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The Works "犬も食わない" is tagged "槍弓".
犬も食わない/Novel by はすゆき

犬も食わない

1,856 character(s)3 mins

私にシリアスは書けません、短い。
※ちょっとだけHA意識してるところがあります

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「なあ、アーチャー」

束ねた青い髪をたなびかせてアイルランドの光の御子は褐色肌の赤い弓兵を呼んだ。
キッチンカウンターの中で明日の朝の仕込みをしていた台所の守護者、もといアーチャー・エミヤは人が少なくなった食堂で小さく溜息をつき目の前に突然現れた青い槍兵、ランサー・クーフーリンに視線を移す。

「なんだねランサー」

懲りずにつまみのアテかねといつものように鼻で笑って続けてやろうとしたアーチャーの声をちげえよと遮って、カウンターを挟んだランサーはアーチャーを真っ直ぐ見据え、さもなんでもないことのように宣った。

「オレ、お前が好きだ」

瞬間、時は止まった。
正確に言えばアーチャーの時が止まった。
ついでに近場に居た緑の弓兵と葉巻をふかしながらクエストの作戦会議をしていた軍師の時も止まった、文字通り凍り付いた。

「……すまない、ランサー。『オマエ』なんて名称のつまみは無いのだが聞き間違いだろうか」

一番に復活したのは当人のアーチャーであった。
苦し紛れに彼がつまみを強請りに来たのだと自分に言い聞かせながら料理名を頭の中で必死に検索する。
しかし青い槍兵はいたって真剣に心外だと言う顔付きで再度先程の爆弾発言を繰り返した。

「あ?つまみなんざ要求してねえよ。オレは、お前が、アーチャー・エミヤが、好きだと、伝えに来たんだ」

一言一言区切り、主張されたその言葉達はおよそアーチャーの理解できるものではなかった。
アーチャーとランサーは犬猿の仲、と言うのがここカルデアでの基本的な通りだ。
どこで召喚されても顔を見かける程の腐れ縁なのはお互い承知しているし此度の現界は同じ陣営同士。
憎み合っているわけでは無いが、それでもアーチャーはランサーが己を気に食わないと思っていることは理解していた。

「…君は私のことを普段から散々気に食わないとか癪に障るとか言っているではないか」

徐々に思考が復活してきたアーチャーは純粋にわからないと彼に思ったことをそのままぶつける。
復活してきたとは言え近場に居るロビンと孔明のことを忘れているくらいには動揺していたが。
場を移すわけでもなくその場でむくつけき男2人の告白じみた会話を繰り広げられ、作戦会議をしていた弓兵と軍師の2名は逃げるに逃げられず口を出すわけにもいかず、作戦会議に集中してる振りをする他無かった。

「気に食わない奴を好きになっちゃいけねえ道理はねえだろ」

しかしてあっさりと告げられた言葉にアーチャーは返す言葉も無かった。
あまりにも自然に放たれた言葉は、アーチャーの中のどこかで見た記憶と重なりぼんやりと惚けてしまう。
『敵でも好きな奴は好きで良いんだよ』そうぼんやりと浮かんだあれは、港だろうか。
空の青と混じって目の前の青に似た色が…

「アーチャー」
「っ!」

ぼんやりとした思考が目前の青に引き戻される。
少し拗ねたような彼が自分を見上げている。
言葉に出さずとも急かされていることは理解できた。

「…、こんなところでする話でもなかろう」

幾分か冷静さを取り戻したアーチャーが、とりあえず仕込みも終わったから部屋に戻ろうと曖昧に流せば不満そうな顔をしたランサーはしかし、逃げられなかったことに満足しオレの部屋な、と短く呟いて食堂の出口へと向かった。

「ロビン」
「!…はいよ」

動揺を悟られぬよう努めて落ち着いた声を出せば作戦会議に集中してましたよ作戦は成功していたようでアーチャーは動揺した様子もなく、私は先に出るから消灯を頼む、と言われて頷けば青い槍兵に続いて赤い弓兵は食堂を出て行った。
はあ〜と吐き出した声は2つあり、目の前の軍師と目が合うとお互い同じ考えであったのか言葉もなく作戦会議を中止としどちらともなく片付けを始める。
いつの間にか自分達以外に食堂に残っている者は居なくなっていた。

「明日が恐ろしいな…」

青い方とは割と同じパーティになるんだよ…とげんなりした軍師を見てしかし緑の弓兵はいつもの調子で軽く呟いた。

「いや、大丈夫でしょアレは」
「?」

何故わかる、と頭の上に疑問符を浮かべたお堅い軍師様に理由は述べず大丈夫大丈夫、と軽く告げたロビンの弓兵らしくよく見通す瞳には食堂から出て行った赤い弓兵の耳が褐色の肌でもわかるくらい赤らんでいるのが見えていた。
犬も食わねえな、とお決まりのことを思って赤い弓兵のことを存外気に入っているロビンは心の中でオシアワセニ〜、と呟いたのだった。

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