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The Works "日本語ベンキョウしたらおぼえてろ" is tagged "槍弓" and "現パロ".
日本語ベンキョウしたらおぼえてろ/Novel by 神代アキ

日本語ベンキョウしたらおぼえてろ

2,711 character(s)5 mins

#クーエミライフに投稿しようと書き始めたもんの、「アレ?この二人同棲してねえ」となってしまい没にしたものです。(代わりに書き上げたのが前作)
現パロです。大学卒業してすぐくらいかな。
残暑見舞いは9月15日までOKだそうですが、あっつい日をイメージしてたのでせめて暑い時期のうちに投稿しときます。

同人リハビリ中なんですが、やっとちょこちょこ小説を完成出来るようになってきました。
あとはR18か…これが厄介なんだよな…筆が進まなくなる…

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ちりりん、と窓の外に吊るされた風鈴が、涼しげな音を立てて揺れる。
その音につられ、つい窓を開けてしまったが、入ってきた熱風に顔を顰めランサーはすぐに窓を閉めた。本日の気温は34度。故郷のアイルランドではついぞお目にかからない数字だ。文明の利器クーラーの冷気が存分に利いた部屋が殊更ありがたく感じる。
「夏本番って感じだなぁ。こりゃザンショもキビシそうだ」
「ほう、残暑とは、難しい日本語を知っているものだなランサー」
窓の外に広がる夏特有の濃い青空を見上げながらそうぼやいたランサーに、洗濯物を畳んでいたアーチャーがいつもの皮肉を投げる。そのくらいの軽い皮肉にはもう慣れきったランサーは、腐るでもなく「もう来日して長いもんでね」と応えを返した。
「この時期になるとニュースでアナウンサーがよく言ってるじゃねえか。流石に覚えたわ」
「それはそれは」
パンッとシャツの裾を引き、皺を伸ばしながらアーチャーは美しく洗濯物を畳んでいく。その手際の良さは、ずっと見ていて飽きない。
「しかし暦の上ではもう秋だからな。君のニュアンスではこれから来るようだが、今が既に残暑だよランサー」
「え、マジか!?…うわマジだ。この”タツアキ”ってのがそうだろ?」
「それは“りっしゅう“と読むんだ。…実のところ、昔日本で使われていた暦の日付をそのまま今の暦に当て嵌めただけだから、どうしても実際の季節とズレてしまうのだがね」
はーなるほど、とカレンダーを眺めながらランサーが呟く。それを横目で見ながら、アーチャーは次の洗濯物に手を伸ばす。
「ああ、だから今ザンショミマイを出すのか」
その言葉に、畳む手が止まった。一瞬の後、何も無かったかのように動き出す。
「何を?」
「いや、職場でな、営業のイッカンでお得意さんにハガキを出すんだって店長がザンショミマイを作っててな。まだ夏が始まったばかりなのに気が早いなと思ってたんだ。そういう事かって納得したわ」
「…日本の風習だからな。君には馴染みがないだろう」
「お前が毎年送ってくれてたろうが」
今度こそハッキリと手が止まる。
「高校卒業して別れてから、俺が故郷の大学に入って、すぐに」
だが、アーチャーの顔は洗濯物に向けられたままで。
ランサーは、カレンダーの前から止まったままの横顔を見つめる。
「日本からの手紙ってな大体届くまでに1ヶ月近くかかるから、入学した9月に届いたって事はちょうどこのザンショの時期に送ったって事だろ?ならあれが所謂ザンショミマイって奴なんだなって」
ランサーからの視線が刺さる頬を、アーチャーはそっと撫でた。
「…ちゃんと、届いてたんだな」
何の話題にも出さないから、途中で紛失してるとばかり。
頬を撫でる手を下ろし、また洗濯物を畳み出す。わざとらしく吐いた溜め息で、身体の強張りを解いた。
「まあな。…電話でもメールでも話題にしなかったのは、腹が立ってたって言うか…」
ランサーにしては珍しく歯切れの悪い話し方に、今度はアーチャーが顔を向ける。さっきとは逆に顔を逸らしたランサーは、バツの悪そうな顔で
「だって、お前楽しそうにしてたんだもんよ」
と、拗ねた声音で頰をかいた。
「大学入ってこんなサークル入ったとか、何処に行ったとか、こんな友達ができたとか」
「ランサー」
「あとセイバーの事もあれこれ書いてたのも腹が立った。すっげえホメやがるし」
「ランサー、それは」
「だから」

「スッゲー口惜しかった」

一瞬、息を吸い込み、大きなため息と共にランサーは吐露する。

「何でそこに俺は居ないのかって、ずっと思ってた。高校卒業したら故郷に帰るのが最初から決まってたからって、どうして言いなりになっちまってたんだって、お前からの手紙が届くたびにずっと後悔してた。だから、大学を卒業して、今度こそ自分の考えで日本に来たんだ。お前のそばに、居たかったから」
「……そんな事も、初めて聞いたぞ」
一切の感情を削いだ声で、アーチャーが呟く。ランサーはといえば、白い肌を朱に染め、口を尖らせている。高校時代から変わらない、照れている時の癖だ。
「言えるわけねーだろ。…友達の友達に嫉妬するなんて、かっこわりーし」
その様子が、ほんの少し遠い記憶にある思い出と結びつき、アーチャーは目を細める。

ああ、そうだ。こんな顔が見れるくらいには、自分はこの男の側にいたんだった。
クラスメイトの誰にも見せないこんな表情を、自分だけが見ることができると、密かな優越感をもつくらいには。

「…そんなことで、将来を決めてしまったのか?」
「そんなことってなんだよ。俺にとっちゃ大事なことだったんだ」
「俺の、葉書を読んで──それは」


「してやったり、だな」


忘れられたくなかった。いい思い出にされたくなかった。悔しがって、会いたがってほしかった。
おとなになったらぜんぶおしまいにするから、いまだけ、わすれないで。


そんな想いを込めた葉書は、込めたものを余すことなく伝えて、彼を連れて来てくれた。


「ん、なんて言ったんだ?シテ?」
「さてランサー、夕飯は食べていくんだろう?リクエストはあるかね」
「あ、ごまかしやがったな!カレー!!」
「先日もカレーだったじゃないか…仕方ない。今回はグリーンカレーに挑戦してやろう。残暑厳しい今日にピッタリだろうからな」
「カラすぎるのはカンベンしてくれよ」

残暑の風が、ちりりんと風鈴を揺らした。






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設定みたいなもの↓


ランサー:小学校に数年いた後高校の3年間を日本で過ごしアーチャーと出会う。友情と共に淡い恋心もあったが、結局何もないまま卒業と同時に帰国。その後毎年送られてくる残暑見舞いの葉書に心を掻き立てられるが大学在学中は忙しすぎて日本に行くこともままならず(電話とメールはしていた)想いが募った挙句日本で就職を決意する。花屋の店員。難しい日本語と漢字はまだ勉強中。

アーチャー:両片思いに気付かず、自分からアクションも起こせずだったが、卒業して別れる時になんとなくこのまま良い思い出で終わってしまう雰囲気なのが少し悲しくて、残暑見舞いの葉書にわざと楽しい思い出を書き連ねて送ってみせた。忘れられるのが嫌で自分でもあざといことをしていると自覚はあったが、社会人になったら諦めようと思ってたのでランサーはギリギリ間に合った事になる。しょっちゅうご飯を食べに来るランサーに困惑中。まだ一緒に暮らしてはいないがそのうち転がり込んできそう。



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