられる。
ああ、暖かい。
何て残酷な、優しいてのひら。

「…君は、馬鹿か」
「お前ほどじゃねぇよ」
「私を一体どうしたいと言うんだ」
「欲を言うなら抱きたい」
「たわけ!!」

思い切り頭を叩いてやる。
けれど眼前の顔は痛みに歪むこともなく、だらしなくにへら、と弧を描いた。

「言ったろ。ぐずぐずに甘やかしてやるって。お前は力技じゃ逆効果だし、もういっそ甘やかして甘やかして、泣いて謝るぐらい甘やかしまくってやるさ」

だから、覚悟しろ。
そう愛しげに呟かれ、彼の唇が私のそれをふさいだ。

嗚呼、やはり彼に私の意図が伝わってないらしい。

咥内を荒らす彼の舌から逃げながら、ぼんやりと思う。
逃げようとも絡められ、一層深くなるそれに、同時に本当にこの男が諦める気が無いのだと思い知る。
…許されるのなら、この一時だけでも、彼を受け入れてもいいだろうか。
私には彼が綺麗すぎて眩しいけれど。
許されるのなら、彼を愛したいと。


うっかり願ってしまった自分に、ほとほと嫌気が差した。    



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