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オレを巻き込むな/Novel by マコト

オレを巻き込むな

2,776 character(s)5 mins

■槍に好きな相手がいると知った弓に振り回される緑茶の話。
■ひらいて赤ブー用に突発的に書いた槍弓でした。槍弓に巻き込まれる緑茶は良いですよね。

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「ランサーに好きな相手がいるらしい」
「……へえ」
 相談があるのだと呼び出されたカフェ。随分と真剣な面持ちで切り出した男に、ロビンフッドは気の抜けた声を返した。
「誰なのかは教えてもらえなかったんだが、捻くれたところはあるけれど根は素直で、笑うと可愛い世話焼きのお人好しなんだそうだ。あと料理上手だとも言っていた」
 はあ、とまたもや気の抜けた声が漏れる。
 話題に上がっているランサーというのは、目の前の男―アーチャーとロビンフッドの共通の友人だが、その男に好きな相手がいるらしい、と重大な秘密を明かすように言われたところで、ロビンフッドにはようやく知ったんですかい、としか返すことができないのだ。なにせランサーが誰を好いているかをロビンフッドは知っているのである。
 それ、あんたのことですよね。そう告げられたらどんなにか楽だろう、と気付かれないように小さく息を吐く。
 ロビンフッドからすればあからさまな程にランサーからの好意はアーチャーに向かっているというのに、目の前の男は全く気付いていないのだ。恋の橋渡し役などできればやりたくないし、こういうのは本人がきちんと伝えるべきだろうと考えているため何も言わないでいるが、さっさと告白してくれないかね、というのがロビンフッドの本心である。
「で、なんでそれをオレに言うんですかね?」
「ああ、その…」
 何やら言い淀むアーチャーに、もしやこの鈍感朴念仁が、その好きな相手とは自分ではないだろうか、と気付いたのではないかと、ロビンフッドは思わず息を呑んだ。もしそうであるならば、遠回しに己の好意に気付いてもらおうとしたのだろうランサーに祝福の言葉を贈ろう。そう決めてアーチャーの次の言葉を待つ。
「その、だな…ランサーが言った特徴を考えてみると、ランサーが好きなのは、ロビンフッド、君なのではないかと」
「ちっげえわっっ!!」
 思わずダンッと両手で机を叩きながら叫んでしまった。とんでもない誤解が発生している。
「な!何故そんな勢いよく否定することができるんだ。ランサーの言う好きな相手の特徴が全て当て嵌まるじゃないか」
「当て嵌まってねえよ!つうか、オレは確かに捻くれてるかもしれませんがね、別にオタクみたいなお人好しじゃないですよ!」
「お人好しだろう君は!」
「違うっつってんでしょ!…ああいや、落ち着きましょう。店の中で騒いだらダメですね」
 最初に騒いだのは君だろう、などとぼやく男を放ってコーヒーを一口啜る。それから一つ息を吸ってロビンフッドはもう一度否定の言葉を紡いだ。
「とりあえず、オレではないですよ」
「だから何故否定できるんだ。これでも散々考えた末に辿り着いた答えだったんだが?」
「…そりゃあ、オレが件の好きな相手ってのが誰だか知ってるからですよ」
 その言葉を聞いた途端目を見開いたアーチャーにそっと息を吐いた。
 恋の橋渡しなんてものをするのは御免被りたい。御免被りたいが、そうしなければ自分に火の粉が掛かるというのであれば、恋のキューピッドだろうと何だろうとやってやろうではないか。
 とはいえ、ここではっきりとそれはアンタですよ、などと告げるのもできる限り避けたいところである。誰が誰を好きだなんて、外野同士が話すならともかく、当事者に外野が話すべきことではないのだから。
「誰なのか聞いても良いだろうか…?」
「流石に部外者のオレの口から相手の名前を言うのは憚られるんですが…」
 僅かに身を乗り出し食い入るように見つめてくるアーチャーに、どう伝えたものか、とロビンフッドは思わず視線を彷徨わせた。
 はっきりとアーチャーのことを口に出すのは憚られる。けれど、相手が誰なのかがはっきりしなければ、己はおろか他の人まで巻き込まれるような、そんな嫌な予感がするのである。
 言葉には出さず、それでいてアーチャーが自分のことだと気付いてくれる方法。
 いっそ鏡でも差し出して、胡散臭い占い師よろしく、これを見れば相手がわかりますよ、などとやってやろうか。
 そう投げやりに思ったところで、いやでも悪くないかもしれない、とロビンフッドははたと目を瞬かせた。大分直截的なやり方ではあるが、一応言葉にはしていないし、何よりこれならアーチャーも疑う余地もなく自分のことだと気付いてくれるに違いない。鏡など手元にないが、姿さえ映すことができれば良いのだからどうとでもなるだろう。
「ロビンフッド?」
「さっき言った通りオレの口からはっきり言うのはちょっと避けたいんで、ヒントだけ教えますわ」
 急いでスマートフォンを取り出してインカメラを起動する。そしてその画面をアーチャーに向けながらヒントという名の答えを告げてやった。
「この画面に映っているのがそのお相手ですよ」
 ああオレから聞いたというのは内密に。それから答え合わせはちゃんと本人としてくださいね。
 そう言い添えてからロビンフッドは笑みを浮かべてみせた。
 良かったですね。両想いだったんですよ。
 ランサー同様、ロビンフッドからすればバレバレだったアーチャーの恋心を胸の内で祝う。ぐだぐだ悩んでないでさっさと告白すりゃあ話は早いって言うのに、とほんの少しの恨み言を混ぜながら、ようやく収まるところに収まるのだろう友人達を思ってそっと安堵の息を吐いた。
「そんな、まさか…」
 呆然とスマートフォンの画面を見遣るアーチャーに、本当にランサーの想いに気付いていなかったんだな、と憐れみにも似た想いが浮かんでしまう。アーチャーがここまで自分に向けられる想いに鈍感でなければ、きっともっとスムーズに話が進んだのだろうに。
「まさか、ランサーの好きな相手がアーラシュだったなんて…!」
「…は?」
「いやしかし捻くれているというところはどう考えても当て嵌まらない気がするが、それ以外の特徴は確かに当て嵌まる気がするな。料理が上手いかどうかは把握していなかったが、以前お裾分けしてもらったフムスは確かに美味しかった」
「ちっげえよッッ!!」
 どうしてそうなった!と慌てて視線をアーチャーの背後に向ければ、少し離れたテラス席に大学の同輩の姿があった。恐らくはスマートフォンの画面の端にその姿が映っていたのだろうが、どうして画面の大部分を占める己を除外するのだ。
「もっと大きく画面に映っていた人物がいるでしょうが!」
 ええいもうアンタは何も考えるな!
 そう叫んで連絡帳を開いて通話ボタンを押した。相手は勿論ランサーである。

 この際恋の橋渡し役でもキューピッドでも何でもやってやるから、他人を巻き込むな!

 心の底からの叫びも虚しく、今後もロビンフッドは二人に恋愛模様に巻き込まれていくのだが、それはまた別の話である。

Comments

  • スラスラ☆ダイスキ

    お話、最高でした。弓の思い込みの強さは、すごすぎる! そこもまた魅力なんですが、ロビンにしてみれば、迷惑ですよね。

    November 29, 2020
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