相談
■ついったーで拝見した素敵企画「バーチャル槍弓プチ」にそっと参加させていただきます。 ■セフレだと思っている弓の話。 ■ちょっと気が沈んでいるので、いつもはしないことをやろうという試みです。少しでも楽しんでくださる方がいれば幸いです。
(10/19追記)■削除するつもりだったのですが、なんだか想定外に多くの方が見てくださっているみたいなので消さずに残しておきます。いいねやブクマやコメント本当にありがとうございます。 ■消さないとなった途端タイトルが恥ずかしい…。消すつもりだからいいやって秒で付けたタイトルなんですセンスゼロなんです許して…
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すまないが少し相談に乗ってくれないだろうか。
そうか、聞いてくれるか。いや君は本当にいい奴だな。
さて、そうは言ってみたもののどこから話したものか。いざ話すとなるとどうにもまとまらないな。ん?いや確かに酒は飲んでいるがまだ酔う程ではないさ。
ええと、そう、ランサーの様子がおかしいんだ。
一月程前から何やら思い悩んでいるというか、真剣な顔をしてスマートフォンをいじる時間が増えて、それだけならまだしも時々頭を抱えて唸っていたり、かと思えばふわふわと浮かれた様子で画面を見つめていたりする。どうしたのかと訊こうかとも思ったんだが、私の前ではそんな様子を見せないから、きっと私には隠したいことなのだろう。そうなると訊くわけにもいかず、ランサー自身には何も訊けていない。
因みに何故私がそのことに気付いているかというと、料理中に横目で見たからだ。盗み見のような形になってしまって申し訳ない気もするが、台所から見える位置にいる癖に見られる可能性を考えていない奴の方が悪いだろう。確かに作業中は背を向けることになる配置だが、少しばかり振り返れば見える位置にいるんだ。私が様子をそっと伺っている可能性を考慮していない奴の方が八割方悪いに違いない。む、なんだか言い訳がましいな。まあ良い、忘れてくれ。
とりあえず私が言いたいのは、ここ一か月程ランサーが何やら思い悩んでいるように見えるということだ。
ああいやそれだけで様子がおかしいとまでは言わないさ。奴とて人間だ悩むこともあるだろう。毎日顔を突き合わせる相手がそんな状態だとさすがにちょっと気になってしまうが、君に相談まではしないさ。
じゃあなんだというとだな、奴が悩み始めてから毎週末、何故か随分と雰囲気のあるというか、ロマンチックな場所に連れていかれるようになったんだ。
何言ってんだこいつ、という顔をするのは止めてくれないか。私だって何言ってんだろうと思っている。だがな、場所を聞けばロマンチックな場所としか表現しようがないと納得してもらえると思う。
初めは高級フレンチレストランで、その次が美しい夜景を眺めることができる丘。先週はなんとクルーズ船でディナーだ。
驚いたかね?そうだろう私も驚いた。
一緒に出掛けること自体はいつものことだから構わないんだが、よりにもよってクルーズ船だぞ?友人同士、しかも男同士で行く場所じゃないだろう。因みに当然だがフレンチもクルーズもジャケット着用で行った。当たり前だドレスコードを考えろ。男の友人同士が何の記念日でもないのにスマートカジュアルでディナーだ。意味が解らん。どう考えたって恋人同士が特別な時に行くデートスポットじゃないか。
しかもだな、て、え?何?私と奴の関係だと?恋人?何を言っているんだ君は。ああ、確かに何故か一緒に暮らしているが、別に恋人でなくても一緒に住んでいることはあるだろう?は?同棲?本当に何を言っているんだ君。
友人だよ。友人。それ以外に何があるんだ。
あ、いや只の友人ではないな。いや親友というのともちょっと違っていて、ええと、まあ、君は口が堅いし良いか。
私とランサーはな、セックスもする友人だ。
だから、セックスもする友人だ。セックスフレンドと言えば良いのか?
うわ、君のそんな顔初めて見たぞ。目玉が落ちそうだが大丈夫かね?大丈夫なわけがない?まあそうだろうな。私が君でもきっと同じ反応をしただろう。
なんでそうなったって?実のところ私も知りたい。きっかけを覚えていないんだ。
ランサーと二人で酒を飲んでいたことは覚えているんだが、その後の記憶が曖昧でな、気が付いたらベッドの上で朝を迎えていたんだ。混乱したさ。もう大混乱だ。目を開けたらすぐ目の前にランサーの顔があったんだぞ。至近距離で花が舞っているんじゃないかってくらい嬉しそうな顔で「おはよう」なんて微笑まれてみろ。しかもお互い全裸の状態で。状況もあって頭の中は真っ白だ。
何?生々しいことは聞きたくない?訊いてきたのはそっちだろう。
いや今までの人生であんなにも頭が真っ白になったことはないよ。本当に何も考えられなくなるものなんだなと後から思い出していっそ感心してしまった。そんな状態だったものだから、何故こんなことになったのかを訊くということすら浮かばなくてね、気付いたら物凄く上機嫌なランサーに甲斐甲斐しく世話を焼かれていた。…仕方ないだろう、身体中痛くてベッドから起き上がることすらできなかったんだ。
それで、まあ、身体はあちこち痛いしなんでこんなことになったのかもわからないが、ランサーが初めて見るくらいに上機嫌だし私は女性ではなくて男だし、うん、まあ、もう一夜の過ちってことにして流してしまおうか、と。
だって一度きりだと思うだろう普通。いくら欲求不満だったとしても男同士だぞ?二度目があるなんて思わないだろう?
そうだ、あったんだ二度目が。それどころか三度目も四度目もあった。それ以上にあった。正直もう数えていない。
意味が解らないと言われたって私だって解らん。普段はそうなる前までと変わらないんだ。いや、なんだか心なしか距離が近くなったし、私の家に押しかけてきて自分の家に帰らなくなったが、それ以外はセックスをする関係になる前と変わらないんだ。なんだそれ、て、だからセックスもする友人だと言っているだろう。
変な顔になっているぞ。大丈夫か?ダメに決まっている?良かった大丈夫だな。恐らくそれが正常な反応だ。
さて、話が脱線してしまったが元の話に戻るぞ。どこまで話したんだったか…。ああそうだ、恋人同士が行くような場所に何故か毎週末行っているというところまで話したな。
それでだな、何が凄いって行く先々でプロポーズに出くわすんだ。つまり、ランサーに連れていかれた場所はロマンチックなだけでなくて、プロポーズの場所にも選ばれるようなとんでもない場所ばかりなんだよ。
何度でも言うが、そんなところに男二人だぞ?いやそれでも恋人同士だというのなら構わないだろう。男同士だろうと別に偏見はないさ。愛し合っているのなら良いじゃないか。だがな、私とランサーはそんなものではない。友人、いや私は友人と言いたいんだが、そうだな、セックスもする友人なのだからセフレと言うのが正しいのだろう。とりあえず、セフレと一緒に行くような場所じゃあない。突然そんなところに誘ってくるようになったんだぞ?一体どうしたんだと訝しく思うのも当然だろう?ああそうだ、だからランサーの様子がおかしいと言っているんだ。
いやしかし凄かったぞ。プロポーズなんて今まで出くわしたことがなかったんだが、見ているこちらまでドキドキしてしまうものなんだな。
フレンチレストランではフロアの中央辺りに座っていたカップルの男性が突然立ち上がったかと思うと、向かいの彼女の横に跪いて指輪のケースを取り出し、「僕と結婚してください」と緊張のあまりだろう変に裏返った声でプロポーズをするという場面に出くわしたよ。立ち上がる時に机にぶつけたんだろうな、大きな音がしたものだからフロア中の皆が思わず注視してしまっていたところでのプロポーズだった。もう周りにいる我々は只の観客でしかなかったよ。固唾をのんで見守っていたら顔を真っ赤にした彼女が小さく、けれどしっかりと頷いて「嬉しい」と微笑んでね、思わず皆して拍手で祝福してしまった。生まれて初めて見るプロポーズだったものだから、ついつい興奮してしまって、今思うとランサーに恥ずかしいところを見せた気がするな。
ただ、そんなことが起きるロマンチックな場所だろう?当然だがフロアには他にも数組のカップルがいてね、もしかしたら同じように今日プロポーズをする予定だったカップルがいたんじゃないかと、少しばかりお節介なことを思ってしまったよ。プロポーズというものは特別なものだろう?他所のプロポーズを見た後に自分もプロポーズをするというのは、流石にちょっと厳しいものがあると思うんだ。こう、情緒がないというか、言ってはなんだが特別感が薄れそうじゃないか。思わずランサーにもそう零してしまったんだがな、ランサーも「全くだよ」と深く頷いていたよ。頷き方が深すぎてまるで項垂れているように見える程だった。
え?その時私達が座っていた席?窓際の夜景の綺麗な席だったが…。思えばあのカップルに座って欲しい席だったな。あの席であれば尚の事特別感が増したに違いない。彼はレストラン側にプロポーズのことを相談していなかったのかな。プロポーズをするつもりだと言えばレストラン側も融通を利かせてくれただろうに、勿体ないことをしたものだ。
それから、夜景の綺麗な丘ではフラッシュモブによるプロポーズを見たよ。いやあれも凄かった。静かな場所に不意に音楽が流れてきて、近くに立っていた人達が突然一か所に集まっていったかと思えばそのまま踊りだしたんだ。一体何事かと見ていたら、踊りの正面に立っていた男性が驚く彼女をそこに残したまま踊りの中に入っていってね、自身も踊りつつ華麗にターンを決めたかと思ったらバックダンサーから薔薇の花束を受け取ったんだ。ここまで来るともしかしてこれは、と周りも薄々気付き始めていたな。それで、花束を持った男性が彼女に近付いて行ってね、これまた王子様のように跪いて「俺と結婚してほしい。どうか頷いてくれないか」と囁いたんだよ。こうやって何でもない時に言うと随分と気障ったらしい台詞だな。だがその時は雰囲気もあってまるで物語の一場面のように見えた。彼女もそう思ったんじゃないかな。涙を流しながら「嬉しい」と男性に抱き着いていたよ。後はもうレストランの時と同じだな。周りの関係のない人も含めて皆して拍手で祝福だ。
ん?その時のランサーの様子?同じように祝福の拍手をしていたが…ああそういえば、こういうプロポーズもロマンチックで良いなと言ったら「お前ならそう言うと思ったんだよ」とまるでプロポーズがあると知っていたかのようなことを言っていたな。もしかして知っていたのかと訊いたらそんなわけがないだろうと否定されたがね。
最後にクルーズ船だが、これも凄かった。食事をした後にランサーに誘われてデッキに出たんだが、出た途端大声で言い合う男女に出くわしたんだ。びっくりしていたら言い合っている内容が「何でそんなことを言うんだ」「貴方が言わないからでしょ馬鹿」とかそんな内容でね、すわ別れ話かと思わず身構えてしまった。思えばあんなところに別れ話をするようなカップルが来るわけがないんだがね、その時はそんなことに思い至らなかった。だがその後に続いた言葉が「今日!俺が!君に言う予定だったんだ!」なんて言葉でね、しかもそれを言う表情が随分と赤くて、おやこれはと別の意味で固唾をのんだところで男性が女性の両手を包んだんだよ。そうしてね、「先を越されちゃったけど!それからさっきの君の言葉も勿論大歓迎だけども!ちゃんと俺にも言わせてくれ!」と、こうだ。そうだ、もう察しが付いているだろう?「君とずっと一緒にいたいんだ。どうか俺と結婚してください」とそのままキスしてプロポーズだ。いやまさか三週続けてこんな場面に出くわすとは思わなかったから本当に驚いたんだが、おめでたいことだからな、心の底から祝福の意を込めて拍手したよ。ああうん素晴らしかった。
ランサー?感動したのか顔を伏せながら両手だけ上げて拍手をしていたよ。言い合いからのプロポーズだなんて映画か何かみたいで私もちょっと感動してしまったな。場所が場所だから服装もフォーマルだったし、本当に絵になる二人だったよ。
おっとすまないまた話が脱線してしまったな。
さて、前置きが長くなってしまったが、ここからが相談事なんだ。
色々考えてみたんだがね、ランサーは誰かにプロポーズをしようとしているんじゃないだろうか。
つまりな、ここのところ悩んでいるのはプロポーズの方法で、私をロマンチックな場所に連れ出しているのはプロポーズの場所の下見なんだよ。いや、プロポーズの下見なんて一人で行けと思うんだがね、どこも一人で行くのはちょっと躊躇してしまいそうな場所だからな、仕方なく私を巻き込んだんじゃないかと思う。
それにこの前「いっそ神頼みすべきなのか?何の神様だよ。恋愛成就か?もう成就はしてんだよチクショウ」とぶつぶつ言っているのを聞いてしまったんだ。もう確定じゃないだろうか。
…それにしても、あのぼやきも私に気付かれていないと思っていそうなんだが、奴は勘が鈍ったんじゃないだろうか。恋は人を馬鹿にすると聞くが少し心配になってしまうな。いやそれだけ本気の相手がいるんだと喜んでやるべきなのか?まあいい。
それでだな、相談なのだが、そんな本気の相手がいるのにセフレがいるというのはどう考えてもおかしいだろう?お相手にも失礼極まりないじゃないか。…ランサーはあれでいて誠実な男だと思っていたんだがな。何をしているんだか。
ああ、だからこの関係を解消したいんだが、どうすれば穏便に解消できると思う?ひとまず奴を私の家から放り出せば良いだろうか。それともはっきりと面と向かってもうこんなことは止めようと伝えるべきか?
そんなこと自分で考えろと言われてしまうと何も言えないんだがね、あれこれ考えていると友人関係すら無くしてしまいそうで…。ああうん、できれば関係を完全に無くすのではなくて、セックスをする関係だけを解消したいんだ。つまりだな、セックスをしない只の友人に戻りたいんだよ。やはり虫が良い話だろうか。
は?ランサーの事をどう思っているのか、だと?どう、も何も、大切な友人だと思っているが。
いや何を言っているんだ君は。恋愛感情?私が?ランサーに?そんなわけないだろう。
…確かに、何故かセックスをする関係になっていたが、別にそのことを歓迎していたわけではないぞ。ならなんで二度目以降抵抗しなかったのかと言われると少し困ってしまうんだが、なんというか、その、奴があまりにも嬉しそうにしているものだから、別に良いか、と…。一度あったことならもう何度しても同じじゃないかという気もしたし、こういう事を明け透けに言うのはどうかと思うんだが、まあ、うん気持ち良かったし。
生々しいことは聞きたくない?だから、訊いてきたのは君だろう。
はあ?それが君だったら?止めてくれ冗談じゃない。キス?それだって嫌に決まっているだろう。ランサーだったら?いやキスくらいもう何度もしているが…え?
待て、ちょっと待て。いや確かにランサー以外の男が相手だったら、と考えたらもの凄い拒否感が湧いてくるが、いやしかしだな、そんなわけないだろう。なんで否定できるんだと言われても、自分の感情くらい流石にわかるに決まって、は?いや勿論そうなったら祝うさ。だって結婚だなんて喜ばしいことじゃないか。それで私に一切絡まなくなったら?いやだからそれが嫌だからセックスをしない只の友人に戻りたいんだと、そう言って…え?
ちょっと、待ってくれ。
…もしかして、私はあいつのことがそういう意味で好きなのか?
今頃かよじゃない。嘘だろう?何でそんな。え?
……。
ロビンフッド。先程の相談は取り消そう。すまないがランサーと完全に縁を切る方法を一緒に考えてくれないか。
なんでそうなっただと?むしろ何故そうならないと思うんだ。ランサーには心から想う相手がいるんだぞ?邪魔だろう、私は。友人のままでいたいと思っていたが駄目だ。大体だな、セックスをする関係を解消することで友人関係まで無くなってしまったらどうしようと悩んでいたのは確かだがな、気持ちの良い男だから余程のことがなければ友人のままではいられると思うんだ。それにも関わらず君に相談してしまったのも、無意識下で彼のことを想っていたからに違いない。無自覚の状態でそれだぞ?自覚してしまった今、彼にどんな迷惑を掛けるかわかったものではないだろう。
ランサーの気持ちを考えろ?それこそ何を言っているんだ。考えているからこそ、完全に縁を切ろうとしているんじゃないか。
やはり問答無用で家から追い出して、もう貴様とは関わりたくないと告げれば良いのか?それから着信拒否に、あ、引っ越しもした方が良いだろうか。いや、そこまでしなくても愛想を尽かされるだろうから問題ないか?どう思う?
頼むから後二分程待ってくれ?何を言っているんだ君。考えを纏めるのに二分も必要とするような頭はしていないだろう。良いから君からも案をくれないか。
落ち着け?この上なく落ち着いているじゃないか。
ああもういい、自分で考えるさ。大丈夫だとも。元々ランサーとは相性が悪くて喧嘩ばかりしていたんだ。思う存分煽って喧嘩を吹っかけてやれば奴もさっさと私に見切りを付けるだろう。思えばよくもそんな状態から友人になって、それどころかセフレにまでなったものだな。なんだか感慨深い気がしてきたぞ。
ロビンフッド?どうした君。またも凄い顔をしているぞ。唐変木?私が?何故急に罵倒されなければならないんだ。
は?何だ?今入口の方から凄い音が…ランサー!?どうしたんだ一体、って、え、ちょ、ちょっと待てなんだいきなり、おい、急に引っ張るな、待て!!
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引き摺られるように連れて行かれた男を見送り重い息を吐いた。小一時間相談という名の何かに付き合った結果がこんなものだとは思わなかったし思いたくもなかった。
どうしてこんなに拗れてやがるんですかねホント。
グラスに残る酒を飲み干せばそれに気付いたマスターと目が合った。そのまま同じのを、と頼めば柔らかい笑みと共に頷かれる。飲まなければやっていられないこんなの。
凄い剣幕でやってきた男が叩きつけるように残していった三万円を手に取ってもう一度重い息を吐く。
アーチャー―相談があるんだとロビンフッドを呼び出した男の酒代も含まれているのだろうそれには、多分に迷惑料と感謝料が含まれているんだろう。そう、感謝料だ。何せ飛び込んできた男―ランサーに連絡をしたのはロビンフッドなのだ。
ホントなんでこんなことになったんだか。
アーチャーもランサーも大学の時からの友人である。それなりに親しくしてきた自覚はあるが、それでもまさかこんな話を聞かされる羽目になるとは思わなかった。
というか、だ。
眉間に寄った皺を解しながら目を瞑る。
結婚まで秒読みだったんじゃないのかよランサーさんよぉ。
思わず恨み言に近いものが零れる。何せつい最近ロビンフッドはランサーからも相談を受けていたのだ。アーチャーにプロポーズしたいがどうするのが一番印象的だろうか、と。どうせなら最高のプロポーズにしたいというランサーを幸せ者めとからかいながら、あれやこれやと案出しを手伝った記憶は新しい。
そうだというのに、蓋を開けてみたらアーチャーは欠片もランサーの事を恋人だと思っていなかったというのだ。それどころか好きだとすら気付いていなかっただなんて、一体どういうことだよと怒鳴ってやりたかった。
アーチャーの目の前で頭を抱えなかった己を褒めてやりたい程である。
「お待たせいたしました」
す、と差し出された新しいグラスを受け取り一思いに煽った。喉を焼くアルコールが心地良い。
「おや、無理な飲み方はお勧めしませんよ?」
「いいんですよ今日は。オレ頑張りましたんで」
正直足りないくらいだと追加で注文すれば、程々にしておいた方が良いですよと苦言を零される。そう言いながら手は慣れたように酒瓶を傾けているのだから、バーのマスターなんてものをやっているとこんなことは日常茶飯事なのだろう。
「内容は聞こえませんでしたがね、何やら揉めていたようで」
「ああ、そういえば友人がドアを乱暴に扱っちゃってスミマセンね。おまけに騒がしちゃいましたし」
「いえ、構いませんよ。きっとどうしようもない事情がおありなんでしょう」
「どうしようもない事情…。まあ、そうなんでしょうねぇ」
「僭越ながら、問題のない範囲でお話伺いましょうか?」
話した方が気が済むこともあるでしょう、と落ち着いた調子で笑うマスターにゆるりと息を吐いた。こうやって客の気持ちを落ち着かせるというのもマスターとしての技術の一つなのだろう。
「そうですね、まあ込み入った話なんで詳しくは言えないんですが」
「はい」
「昔からの友人が今度結婚することになるんですよ」
きょとりと目を瞬かせた後、それはおめでたいですねとマスターが笑う。ええまったく、とそれに頷きながらロビンフッドは新しく差し出された琥珀色を受け取った。
こんな騒ぎを起こしておきながらうまくいかないなんてことはないだろう。
もしそんなことになったらタマなしと笑ってやろうと、もう一度酒を一思いに飲み干した。
さて、お祝儀はどうしてやろうか。