辺野古沖で船2隻転覆、高校2年生と船長が死亡 平和学習で沖縄訪問
16日午前10時12分ごろ、沖縄県名護市辺野古沖で、見学者を乗せた平和丸(5トン未満)と不屈(1.9トン)の2隻が転覆した。第11管区海上保安本部によると、乗っていた計21人が海に投げ出され、全員が海保などに救助されたが、2人の死亡が確認された。ほかに2人がけがをしたという。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設が計画されている辺野古では、20年以上前から海上での抗議や見学が行われてきたが、死亡事故は初めて。11管は、急に高い波を受けて転覆した可能性があるとみて、業務上過失往来危険、業務上過失致死傷などの容疑を視野に調べる。
11管によると、亡くなったのは不屈船長の金井創(はじめ)さん(71)と、同志社国際高校(京都府)2年の武石知華さん(17)。2隻には当時、同校2年の生徒計18人が、平和丸に10人、不屈に8人と分かれて乗船していた。高校生は全員救命胴衣を着用し、引率の教員は乗っていなかったという。
現場は、移設工事が進む辺野古沿岸部から東南東に約1500メートルの浅い海域で、立ち入り制限区域の外側。不屈が先に転覆し、約2分後に平和丸も転覆したという。全員が救助されたのは約1時間10分後だった。
気象庁によると、16日午前、名護市沿岸には波浪注意報が発表されていた。日本の東海上で低気圧が発達し、その影響で沖縄から太平洋沿岸はうねりを伴った若干高い波の状態がこのところ続いていたという。
玉城デニー知事は記者団に「大変心痛にたえない」と話した。
抗議活動のほか、見学者を乗せることも
今回辺野古沖で転覆した船は、米軍普天間飛行場の移設工事への抗議活動のほか、見学者を乗せることも行っていた。海上行動を行う団体「海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会」の複数の関係者によると、依頼があれば政治家や著名人、映画監督、研究者、学生らを乗せてきたという。
現場で警備にあたる海保側も、今回の船に高校生らが乗っているのを目視で確認しており、「通常の抗議活動ではない」と認識していた。
専修大学の山田健太教授は集中講義の一環として、ジャーナリズムを学ぶ学生たちの辺野古での乗船視察を行ったことがある。外から見えづらい移設工事の進捗(しんちょく)などを直接確認し、報道されている内容の真偽を検証することを重視しているためだといい、「現地に行って自分たちの目で見て匂いを感じ、風を感じることが大事」と話す。
国土交通省によると、観光船などのように需要に応じて他人を乗せる船舶は、海上運送法に基づき安全管理規程を設け、安全統括管理者や警報が出た場合の出航判断について定める必要がある。繰り返し乗客を運んでいた場合は、無償だとしても「事業性あり」として法規制の対象になる可能性がある。
今回の2隻は事業登録はされていなかった。一方、船舶安全法に基づく装備品の規定については、直近の検査では問題がなかったという。
「平和学習の集大成」で沖縄へ
同志社国際高の二股一郎教頭(62)が16日午後、生徒の搬送先の病院で取材に応じ、「生徒の命が失われたことは非常に残念」と話した。
同校や二股教頭によると、この日は2年生270人が修学旅行で沖縄を訪問。14~17日の日程の3日目で、七つのコースに分かれて各地を見学することになっており、一つが「辺野古をボートに乗って海から見る」コースだった。いずれのコースも夏休みの間に教員らが下見をしていたという。
同校では、平和学習の一環として沖縄を40年以上訪れており、辺野古の見学も約20年前から続いていた。
二股教頭は、「現地での抗議行動を見るためでなく、ニュースで様々に取り上げられている辺野古がどのようなところなのか、自分たちの目で見ることが一番の目的」と説明。2年生は沖縄の歴史を1年かけて学ぶといい、修学旅行は「平和学習の集大成」という位置づけだった。
二股教頭によると、学校は16日朝の段階で、警報が出ていないかなどを確認し、「問題がない」と判断した。最終的な出航判断は船長に委ねていたという。午前10時57分、「辺野古の船が転覆した」と学年主任の教諭から連絡を受け、事故を知った。
死亡した武石知華さんについて、二股教頭は「とてもまじめで優秀な生徒だった。平和にも関心があり、留学もしていた」と話した。中学時代から知っている生徒だといい、「とてもつらい」とうなだれた。
水難学会理事を務める長岡技術科学大の斎藤秀俊教授(工学)の話
海保の発表によれば、今回転覆した2隻は総トン数がそれぞれ5トン未満と1.9トン。どちらも個人が釣りを楽しむくらいの船の大きさといえる。
写真を見る限り、船は2隻とも船底を上に向けて浮かんでいる状態だった。この状態にまで転覆させられるのは、一般的には波の力が大きいと考えられる。警報や注意報が出るくらいの高波や、近くに大きな船が通ることで発生する「引き波」クラスのものだ。
また、このサイズの船の場合、乗客の動き方がバランスに影響し、船が傾くことがある。波によって乗客が強制的に片側に寄せられてしまうような事態になれば、船がひっくり返ってもおかしくない。
今回のように船に乗り慣れていない乗員がほとんどの場合、船が傾いた際の対処が適切に行われない可能性もある。
調査中に海上保安部のボートも転覆
16日午後5時5分ごろ、沖縄県名護市辺野古沖の海上で、那覇海上保安部所属の巡視船に搭載されているボート1隻が転覆した。第11管区海上保安本部が発表した。乗っていた海上保安官計6人は全員無事という。
11管によると、ボートの乗組員たちは同日午前に発生した平和丸(5トン未満)と不屈(1.9トン)の転覆事故の調査にあたっていた。
◇
当初配信した記事で、転覆した2隻に乗っていた21人について「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設工事に対する抗議活動のため」乗船していたとしていましたが、誤りでした。乗船していたのは同志社国際高校の生徒で、平和学習の一環で沖縄を訪問し辺野古を見学していました。記事を修正しおわびします。(3月16日21時)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます