“痛恨の失投”を帳消しにする吉田正尚の逆転ホームラン「よく一緒にラーメン屋に行った」旧友・若月健矢を救ったWBC男の勝負強さ
先制点を許した痛恨のエラー
3月8日に行われた第3戦は、オーストラリアの投手陣を侍打線が打ちあぐねた。四球などで塁は埋めるが、あと1本が出ない。菅野智之、隅田知一郎と若月のバッテリーも精度の高い投球で0を並べたが、6回表、A.ホワイトフィールドが三盗を仕掛けた際、若月の送球が逸れ、レフト前に転がる間にランナーが還り、先制点を奪われた。 しまった――。若月は心の内がありありと浮かぶ表情で立ち尽くした。 ランナーは出すが何か噛み合わない。それまでの日本の流れを考えると重い1点だった。 だが7回裏、相手のエラーで残った近藤健介を一塁に置き、吉田が打席に入ると、何かやってくれそうな空気が漂った。オーストラリアの5番手 、J.ケネディは左サイドハンドの変則投手だが、吉田は背中側から向かってくるインコース低めの難しいスライダーを、鋭くはらうように打ち返した。打った瞬間に本塁打とわかる、値千金の逆転2ラン。日本を、若月を、吉田が救った。 9回表のベンチでは、すでに交代して退いていた吉田と若月が並んで座っていた。安堵した若月の表情が印象的だった。
結果よりも納得できるスイングを
試合後のヒーローインタビューで、吉田は7回の本塁打についてこう答えた。 「タフなピッチャーが続いていましたので、なんとか、自分のベストスイングをしようと思って、それが結果的にホームランになったので、本当に運がよくて、よかったです」 「自分のベストスイング」というのは、吉田がオリックス時代にも口癖のように発していた言葉だ。 三振をしたかしないか、安打が出たか出ないかといった結果で一喜一憂はしない。吉田の基準はあくまでも“自分のスイング”なのだ。 以前、こう語っていた。 「野球って本当に難しくて……。いい当たりでも、捕られたらアウトになる。そういう意味では、納得できるスイングを求めていくのがいいのかなと思っています。 結果だけで一喜一憂していると、どうしても長いシーズンの中で壁にぶつかりやすいので、しっかりと自分の納得がいくスイングでボールに対してアプローチできていたかとか、追い込まれてからどういうアプローチができたかということを求めていくようにしています。ベストスイングを求めていって、いいスイングができればホームランになる、それが理想形ですね」 オーストラリア戦の一撃は、まさにその理想形だったのだろう。 マイアミで行われる準々決勝以降はさらに厳しい戦いが予想されるが、吉田正尚のスイングが、また日本を勝利に導く得点を生み出すに違いない。
(「侍ジャパンPRESS」米虫紀子 = 文)
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