大祝宴の後、開花舞殿の余韻はまだ残っていた。
櫛魂衆と闇夜衆が、珍しく合同で奉納した舞奏。カミは喜び、心願を叶えたという。だが二人の心願は、別のところにあった。萬燈夜帳は、比鷺の体を強く壁に押し付けていた。
「今日のお前の舞、他の観衆が目を奪うのを見た。あの瞬間、俺はカミにさえ嫉妬した。あれは、俺だけが知るべきものだ」
比鷺は、激情を隠すように髪を掻き上げ、萬燈の胸に寄りかかった。
「俺は、先生の曲を他の覡が褒めるのが嫌だった。俺の舞でしか、完璧にならないはずなのに……なんて思ってさ」
互いの独占欲が、交錯する。
舞殿の奥、月明かりだけが灯る部屋で、二人は触れ合った。
萬燈の唇が比鷺のうなじの化身に触れ、比鷺の指が萬燈の二の腕の化身をなぞる。化身同士が呼応するように熱を増す。
「心願叶うは、一人のみ。だが俺たちは、互いに独占し合うことで、叶うのかもしれない」
比鷺は求められることに弱く、微かに喘ぎながら答える。
「……そうだよ。カミなんかより、俺たちだけでいい」
二人の影は、狂い咲く徒花(あだばな)のように絡み合い、互いの輪郭を塗り潰していった。
舞奏の調べはまだ遠くに聞こえていたが、ここにはただ、互いを貪る独占の旋律だけがあった。
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