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The Works "忘れじのインターミッション" includes tags such as "槍弓(広義)", "腐向け" and more.
忘れじのインターミッション/Novel by あおめ

忘れじのインターミッション

6,276 character(s)12 mins

※弊カルデア時空
※タニキが知らないはずの弓の記録を少しずつ拾い始めてる話
※ぐだ男が出張る
※何でも許せる人向け
※弓はほぼ出てきません
※ディルムッド、フィオナ騎士団について独自の(ご都合)解釈があります

皆様初めまして。FGOを始めて早9ヶ月、槍弓という素敵コンテンツに出会って3ヶ月。
先日のオルタニキPUで狂ったように石と呼符を捧げ、やっとの思いでタニキをお迎えすることができたので、パッション溢れるままに書き殴りました。
槍弓描写はほぼないですが、槍弓前提のお話なので広義タグつけました。
fateは絶賛履修中&弊カルデア(弓不在)のタニキとその周りはこんな感じだろうなあ、と想像しながら書いたので多少解釈違いがあるかもしれないです。
あとオッサンキャスニキに夢見てます。
弊カルデアシリーズは何本か書きたいなあと思ってます。思うだけタダ。

そして弓は全く来ません。いつになったら来てくれるんでしょうか。弓はアニキ'sが首を長くして待ってるので今すぐ来るように。いいですね?

(ディルムッドの件は私の勉強不足で都合良い感じに解釈してしまってます。いつか気力があれば書き直します、いつか…………。)

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――夢を、見た。

己ではない己と、見慣れない――けれど懐かしくも感じる褐色の肌の男が、彩りの食事を囲んで談笑している。会話の内容は窺いしれないが、不思議と理解は出来た。今日は店が忙しかっただとか、魚はとんと釣れなかったとか、やはり■■■■■の作る飯は美味いだとか。全身が微温湯に浸かっているような、生クリームたっぷりのケーキを更に蜂蜜で塗り固めたような。戦場に生きる今の己にとっては吐気を覚える位には甘ったるく不快に感じる〝平和な会話〟だった。

己はサーヴァントである。魔力を編むことで現世への現界を可能としているこの英霊という存在は、夢を見ないと云う。であれば、〝コレ〟は一体何なのか。問うまでもなく答えは解っている。
これは、記録だ。いつか何処かの地へ召喚された己が分霊の活動記録。それは聖杯によって在り方を捻じ曲げられた己の記憶にさえも干渉してくるほどに深く座に刻まれている。
数ある記録の中でもこの記録は一等特殊な現界をしたのだろう。聖杯戦争が収束しても座に還ることなく現世の生活を謳歌する――所謂殺し合い戦いとは無縁の毎日を送っていた。起床する。朝食を食べる。働く。会話する。帰宅する。夕食を食べる。湯浴みをする。就寝する。どれもこれも全て、兵器であるサーヴァントには不要のものだった。

下らない。実に滑稽で下らない茶番。
――それが、この記録を初めて見た時の所感だった。


「今日と言う今日はご飯を食べて貰うからね、タニキ!」
最近日課になりつつある素材回収のためのレイシフトが終わり。
管制室から自室へ戻ろうとするオレの前にマスターが立ちはだかり、そう言い放った。両手を腰に当て仁王立ちでふんぞり返っていても己との体格差が埋まる訳では無いので、いつも通り幾らか下にあるその白い顔に目線だけくれてやる。常との違いは眼下に広がるのがつむじではなく自信に満ち溢れた幼い顔であること、そしてその傍らに己を〝御子殿〟と呼び付き纏ってくる若い槍兵を伴っているくらいか。
ケルトゆかりのサーヴァントを引き連れて何を企んでいるかは知らんが、戦場でもない此処で態々言う事を聞いてやる道理もない。

マスターが常にオレに言う通り食事によってサーヴァントの魔力を多少なりとも補うことは出来るが、その回復量は微々たるものだ。此処では微弱ながら常に電力によって全サーヴァントに魔力供給がなされており、滅多にないが有事の際には優先して魔力を回すといったことも可能になっている。つまり食事なぞ摂らなくともその電力と睡眠時間さえ確保できれば少なくとも霊気消滅等と言った問題は起き得ないのだ。

――だと言うのに、この小僧は。

毎度レイシフトを行う度にオレを食堂へと連れて行こうとするその気概には賞賛こそ送れど迷惑であることには変わりない。ぐぐ、と己の眉間に皺が刻まれるのを自覚しながら口を開いた。
「何度も言わせるな。必要ないと言っている」
「備蓄のことなら今日のレイシフトでたんまり手に入ったし、遠慮はいらないよ」
「そういうことじゃねえ」
もう何度目かも分からないこのやり取りに喉の奥で溜息を噛み殺す。そも、こいつはオレが今まで食い物を口にしなかったのが慢性的な食糧難にあるノウム・カルデア此処を慮ってのことだと思っていたのか。正常な思考を持つ己――即ち槍持ちやドルイドのオレであればそのような殊勝な考えを持っているのやもしれないが、狂ったこのオレはそのような甘々な思考は持ち合わせていない。
必要とあらば殺し、奪うまで。それをしないのは仮にも己の契約者たるマスターや目的と拠点を同じくするサーヴァント達がいるというのもあるが、なによりシンプルにその行為食事が不要だからである。

これ以上の応酬は不要と判断し、未だに得意げな顔をしているマスターの横を通り過ぎようとした時だった。

「本日の昼餉は何でしょう」
「私はうどんがいいなあ!」
「お前さんいつもそれじゃねえか。……確か和食は魚がメインだとかって猫の嬢ちゃんが言ってたな」
「魚!何の魚でしょう!鯖、秋刀魚、鱈に鮭、鯵も良いわよね!」

同じくレイシフトに参加していたサーヴァント達の会話に、マスターの横へと踏み出しかけた足がぴたりと止まる。不自然に動きを止めたオレにマスターが首を捻った。
自分のことながら、自室へと向かう足にブレーキをかけた理由は説明できない。何かがオレの中で引っかかった、それだけだ。無論物理的な事ではなく、内面の話だ。
――何が引っかかったのか?
会話の内容はこれと言って特別なものでもなかった。これから奴らが向かうであろう食堂で待ち受ける食事の話だ。飯を食うつもりは微塵もなく、会話の内容にもさして興味はなかったが、とまで考えて二天一流を謳う女剣士の最後の言葉がエーテルで構成された仮初の脳を占拠していることに気付く。

アジ。よく槍兵のクラスを戴く己がレイシフトの合間に釣ってくる魚類の名だ。あれはアジを釣って戻る度に「あいつの飯が食いてえ」とのたまっている。魚なぞ、誰がどう焼こうと同じであろうに。

「ああ、アジは良いな」
「そういえば貴方……、キャスターさんもよく和食食べているわよね。好きな和食料理はある?」

パチチ。ほんの一瞬視界いっぱいに星が散る。霊基の不調、ではない。網膜の裏で小さく火花が爆ぜるようなこの感覚は覚えがある。


『――ああ、料理は得意分野だよ』


最早聴きなれた艶のある声が鼓膜を震わせる。最近は睡眠時以外にもこの記録を視ることが増えた。眠っている時との大きな違いと言えば、視覚は勿論それ以外の感覚も冴え渡ることだろう。今回もそうだ。

湿気を多分に含んだ生温い風が頬を撫ぜる感覚。その風が潮の匂いを鼻へ運び、遠くの方からは商品の安売りを謳うしゃがれた活気ある声が耳まで届く。


『アジの代表的な料理といえば、そうだな』


形の良いぽってりとした唇が、記憶にない言葉を紡いだ。嗚呼、憶えがないというのに。己はこの後に続く言葉を、男の浮かべる表情を、よく知っている。

「あー、和食は大抵美味いが、強いて言うなら、そうさなあ」

コンマ数秒で脳内を駆ける記録の合間に聞こえる、ドルイドの己の間延びした声がやけに耳に残る。ああそういえば、この妙に落ち着いた姿の己も魚を見る度に何かを懐かしむような表情を見せていたなと思考の端の端で思う。そんな奴が数メートル先で仲間に囲まれ談笑しつつ、態とらしく考えるフリをしてちらと此方に視線を寄越していたことなぞ、稀に視る記録に全神経を集中させていた己が気付くはずもない。

「――アジフライ、とかかね」
そう告げたのは記録の中の男か、杖持ちの男か、それとも両方か。いずれにせよ、その一言を聞いた瞬間にこの後のオレの目的地は自室から変更と相成った。
「……マスター」
「はっ、ハイ!」
「〝あじふらい〟があれば、付き合ってやる」


結論から言えば、オレはマスターとディルムッド槍兵、そして何故か杖持ちのオレと飯を囲む事になった。杖持ちに関しては食堂に着いて程なく気付いたら己の隣に陣取っていた。曰く「今日は記念日だからな」。何の記念日かは知らないが、どうでもいいことであるのは確かで、追及するのも面倒であったので返事の代わりに鼻を鳴らすだけに止めた。
「キャスターの御子殿もアジフライ定食にされたのですね」
「ん?ああ、好物だからな」
「そういえばキャスニキも槍ニキも和食好きだよね、意外と」
「おうさ。特にレイシフトの後のみそ汁は身体に沁みる」
「あはは、言ってることが完全に日本人だ」

目の前で繰り広げられるどうでもいい会話を聞き流しながら、眼下の物を品定めするようにじとりと見つめる。お世辞にも新品とは言えない薄緑のトレーの上には様々な形の皿が所狭しと並べられている。
始めに断っておくと、これらの皿は決して自分で置いたのではない。此処では食事は配膳制らしく、「折角食堂に来たんだからたっぷり食べて行きなね」と飯炊きを任せられているライダーのサーヴァントに口を挟む暇もなく皿を乗せられたというのが正確なところだ。オレはあじふらいだけを食べるつもりだったのだが。

向かって左側の椀にはこんもりとよそられたツヤのある白い山。その奥に置かれているのは黒の漆が塗られた器で、中に入っている茶色く濁った汁が白い湯気をくゆらせながら、時折深緑の海藻を覗かせる。これが槍なしの言う〝ミソシル〟だろう。見た目から最初は泥水かと思ったが、鼻腔を擽る芳醇な香りは成程確かに己には無縁のはずの食欲を刺激する。中央には一際大きく平たい皿が鎮座しており、細かく刻まれた生の葉野菜の上にはメインのあじふらいが二匹、堂々と寝かされていた。
皿と共に並べられていた安っぽい銀食器を手に取り少々荒っぽくあじふらいに突き立てれば、それはざっくと爽快な音を立てる。そのまま口に運び入れ噛みちぎってやると、衣に包まれた魚の身は意外と簡単にほろりと崩れた。

ざくざくざく。咀嚼する度に心地良い音を奏でながら小さくなっていくそれが、舌の上でコロコロと転がった。
衣にかかっていたソースの濃厚な味と潮の風味が混じった柔らかな魚の味に衣の香ばしい香りが絡み合う。正直に言って、想像以上に味は悪くなかった。

「…………?」

だが、何かが違う。初めて口にするモノなのに、そう感じざるを得なかった。感じた違和感を確かめるように更に一口、二口とフォークに突き刺さったままのそれを運び、咀嚼し、飲み込む。何度食べてもやはり違和感は拭えない。そうしてやがて、コレは己の求めていたものではないという結論に至った。

「……どう?」
皿の底が見えてきたところで正面に座るマスターから声を掛けられる。どう、とは、味のことか、食事という行為そのもののことか。どちらにせよ、此処での食事にこれ以上の価値は見い出せない。
「もう要らん」
視線を皿から外さないままそう言って、最後の一口を運ぶ。確認を終えた以上これ以降の食事は不要だが、半端に残すのも癪だった。
「此処のアジフライも、中々美味いだろう」
ふいにキャスターが声をかけてくる。態々そちらに顔を向けなくともその表情が得意満面の笑みを浮かべているだろうことは容易に想像できた。自分自身であるとはいえ、……否、自分自身だからこそ、この男の言動は不快で仕方ない。
ぎろりと一睨みすると、キャスターは態とらしく両手を挙げて降参のポーズをとる。「おー怖い」と肩を竦める其奴に舌を打ち、席を立った。マスターの要望通り飯は食ったし、オレの目的も果たした。腹が満たされて眠気も出てくれば、これ以上食堂に留まる理由がない。
「マイルームに戻る」
レイシフトがあれば呼べ、と付け足して背を向ける。最後にちらと視界に入れたマスターはまだ何か言いたげだったが、閉口したまま言葉を発することはない。話すことはないのだろうと判断してオレはその場を後にした。


「……行っちゃった」
「アジフライでも駄目だったか」
コレなら奴も多少は食い物に興味を持つと思ったんだがなあ、とキャスターのクー・フーリンはまだ湯気の立っているみそ汁に口をつけながら苦笑する。別側面の自分とは正反対で食事を楽しんでいるらしいキャスターに、マスター、藤丸立香は変わらず明るい声を投げかけた。
「いや、大丈夫!次は今日試そうと思ってた奥の手を使って食べさせるから!」
「奥の手?」
「そう!次回こそよろしくね、ディルムッド」
「ええ、マスターと御子殿のお役に立てるのならば。いつでもご用命下さい」
話を振られた若き槍兵は、器用にパスタをフォークで絡め取りながらにこりと微笑む。はてさて、この美丈夫にそんな力があったのかと思案して、キャスターはすぐにその〝奥の手〟とやらを理解した。
「――ああ、誓約ゲッシュか」
己には、生前交わした誓約が二つある。一つは犬の肉を喰わないこと。そしてもう一つは目下の者からの食事の誘いを断らないこと。ディルムッドはかつてアイルランドに存在したフィオナ騎士団の団員だ。フィオナ騎士団は己が生前所属した赤枝騎士団の言わば後輩のようなもので、そういう意味で言えば確かに後者を利用すればオルタを食卓に座らせることは可能かもしれない。だが、奴がそう簡単に罠(と言うと語弊かもしれないが)にかかるとは思えない。精々最初の一回が限度だろう。それにそんな手段をとって果たしてマスターやカルデアが無事に済むかどうか。

幾ら契約関係にあるからといって、このカルデアに召喚されてから日の浅い反転状態の己がマスターに何も危害を加えないとは断言できない。正直に言って、他のクラスの己より頭の回るキャスターでもオルタの考えていることは未だ完全には解り兼ねていた。
フンスと鼻を鳴らしながらディルムッドと今後の作戦を立てるマスターがキャット特製のオムライスを一口含んだところで「残念だが、」と口を挟む。その作戦は止めた方が良いと伝えると、盲点だったと言わんばかりにマスターは目を真ん丸くしてがっくりと肩を落とした。
「うーん、タニキはそんなことしないとは思うんだけどなあ」
「……まあ、奴に関しちゃ根気強く構い倒すのが一番さね」
「それもそれで嫌がられそうだけどね……」
「さて、どうかね」
タニキ、とはオルタの己を指しているらしい。なんだその呼び方、と揶揄い半分に指摘すると、なんとも面映ゆいことにこのひよっこマスター(一度世界を救ったのだからひよっこというのはもう違うかもしれないが)はどのクラスのクー・フーリンも〝アニキ〟と呼びたいのだと言う。全くいつの間に懐かれたモンだと笑ったのは記憶に新しい。

一言二言交わした後、マスターとディルムッドは次のレイシフトがあると言って残りの飯を胃に掻き込むと、慌ただしくその場を去った。広々としたテーブルにぽつんと一人残されたキャスターはというと、とっくに食事を終えて食後の余韻に浸っていた。手元の緑茶をずず、と啜ってから「ッアア゛〜」と早朝から駆り出されたレイシフトの疲れを全て吹き飛ばすように一際大きい息を吐く。直後まるでタイミングを計ったように現れた若い頃の自分――プロトに「オッサンじゃねえか」と揶揄われた。どうやらシミュレーターで一汗かいてきたらしく、こめかみには一筋の滴が流れている。相手はまあ、フェルグスあたりだろう。

飯がこんもりと乗ったトレーを持ってつい先刻までマスターが座っていた席に腰を落ち着けたプロトに放っとけ、とテーブルに肘をつきながら言って再び湯呑みに口をつけるも、すぐに思い直して姿勢を正した。もし此処にあの弓兵が居たならば「行儀が悪いぞ」と小言を食らわされそうだと思った故の行動だった。反射に近い形で己が居住まいを正したことに気付いたキャスターは、そこではたと動きを止める。

ああ全く厄介なことに、存外己にもあの男の居る生活というものが染み付いているらしい。

「……こりゃ早いとこ喚んでやらんとなァ」

久しく目にしていない戦場にはためく赤い外套を思い浮かべて、ドルイドの男は静かに笑みを零した。

Comments

  • しんぐ
    October 22, 2021
  • b_ae191022
    October 11, 2021
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