[社説]拙速な予算審議を政治の前例にするな
国会で十分な熟議を尽くしたとは言い難い。今回のような拙速な審議を前例としてはならない。
2026年度予算案が衆院を通過した。高市早苗首相が3月末までの成立をめざす姿勢を崩さず、与党は審議時間を近年と比べて大幅に短縮した。衆院選の圧勝で得た「数の力」を頼みにして野党の反発を押し切った格好である。
審議日程が窮屈になった背景には、首相が1月召集の通常国会で異例の冒頭解散に踏み切った事情がある。与党は通常なら1カ月程度かかる衆院審議を2週間余りで終わらせた。時間は約59時間にとどまり、現在と同じ審議方式となった00年以降で最短となった。
イラン情勢が緊迫するなか、国民生活に直結する予算案を早期に成立させたい事情は分からないでもない。しかし、スピードを重視するあまり、国会運営が強引になったのではないか。自民党は委員長ポストを握る立場を使い、野党の同意を得ないまま審議を急ぐ場面が相次いだ。
国会は国民の代表である議員が政府を監視する場である。26年度予算案は一般会計の総額が122兆円を超え、過去最大の規模だ。与野党による丁寧なチェックと政府の十分な説明に必要な時間が欠かせない。拙速な審議が常態化すれば、民主主義の足腰は弱まる。
もちろん単に時間をかければよいわけではない。論戦の質を高める工夫も不可欠だ。今回はそのような取り組みは乏しく、政策論争も低調だった。首相があいまいな答弁にとどめ、議論がかみ合わない場面も目立った。
野党は骨太の経済政策や安全保障政策で対案を示せなかった。足並みがそろわず、連携して首相にただす戦術も見えなかった。
与党は野党が答弁を求めていない閣僚まで出席させ、首相に代わって答弁に立たせた。閣僚が拘束される時間を減らそうと進めてきた国会運営の見直しに逆行する。
首相は「責任ある積極財政」や安保政策の抜本強化、インテリジェンス機能の充実など国論を二分する政策に取り組む考えだ。憲法改正にも意欲を示す。こうしたテーマでも結論を急ぎ、押し切ろうとしないかとの懸念は拭えない。
予算案審議は参院に移る。参院では与党が過半数に届かず、3月末までに成立できるかは見通せない。丁寧に審議を尽くすとともに、熟議の進め方や国会改革を与野党で真剣に話し合う必要がある。