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【第5回】人一倍、自制心があると思っていた私が「薬漬け」になるまでの3年間

最初に読者の皆さまに感謝を


不眠症がやっと完治して湧いてきた気力と体力を、今も不眠症に悩んでいる人に向けた「何か」に使いたいと考えて始めたこのnote。平日は仕事に追われて時間がないので、こうして週末に1本書くことをルーティンとしてコツコツ続けて2か月ほどが経ちました。

1週間に何人か「スキ」や「フォロー」をしてくださったり、自分の周囲の仕事仲間や友人からも「読んでるよ!」と声をかけていただいたり、本当にありがたいなあと感じています。

当初は、月に2本でほそーく、ながーく2-3年続けられたらいいな、という感じでしたが、自分の気力と体力に相談したところ「楽しいし、毎週末1本で月4はいけるよ!」というやる気満々の返事がきたので、ペースアップして続けていこうと思います。

今のところ、時系列に私の身に起きたことを書いていますが、ゆくゆくは「眠るための夜のルーティン」や「睡眠薬をめぐる世界の状況」、あるいは専門家や当事者へのインタビューも挟んでいけたらなと計画しています。

☆2のクリニックを受診してから後の話


さて、前回は寝つけない日々に「もう無理!」と音をあげ、「処方箋さえ出してくれたらいいや」という浅薄すぎる考えのもと、近所の☆2の精神科クリニックを受診、「ルネスタ」という「不眠ビギナー向け入眠剤」を処方してもらったところまで書きました。

今回は、そこから3年間でどうやって「薬漬け」になってしまったかをつまびらかにしていきたいと思います。

入眠を助けるごく軽い薬である、「ルネスタ」の1mg錠を飲み始めて数ヶ月は絶好調でした。ベッドに入る30分前に錠剤を飲めば、あとは6時間ほど朝までぐっすり。調子のいい時は、1mg錠を包丁で半分に割った0.5mgでもちゃんと眠れるくらいでした(いつでも錠剤を割れるように私の寝室にはペティナイフが常備してありました)。

そして相変わらず、月曜から金曜まで平日はバリバリ仕事をしていました。朝の8:00過ぎに娘を保育園に預けたあと8:30くらいからお迎えの17:00前まで、ランチの時間も削って仕事に明け暮れていました。

夕方から夜にかけては家事と育児の合間、パンツの尻ポケットに突っ込んだスマホをチラチラ見ながら、SlackやGoogleAnalyticsと格闘する日々(詳しくは第2回で書いた通りです)。平日のタスクが溢れてしまったら、土日の早朝、家族が起きだすまでの2-3時間でPCに向かい帳尻を合わせていました。

今から思えば、この生活スタイルをすぐにでも見直して、1mg錠剤1錠で眠れていたうちに減薬・断薬に向けて手を打つべきだったのです。

でも、当時の私にそう伝えても、「今はそれどころじゃない」と耳を貸さなかったでしょう。仕事で人から必要とされる喜び、働けば働くほど目に見えて成果が出る充実感、それから「人生で今、アクセル踏まなくていつ踏むの!?」という30代特有の万能感とテンション。

そのすべてが、正しい判断から私を遠ざけてしまいました。

半年ほどで不眠症は次のフェーズに移行した


「ルネスタ」を飲み始めて半年ほど経った頃、私の不眠症は次のフェーズに移行しました。

「中途覚醒」が始まったのです。

11:00くらいにベッドに入ったら30分以内に「入眠」はできるのですが、2-3時間で「覚醒」してしまうのです。夜中の2:00くらいに目が覚めて、そのあと寝つけずに朝を迎えてしまう。周囲が明るくなり、カラスの鳴き声や新聞配達のバイクの音が聞こえ始めた頃に、ようやく気を失うようにして1時間ほどうすーく眠れる日はあっても、たいてい妙な悪夢がセットでついてきて寝た気がしない。そんな日々に突入してしまいました。

☆2のクリニックには、初診からコンスタントに月1で通院していました。「中途覚醒」に苦しみ始めた私は診察で、例の黒縁メガネの先生にそれを伝えました。

「だったら、脳をちょっとぼーっとさせる薬を出しておきましょう。これを夕方18:00くらいに1錠飲んで、ルネスタもこれまで通り眠る前に飲んでください。それで様子を見ましょう」

こうして、不眠症発症から半年ほどが経過した時点で、2種類目の薬が投入されることになりました。

入眠障害と中途覚醒のモグラ叩き


黒縁メガネの先生がいう「脳をぼーっとさせる薬」とは、要は安定剤のことです。「アルプラゾラム」を処方され、飲み始めました。

と、同時にこの頃には、「ルネスタ」1mg1錠では寝つけない日が増えていました。それに対して黒縁メガネの先生は、

「まだ1mg錠ですから、まず1錠飲んで寝つけなかったら追加で半錠や1錠飲んでも構いませんよ」

と言いました。そして、私はそれに従いました。通院開始から1年近くが経つ頃には、「ルネスタ」1mg2錠と「アルプラゾラム」0.4mg1錠を毎晩服用して眠るようになっていました。

不眠症の人にとって「入眠障害」と「中途覚醒」はモグラ叩きのようなもので、「入眠障害」がなくなると、やがて「中途覚醒」が起きる。「中途覚醒」が収まったと思えば、「入眠障害」が復活してしまう…という調子で、私の場合、そのつど薬の種類や量が増えてしまいました。

自分の「自制心」には自信があったのに…


「ルネスタ」「アルプラゾラム」「ブロチゾラム」「ベルソムラ」…こうして黒縁メガネの先生に言われるがまま、3年間で薬の種類と量を増やしてしまった私ですが、その指示に従い続けるという判断をなぜしてしまったのか?

最後にそのことについて考えてみようと思います。

今回のタイトルにあるように、私は自分のことを人一倍、自制心の強い人間だと思っています。子どもの頃から運動でも、勉強でも、目標を定めたら人一倍努力して達成するような子でした。夏休みの宿題は遅くとも(!)7月中に終わらせて、毎朝6:30からのラジオ体操も毎年皆勤という、まあ、そういう、絵に描いたような優等生タイプでした。

大人になってからも、とりわけ独立して以降は、子どもの頃からの「必達体質」が顕著になっていったような気がします。進捗、納期、予算、売上、その他もろもろのKPI…そういうものをきちんと「守る」ことを、もう呼吸をするように自然と自分に課していました。

「守らない」という選択肢は、自分の中に浮かびさえしない。

「守る」以外の選択肢は、存在していませんでした。

そういう人間がなぜ、「このままじゃまずい」と気づきながらも手を打てず、ずるずると3年にわたり薬を増やし続けてしまったのか?「ヤバい」と頭でわかっていたなら、その自慢の自制心でさっさと薬をやめればよかったではないか? なぜ、できなかったのか?

それは、

夜しっかり眠れないことで、

「昼間のパフォーマンスが落ちるのが怖かったから」

これに尽きると思います。

「自分らしい判断」の積み重ねが招いた結果


眠れないと、集中力が続かず、思考もまとまらず、判断もクリアにならず、仕事のパフォーマンスがものすごく落ちます。記憶力がほとんど機能しなくなり、長期的な展望を持つ余裕がどんどんなくなっていきます。何より絶えず頭と身体じゅうが痛くて、PCに向かって座っているのさえつらい。

それを避けるために、少しでも寝たい。ひと晩2-3時間でもいいから、「深く眠れた」という感覚が欲しい。そうしたら、昼間がちょっとはラクだから。

「昼間のパフォーマンスを上げる」という目的のために、使える手段はすべて試す。ある意味、私がとってしまった間違った行動は、子どもの頃から続いてきた「必達体質」の延長線上にあったんじゃないかと考えています。

3年間ですっかり薬漬けになってしまった私は、それまでの私となんら矛盾するものではなく、ある意味、「いつも通りの正常な判断」を積み重ねた結果、最悪な状態に陥ってしまったとも言えるのです。

正常な判断ができず流されるがままに穴に落ちた。

ではなく、正常な判断をしているつもりで穴に落ちた、わけです。

ここで終わるのはちょっと尻切れトンボ感がありますが、次回は3年で仕上がった「最悪な状態」について詳しく書きつつ、どうやって泥沼から這い出る決意ができるようになったかについて記憶を辿っていきたいと思います。




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34歳で不眠症になって、5年かけて39歳で克服するまでのことや、睡眠について日々気をつけていることなどを思いつくままに書いていきます。薬のことや治療のことなど、普通のメディアで書きづらいこともフラットに書き残しておきたいので、noteにしました。
【第5回】人一倍、自制心があると思っていた私が「薬漬け」になるまでの3年間|すずきまどか/【連載】神ねむ
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