大国ロシアが仕掛けた現代の戦争、ウクライナ侵略は5年目に入り、終わりが見えない。「起きてから寝るまでロシア軍のことを考えている」と話す「職業的軍事オタク」を自称する著者が、これまであまりやってこなかったというテーマが「日本としてこの戦争をどうするか」。本書では、日本の安全保障に引き付けて論じた章を設けた。
「平和について議論する日本が好きだ。だから力がある大国の侵略が失敗したとの結論に持っていかないと、日本に良くない前例ができる。私のこの戦争への問題意識だ」
ロシアのウクライナへの要求には「非ナチス化」が含まれていた。ウクライナは「ナチス国家」ではなく、根拠のない主張だ。「私たちが何か正しくしていれば、絶対に戦争に遭遇しないというものではない。私たちは他国を侵略しないだけでなく、させない努力をしないと、結局は戦争に巻き込まれてしまう」
いま警戒するのは、「この戦争の処理を間違えると、秩序がなく、力が全てを決める、征服の時代に入ったとの雰囲気ができてしまう」こと。「強国でない日本には不利な世界。だからロシアによる侵略は失敗させるべきであり、日本は可能な範囲でウクライナに貢献を行う必要がある」と訴える。一層の対露制裁はもちろん、軍事面でのウクライナ支援にも踏み込む。本書には次のように書いた。
<戦闘爆撃機を、日本製の防空システムが撃墜することは是か非か。ロシアのパイロットを殺してでも民間人を爆弾から救うことと、誰も殺さないでその結果起こる死を受け入れることは、どちらが道徳にかなうのか。明確な答えはない。しかし、筆者は前者の立場に立ちたい>
「制裁強化や武器援助で侵略をくじいた実績を残せば、大国による隣国への武力行使への抑止となる。仮に中国が台湾やその他に、武力行使する際もこの戦争を考慮するだろう」。それは岸田文雄元首相が危惧した「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」の阻止につながる。
昨年11月、ロシアから無期限の入国禁止とされた。「ロシアに好かれようとも思わないし、日本人が研究する以上、日本人のためにならなければならない」(斎藤浩)
(ちくま新書・1078円)
小泉悠
こいずみ・ゆう 昭和57年生まれ。東京大先端科学技術研究センター(国際安全保障構想分野)准教授。著書に『ウクライナ戦争』など。