トウキョウ・ドッグ・シティ
現パロのようなもので奴隷となったクーフーリンズ(ランサー、キャスター、オルタ、プロト)とそのご主人様のエミヤのお話、心の広い人向け/カップリングはクーエミの総受けながら多分プロト×エミヤが強くなるかもと予告しておきますw/ブクマや評価、コメント(スタンプ)本当に本当にありがとうございます!!お蔭さまでルーキーランク7位or13位&女子に人気ランキング91位入賞致しました!!心より御礼申し上げます!!///続き(novel/7939417)
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人が人を奴隷にすることが許された世界、そんな腐った世界で俺と兄弟は若くして奴隷商に捕まり競りにかけられた。
捕まる前までどこに暮らして、何をしていたのかは記憶にない。みすみす奴隷商人に捕まっちまうヘマをした恥で、それまでの記憶は焼け落ちちまったのかもしれねぇ。
ガラガラと耳障りな音を立てて運ばれる鉄格子の檻、その中に放り込まれた上の兄2人と俺とどっちが末子か争い続けている一応兄が1人、あんだけおちょくられて喧嘩して2度と口聞くかと数え切れないほど誓った奴らでも、もう会えなくと思えばどうしても淋しさが過ぎる。
一瞬震えたような錯覚が起こる俺の手を無言で上の兄が握り、むき出しの下の兄の肩が小突く。
…ったく、こういう所が気に食わねぇんだよ。
ざわざわとうるせぇ俺達がセリにかけられる舞台の一歩手前、俺らが人であれる最後の瞬間に笑えた俺はなかなか幸せ者なんじゃないだろうか。
目が焼かれるほどの眩いスポットライトの下、奴隷をお披露目する円形のホールを中心にすり鉢状にせり上がった客席には、この世のド変態共がみっしり詰まってやがる。
かけられた布が取り払われた瞬間爆発的に上がった歓声はひどく耳障りで体の震えが止まらないほどの怒りがこみ上げるが、今の俺に出来ることはせめて射殺すような目で睨みつけることだけだった。
俺らが抵抗をやめねぇもんだから店のヤツらがつけた拘束具が体に食い込む、少しでも余裕があれば噛みつくからって絞められた手枷と口枷は少しずつ肉を削り、滲んだ血に眉をしかめた。
そうそうお目にかかれない美丈夫に、毛色の違いながらも容姿を同じくするレア物にオークション会場のボルテージはうなぎ登りで上がっていく。
これは4人合わせてどれほど値がつり上がるのか、セリの白熱を少し想像しただけでも興奮が止まらない開催者が今夜終わりが見えることのない合戦の火蓋を切ろうとしたその時、すっと上がった褐色の腕によってそのオークションは呆気なく終わりを告げた。
「言い値で買おう。数千万でも、億でも。いくらでも払ってやる」
「今日からここが君たちの家だ。部屋を歩き回ることは構わないが、私の自室には決して入らないこと。そして冷蔵庫くらいは開けてもいいが、それ以外の棚は無闇に開けるな。書類を引っ掻き回されてはたまらない、まぁ君たちにとっては理解しなくてもいいどころか理解する必要のないものだから、要するに無駄な事はするなということだ。衣食住の面倒は最低限見てやる。だが入浴などは勝手にやってくれ、トリマーを雇うのは面倒なのでね」
磨きあげられたフローリングに座り、険しく睨む視線を涼しい顔で受け流した男は褐色の長い指でカチャリと手にした鍵を回す。
スラックスに包まれた脚はスラリと長く、同時に鍛え抜かれた筋肉が覆うことで美しさを生業にするものでも敵わないような、つい瞳を奪われる魅力をはらんでいる。
時折皮肉を混ぜて絶えずクーフーリン達の神経を逆なでするこの男こそ、世紀のオークションを一瞬で終わらせて小国の国家予算に匹敵するような金額で4人をまとめて買い取った主人だった。
深夜のオークションから日をまたいで、軽い傷の手当を受けた4人が運び込まれたのは高層マンションの一室、男4人が増えても全く不自由を感じさせない広さはやはり奴隷をまとめて買えるだけの財力が見えて吐き気がする。
歯噛みをすると首が絞めつけられる首輪をイライラと爪で引っ掻くと、それを見咎めたのか眉をあげて冷たい鋼色の瞳が光った。
「わかっていると思うが首輪を外すことは許さない。言うことを聞けば無闇な仕置きもしないし生きるのに不自由はさせないさ。奴隷用マニュアルと私からの注意事項をまとめた冊子はこれだ。すべてに目を通して理解しておけ、これからタブーを犯したところで知りませんでしたは聞かんぞ」
そう言って4人の足元に2冊の分厚い冊子を放った男は、それを見るだけで一向に手を出そうとはしないクーフーリンたちを見てわざとらしいため息をついた。
「話を聞いていなかったのか?それとも理解する頭が欠如しているのか?今すぐにこれへ目を通し、これからの生活に必要な知識を身につけろと言ったんだ。まさかその図体でトイレのしつけが必要だとは言うなよ」
その言動、首に付けられた所有物の証、真新しい家のニオイに、自分らは人に飼われるしかない人以下の奴隷なんだと思い知らされるようで、屈辱がクーフーリンたちの体を激しく焼く。
覚悟はしていても体の感覚がなくなるほどの激しい怒りは留まるところを知らず、プライドを折ることは到底出来ずに指示を無視する奴隷達を済ました顔で見下ろす主人の男は、4人の中で最も理性と程遠いクーフーリン・オルタに胸ぐらを掴まれた。
「調子に乗るんじゃねぇ、誰がてめぇのベットなんかに…っ!!」
「オルタ!!」
瞬間言葉を切って首を押さえたオルタが崩れ落ちる。思わず駆け寄ったプロトの頭上で、つけられた首輪へ強力な電気を流した男は、小さなリモコンを手でもてあそびながら吐き捨てるようにうずくまった背中を見つめた。
「なるか、ならないか…ではない。君たちは既に私の所有物なのだよ。この世で奴隷に落ちたものは奴隷として生きるしかない、それくらい常識の範囲だと思っていたから教えるのを忘れていた。君たちの理解能力の低さは誤算だったよ、すまないな」
どこまでも馬鹿にしてくれる男へとうとうプロトも立ち上がり、鼻先がふれんばかりの距離から睨みつける。
瞳孔が細くなった血のような赤い瞳に睨みつけられても動じない男は、唇を歪めると手にしたリモコンを掲げた。
「これから気絶するまで折檻されて、自分では何も出来ない赤ん坊のように世話をされるか。たとえ望まぬことでもせめて自らの意思で動くか。どちらがよりみっともないかよく考えるんだな」
「…わかった。確かに俺らは認識不足だったようだ。無礼を詫びよう、ご主人様」
男とプロトとの睨み合いに割って入った一番上の兄、キャスターは今にも飛びかかりそうなプロトを肘で押して離れさせると仰々しく頭を下げた。
その口ぶり、芝居がかった仕草からキャスターも決して奴隷であることを認めたわけではないと察するに十分だったが、まだ話を聞くだけの余地はある相手に男はふっと笑う。
「…少しは賢い奴もいたか、では私はこれから出かける。その間に勉強は済ませておけ、言っておくがその首輪は包丁位の刃物では切れないからな」
横切って行く男の身体を刺すようなキャスターの殺気が撫で上げ、肌はチクチクと粟立つ。
しかし男はその反抗的な態度に口は出さず、ハンガーにかけたジャケットを手に取ると足元の冊子をテーブルへ再度放ると、やろうとしている事はお見通しだと言わんばかりの捨て台詞を吐いて家を出て行った。
ガチャリと扉が閉まった音を聞いた瞬間床を思い切り殴りつけたプロトは、自身の兄へ苛立ちをぶつけるように吼えた。
「余計なことしやがって!いいのかよ、兄貴!」
「少しはてめぇの頭で考えやがれ。首輪付きの以上買い手に噛み付いたらどうなるか、だからといって首輪つけられた奴隷が外をほっつき歩いたらどうなるか。わかんねぇほど馬鹿じゃねぇだろう」
カウンターに冷たく研ぎ澄まされた兄の視線に打たれ、それ以上の八つ当たりは到底できないプロトが黙ったのを見て、宥めるようにキャスターの手が頭を撫でる。
悔しくてたまらないがこれが現実、あの男が言った通りもう自分たちには奴隷としての生き方を受け入れる他無いのだから。
奴隷は飼い主に絶対服従、逃げ出した奴隷をどう扱おうと法に触れることはない、それは常識だ。
絶対服従は最初からつけられている首輪からの電流がそれを裏付けする。本来ならばもっとその鎖を強化するのに、あの男はこちらを甘く見ているのか最低限の機能以外何も着けていない。しかしそれでもまともにくらえば1時間は悶絶して動けなくなる電気が、飼い主が持つ鍵くらいでしか外せない強固な首輪でいつでも自身の首を狙っているのだ。
さらに追い打ちをかけるのが、奴隷には人権がないということ。奴隷の権利はすべて飼い主に依存され、戸籍はおろか奴隷を守るものは法ですら有り得ない。
その証拠にこの国では毎年100人程度発生する逃亡した奴隷のほとんどが、死亡または失踪したという記録が残っていても、その類の報道は聞いたことがない。
「あいつの目的がわからない以上様子見だ。見たところ良くて中流階級の人間、そんな奴が莫大な金をかけて俺らをセットで買ったんだ。わざわざ観賞用…とはいかねぇだろうな。嗜虐か、愛玩か、ビジネスか…まぁろくな事には使われんだろう。お前も覚悟しておくんだな」
抜け目なく観察していたキャスターは男の馴染みが薄いことを見抜き、恐らくこの家は奴隷を購入したと同時に用意したのだろうと察していた。
立ち振る舞いも腹が立つほどスマートであるが、本当の金持ちが出す特有のいやらしさは伺えなかった。
そんな男がわざわざ自分ら4人を購入した。
類稀な美貌の兄弟を揃えたい気持ちはわかるがそれを実行するかは話は別、通常の奴隷でも相当な値段がするのにしたという事は相応の理由があるはずだ。
奴隷の用途として上げられる主なこと、人に言えない趣味があるのか、自分らを利用してさらに儲けるつもりか。
男が出ていった玄関の扉へ無意識に視線を向けたクーフーリン達は、距離よりもはるかに遠く感じる外への繋がりへ唇を噛んだ。
これからの己の人生は十中八九良いものではないだろう、睨み合った鋼色の瞳を思い出したプロトは小さく悪態をついた。