レティシア書房店長日誌
高橋久美子「わたしの農継ぎ」
ミシマ社のフェアもあと二日。ミシマ社を知っている人も知らなかった人も、たくさんの本を手にとってもらえる展示になって嬉しいです。ありがとうございました。今回もう一冊、ミシマ社の本のご紹介です。
著者の高橋久美子は、エッセイ・小説等の執筆以外に様々なミュージシャンに歌詞の提供をしています。現在は愛媛と東京の2拠点暮らしですが、愛媛は彼女の実家で農家です。東京では作家として、愛媛では実家近くの土地で無農薬農業を行ない、忙しい日々を送っています。本書は、2022年1月から2024年2月まで農民として、奮闘する彼女の姿を追いかけたものです。
まず、言いたい。めちゃくちゃ面白い!新規に無農薬農家になった人の話って、気負いもあり理想論など読んでいてしんどいことが多いのですが、これは違います。本人は真剣にやっているにも関わらず、何度笑ったことか!そしてそんなユーモアの渦の中から、これからの農の姿や食の問題、地球温暖化のことなどが語られていきます。(ミシマ社・新刊1980円)
「私は農地で作物作りたいだけじゃないなあ。場所が作りたいなと思うんよねえ」彼女は、常時、農作業ができるわけではないので、いない時に助けてくれる仲間が必要です。全く農業を知らない人、手伝ってあげるよという人などが集まってきます。彼らと緩やかな共同体を形成してゆくのですが、もちろん全て上手くいくわけはありません。離れてゆく者、畑に来なくなる者などが出てきます。でも、それも良しとしているのですね。それぞれのやり方、それぞれの生き方を模索してくださいみたいな感じです。
「農地を残したいという思いで仲間たちと畑をはじめた。猿は憎たらしい。でも追っ払いながら、これからも猿の嫌いなものを育てたり、網を張ったりと制限ありで生きるぐらいでいいのかもしれない。そう言えるのは生活がかかっていないからで、甘いと言われても仕方ない。だけど、それが今の私の答えだった。」
猿やイノシシ、モグラの出没で畑が何度も荒らされていった時の彼女の感想です。農作物の収穫に生活がかかっている専業農家なら、言えないセリフですが、そのことを弁えた上での畑への処し方です。それにしても猿やら、イノシシの襲撃は凄まじい!
「私は猿が歩いていたらワーッと叫び、追いかけて石を投げつける。知らんふりをすると猿の行動はどんどんエスカレートしてしまうからだ。それから朝に夕に畑に行く。これも人間の匂いを残すためだ。枝打ちで人が山に入ることが、獣たちに里と山の境界線を知らせる役割を果たしていたと言っていた祖父のように、ここは私の縄張りだと猿に分からせないといけない。猿に天下をとらせない抵抗を。すでに下りてきてしまった猿たちを山へ帰すのは容易なことではないが、できることはやっていかねば。このところ、『もののけ姫』の『サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。ともに生きよう』というアシタカの言葉が何度も脳内再生される。」
生活の基盤は別に持ち、自給自足+αを目指す農家が出てくることへの期待、そして、それはしんどいことだけどやれなくはないよ、という思いがぎっしりと詰まった本でした。
※ミシマ社主催「ちゃぶ台編集室inレティシア書房」は8日(日)までです
●年始年末休業のお知らせ:12月29日(日)〜1月7日(火)
レティシア書房ギャラリー案内
11/27(水)〜12/8(日)「ちゃぶ台 in レティシア書房」ミシマ社
12/11(水)〜12/22(日)「草木の色と水の彩」作品展
⭐️入荷ご案内
GAZETTE4「ひとり」(誠光社/特典付き)1980円
スズキナオ「家から5分の旅館に泊まる」(サイン入り)2090円
「京都町中中華倶楽部 壬生ダンジョン編」(825円)
「オフショア4号」(1980円)
青木真兵&柿内正午「二人のデカメロン」(1000円)
創刊号「なわなわ/自分の船をこぐ」(1320円)
オルタナ旧市街「Lost and Found」(900円)
小峰ひずみ「悪口論」(2640円)
SAUNTER MAGAZINE Vol.7 「山と森とトレイルと」
いさわゆうこ「デカフェにする?」(1980円)
「新百姓2」(3150円)
青木真兵・光嶋祐介。白石英樹「僕らの『アメリカ論』」(2200円)
「つるとはなミニ?」(2178円)
「ちゃぶ台13号」(1980円)
坂口恭平「自己否定をやめるための100日間ドリル」(1760円)
「トウキョウ下町SF」(1760円)
モノ・ホーミー「線画集2『植物の部屋』(770円)
モノ・ホーミー「2464Oracle Card」(3300円)
古賀及子「気づいたこと、気づかないままのこと」(1760円)
いしいしんじ「皿をまわす」(1650円)
黒野大基「E is for Elephant」(1650円)
ミシマショウジ「茸の耳、鯨の耳」(1980円)
comic_keema「教養としてのビュッフェ」(1100円)
太田靖久「『犬の看板』から学ぶいぬのしぐさ25選」(660円)
落合加依子・佐藤友理編「ワンルームワンダーランド」(2200円)
秦直也「いっぽうそのころ」(1870円)
折小野和弘「十七回目の世界」(1870円)
藤原辰史&後藤正文「青い星、此処で僕らは何をしようか」
(サイン入り1980円)
YUMA MUKUMOTO「26歳計画」(再々入荷2200円)


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