新人編集者が書籍づくりで副編集長とガチバトル!ダメ出しを食らっても「絶対譲らなかったこと」とは?
2024年に出版社・ダイヤモンド社に入社し、書籍編集局に配属された新入社員4人は、4月からnoteで『ひよっこ編集見聞録』を連載してくれていました。そして、その“ひよっこ”たちにも巣立ちの時期がやってきました。初めて編集を担当した本が書店に並び始めているのです!
今回は3人目となる、第二編集部に所属する森遥香(もり・はるか)さんのインタビュー記事をお届けします。この前編では、「企画立案から本の完成まで」を初めて一貫して経験した新刊『脇役さんの就活攻略書』の編集について話を聞きました。そこで体感したことや考えたこととは?
編集者人生が「マッハ」でスタート
――いきなりお詫びから始めなくてはいけないのですが、同期4人の中で最初に「編集者デビュー」を果たしたのは森さんだったんですよね。秋岡さん(*1)のインタビュー記事で「秋岡さんが最初」と書いてしまっていました。失礼しました。
*1 森さんの同期4人のうちの1人である秋岡敬子さん
森遥香:今年の2月に出た『ファイナンス学者の思考法』という書籍が、初めて編集を担当した本ですね。
もともとは横田さん(*2)が立てた企画です。その編集業務や制作に携わらせてもらっていました。カバーやタイトル、デザインなどをデザイナーさんやイラストレーターさんにお願いする、といった業務を担当していて、編集を引き継ぎました。
*2 森さんが所属する第二編集部の編集長である横田大樹さん。主な編集担当書に『統計学が最強の学問である』(西内 啓・著)、『新・半導体産業のすべて』(菊地正典・著)などがあります
それで、2作目の『脇役さんの就活攻略書』が、最初から自分で企画を立てた書籍です。
――森さんの次に編集者デビューが早かった秋岡さんで1作目が今年の6月でしたから、デビュー作を手掛けるのも、2作目の『脇役さんの就活攻略書』が出るのも、すごく早いですね!
早いですよね。第二編集部に配属されて本格的に編集者としてのお仕事が始まってから5カ月で『ファイナンス学者の思考法』が発売されてマッハで進みました。第二編集部は実践主義なんだと思います。「行け〜!とにかく本を作ってみよう!」みたいな(笑)。
――企画を立てるところから本の完成まで、書籍編集者という仕事を全て経験してみて、事前のイメージと違ったことはありましたか?
森:編集者の仕事の流れは大体理解していたつもりでした。でも、いざ取り組んでみると「不確定要素がめちゃくちゃ多い」ということに気づかされました。
例えば、原稿を編集する際は読みごたえを意識しているのですが、『ファイナンス学者の思考法』では、著者さんが執筆してくださった文をほぼ変えませんでした。ウィットに富んだ文章で、思考に至る壮大なプロセスを体感してほしかったからです。
一方で『脇役さんの就活攻略書』では、私が「登場人物を入れましょう」と著者さんに提案して、原稿を大幅にリライトしていただきました。本を読まない大学生でも、友人と会話する感覚で気軽に読んでいただきたかったからです。原稿もできるだけ易しい言葉を使うよう心がけました。
本によって、仕事の進め方がミクロな部分で違ってくる、というイメージを持ちました。
あと、編集者業務って「人対人」なんだなって。デザインをお願いする時も、自分が紡いだ言葉がそのままデザインに現れてくるので、打ち合せのときの言葉選びで本の方向性が変わっていく可能性がある。
だから無限に選択肢がある中で「ベストはどこなんだろう」って探すのがめちゃくちゃ難しかったです。書籍の中で使う言葉の定義一つとっても悩み続けて、「永遠に編集できる」と感じました。
「言語化しすぎない」ことの大切さ
――特に大変だったのはどんな点でしたか?
森:本の方向性を決めながら、関わってくださる方々にそれを伝えて調整を重ねるのが難しかったです。本を制作するのは関係者が多くて、著者さん、デザイナーさん、イラストレーターさん、DTPさん(印刷物のレイアウトやデザインの調整を担当する人)、校正者さん、そして上司の横田さんと怜子さん(*3)と、少なくとも7人にはチェックしていただかないといけないんです。
*3 森さんの直属の副編集長である田中怜子さん。主な編集担当書に『人生の経営戦略』(山口周・著)、『独学大全』(読書猿・著)などがあります。
本の方向性を決めて、皆様のアイデアを取り入れつつ、スケジュールを調整するのは本当に大変で。「こぎ始めた船の舵を握って、必死にこいで進む」みたいな感覚で想像以上にハードでした。
――ほぼ初めての編集担当書に近かったと思いますが、「本の方向性」というのは明確に伝えられたんですか?
森:すごく苦戦しました。
例えば、デザイナーさんに「タイトルのフォントを丸ゴシックにしてください」みたいに直接指定すると「デザイナーさんの仕事に口出しすることになっちゃうから、失礼だよ」っていうのを怜子さんから注意していただきました。
それからは「就活の本だから、安心感を与えるようなカバーにしたいです」とか「タイトルを目立たせてそれでいて優しい雰囲気を醸しつつ」みたいに、デザインの余白をとりながら目的をお伝えできるように意識しました。
――なるほど。著者さんに対しての伝え方はどうでしたか?
森:著者さんに対しては、逆に「言語化する」ことをすごく意識しました。例えば、「この表現だと伝わらない読者さんがいるかもしれないので、こういう言い方はどうですか?」というように、具体例を添えながら伝えていました。
先ほども少し触れたのですが、著者さんが20万字くらい書いてくださった原稿を「大幅にリライトしていただけないか」というお願いもしました。
――それは大変なお願いですね…! どうやって伝えたんですか?
森:元の原稿のときから、書いてある内容が今までの就活本にない内容だったんです。すごい正直で、かつ面白かったんですよ。
例えば「面接官って実は見た目を結構重視するので、ルックスも採用に関わってくる」とか「面接に受かるかどうかは面接官との相性もありますよ」みたいに、表向きは誰も就活生に言ってくれないけど、実は知っておいたほうがいいことを赤裸々に語ってくれたりとか。
なので、できるだけ多くの就活生が読める本にしたいと思い、「この内容を読者へ最大限伝えるために、文章量を13万字に減らした上で登場人物を入れて就活生が自分ごととして没入できるようにしたら、もっと面白くなるんじゃないかと思います」と著者さんにリライトをお願いしました。
大変なお願いなので、すごく緊張したんですが、著者の藤井智也さんがものすごくいい著者さんで、快諾していただけました。もともと著者さんとしても最初に出した原稿は「6割くらいの完成度」と捉えていて、そこからブラッシュアップしていこうと考えていたそうで。
著者さんがリライトに粘り強く付き合ってくださったので、本当にありがたかったです。私もゴールデンウィーク中に実家近くの奈良公園で鹿に見守られながらリライト原稿のチェックをしました。
「森さん、意思が強いから…」と上司が折れた
――他にも『脇役さんの就活攻略書』の編集で印象に残っているエピソードはありますか?
森:えーと、そうだ、怜子さんと1回バトルをして。
――バトルですか(笑)。
森:この本は章ごとに色が分かれているんですけど、私が最初「章ごとに色を分けたい」と相談した時に、怜子さんから「いや、2色でいいと思う」と言われたんです。「色を章ごとに分けるとページ数によってはお金もかかるし、色を使い分けるメリットが特にないなら2色でいい」と。
でも、私はどうしても飲み込めなかったんです。就活本って長期的に、ひょっとしたら1年間丸々使うかもしれないじゃないですか。その時に、章ごとに色を分けていた方が「この章の内容は時期が違うんだ」と読者が目で確認できるし、「自分が違うステージに来たんだな」と体感もできるから、絶対に色を変えた方がいい、と考えていたんです。
それで、「色を多く使いたいです!」「いや、2色でそのまま進めたほうがいいと思う」というやりとりを3日間ほど続けて、「コストが抑えやすいページ数に調整するので、やっぱり色を使い分けたいです」って私が言って。
そしたら「森さん、意思が強いから……」って怜子さんが折れてくださったんです。すごいわがままを聞いていただいたのでインパクトが大きくて印象に残っています。
――2人のやりとりが目に浮かぶようです(笑)。
森:その後、章ごとに色を変えながらも節約できる方法について、怜子さんがアドバイスをくれました。「この章とこの章を64ページの倍数にして、同じ色を使って印刷したら節約できるよ」って。2色刷りを組み合わせてコストを抑えながら、一冊の本としては6色の色を織り交ぜるテクニックを教えていただきました。
著者と実感「この本を作って本当によかった」
――苦労の末に完成した本ですが、企画立案から完成までを初めて一人でやり切った書籍が出てみての感想はいかがですか?
森:本が完成した時に怜子さんがXで「めちゃくちゃいい本です」「これから就活する人、親御さんに自信を持っておすすめします!」って、褒めてくださって。それがすごく嬉しかったですね。
著者さんからは、お住まいの地域の書店で撮影した写真が送られてきました。就活棚のところに面陳(本の表紙を見せて陳列する並べ方)で置かれていて、それを見た時も嬉しかったです。心の中で「売れろー!」と思いながら見てました(笑)。
毎日POSデータで売り上げを見ながら、「自分が企画を考えた本を、いいと思って買ってくださる人がいるんだ」って感動しています。著者さんと2人で言ってたんですけど「本当に作ってよかった」って思います。
今でも、自分が作った本が書店に並んでるっていうのは半分信じられないんですけど。でも、この本で少しでも就活がうまくいく人がいたらいいなって思っています。
――本当ですね。では、後編では『脇役さんの就活攻略書』が誕生したきっかけや、本づくりに込められた想いについて聞かせてください。



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