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相容れずとも話は出来る/Novel by はすゆき

相容れずとも話は出来る

3,361 character(s)6 mins

初心に返って槍弓書きました。
えふご時空。

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「同じパーティにしないでくれ、だぁ?」

カルデア古参であるランサー・クーフーリンはマスターから聞いた腐れ縁のその顔を思い出して大きく溜息をついた。

×××××××

確かに奴とは馬が合わん。
これまで幾たびも顔を合わせた赤い外套の弓兵。
同じ場所に召喚されることでさえ珍しいと言えるサーヴァント同士の中で運命と言ってしまえる程に、何処に行ってもあの顔と出逢う。
最早お互いが触媒なのではないかと疑ってしまうほどに見慣れた赤い弓兵は、マスターとの会話の中でそんなことを漏らしたそうだ。
それを聞いたクーフーリンの心中と言えば『なんだアイツふざけてやがんのか』とでも言ったところである。
英雄王はわかる、傍若無人なあの金ピカと一緒のパーティで出陣したいなんて酔狂な奴は子供以外にそうはいまい。
しかし自分も同等に扱われていると聞き、クーフーリンは些か面白くないと感じていた。
馬こそ合わないものの奴は基本的には合理主義で、人を選り好みするようなタイプではないし必要とあればよっぽどのことがない限りどんな人物とだって行動を共にするだろう。
しかしマスターの前でそこまで念押しするとなるといくら奴とは言え少しばかり傷つく。

××××××

「なあ、そんなにオレのこと嫌いかぁ?」

思い立ったが吉日、物事を複雑に考えることが苦手なクーフーリンは食堂で仕込みをしているであろうエミヤの元へ現れる。
突然現れて意味のわからない質問をするケルトの大英雄を、鋼色の目が少しだけ見張られた後にパチリと瞬きをした。

「…いきなり何の話だね?」

前髪の降りた弓兵は常よりも幼く見え、小首を傾げる仕草と相まって己より上背のある男に愛らしいような感覚を感じてしまう。
自らの思考に疑問符を浮かべつつそんなことよりも今は目の前の男がどうして己を避けているか、だ。

「同じパーティにすんなってマスターに言ったんだろ」
「…ああ」

合点がいったと言うような表情をした男はしかしこの大英雄が何故そんなことをわざわざ聞きにきたのか全くわからなかった。
寄ればお互いに気に食わず口喧嘩に発展するばかり、ついこの光の御子に対して煽るような態度を取ってしまう己を男は持て余していた。
幾度顔を合わせようとも決して交わることはない、いつかの召喚では味方であったこともある様だが彼とはおそらく。

「君と私は基本的に相容れぬ間柄だろう」

何度も言うが馬が合わない奴だとクーフーリンは改めて思う。
気に食わないがしかしクーフーリンは彼の事を疎んじているわけではないし、わかり合おうという訳ではない。
かつて戦ったからといって今回は同じ陣営だ、他のサーヴァントだって自分達よりももっと拗れて複雑な関係性な者も沢山居る。
ちっとくらい話をしたってバチは当たらねえだろう?と言えばエミヤは眉根を寄せて意味不明だと言う顔をした。

「こんな守護者風情になんの話があると言うんだね」
「お前本当卑屈だし頭かってえよなぁ、めんどくせえ」

頭をガシガシと掻きながら眉間に皺を寄せた目の前の男にはああ、と溜息を吐いた。
むうとその皺が深くなり両腕を組んだ抑止の守護者様はどうやら自分の態度が癇に障ったようだ。

「喧嘩なら買うが」
「しねぇよ!」

ただ少し話をしたいだけだと言うのにどうしてそんなに頑なであるのか。
しかしエミヤからすればクーフーリンの行動は全く理解ができないものであった。
寄ると突っかかって嫌味を投げつけてくる男とどうして対話しようなどと思うのだろう。

「いけ好かねえ野郎だと思っちゃいるがお前さんのことは別に嫌いじゃねんだよオレは」
「は…、?」

目を見張ったエミヤを見てもう一度嫌ってねえぞ、と言うと心底わからないと言う表情をしたのでクーフーリンはふんすと鼻を鳴らしてふんぞり返った。
嘘じゃねえと言葉にせずとも強調されてエミヤは戸惑ったかのようにその鋼色の瞳を泳がせる。
腕を組んでそれに、と先を続けるクーフーリンにエミヤは何も言わずに耳を傾けた。

「折角こんな珍しい召喚で巡り会えたんだ、楽しまなきゃ損だろ」
「ほう、なるほど刹那を生きた英雄らしい言葉だなクーフーリン。…言っておくが別に私も君が嫌いなわけではないぞ」

口角を上げてそう揶揄されたかと思えば続いた言葉にへ、と今度はこちらが目を見張る番になってクーフーリンはマジマジとエミヤの顔を覗き込む。
なんだ、と先程のクーフーリンのようにふんぞり返ったエミヤの表情は思いの外穏やかで幼い雰囲気と相まって可愛いなコイツと心の中で呟いた。
いや先刻から愛らしいとか可愛いってなんだよ、と自らの思考にツッコミを入れつつクーフーリンは頭を振って再度エミヤを正面から見据える。

「——ま、気楽にいこうやアーチャー。と言うわけで手始めにシミュレーションルームでもどうだ?」
「喧嘩はしないのでは?」

ふう、と呆れ返ったような表情はしかし先程までの刺々しい空気ではなく穏やかなものになっている。
どうやら寄ると触ると喧嘩をするばかりの関係性とは縁を切れるようだ。

「喧嘩じゃねえ手合わせだ手合わせ、お前さんの戦い方は弓兵のくせに剣や槍やらが飛んできたり盾が阻んできたりで面白くて最高に滾る」

古今東西様々な武器を扱う目の前の弓兵とぶつかり、表へ出ろとシミュレーションルームで果たし合いを吹っ掛けたのは何も一度や二度ではない。
大方エミヤの煽りに乗せられたクーフーリンが筋力差に物を言わせてシミュレーションルームに引き摺って行くのがこれまでの自分達が、案外己はこの赤い弓兵と刃を交えたくてそんなことをしていたのかもしれない。

「光の御子殿にそこまで言われてしまったら断る道理もないな」

ふ、と笑ったエミヤがそんなことを言うのを見て確信する、彼とて己との戦闘を殊の外楽しんでいることをクーフーリンは肌で感じていたのだ。
…なんだ、まあお互い様って奴だな。

「ただ戦うんじゃ面白くねえから…そうだな、オレが勝ったら夕飯のリクエストでも聞いてくれや」

時刻はまだ昼。
今日の当番はエミヤだとマスターとの会話の流れでチラリと聞いた。
はっきり言ってこの台所の守護者の飯は極上であり、勝者の特権としては申し分ない。

「ふむ、良いだろう承ろう。では…もう勝った気でいる君に吠え面を欠かせてやることにしようかな?」

二つ返事で了承し、口角を上げて笑みを浮かべたアーチャーは片目を瞑って気障ったらしくそう鼻を鳴らした。
そうだそう来なくては。
腐れ縁の赤い弓兵はこれくらい煽ってくるのでなければ張り合いが無い。

「ッハ!良い面だ、そう来なくっちゃな!」
「全く、血気盛んなことだ」

ではケリをつけたら仕込みを再開することにしよう、と作業を中断したエミヤに向かってクーフーリンが問いを投げ掛ける。

「アーチャー、お前さんが勝ったらどうする?何かあるか?」

勿論勝つのは自分だが一応聞いておいてやろう。
片付けを手早く終えたエミヤはこちらを振り向くと顎に手を当てて問い掛けられた事柄に少しばかり思考を巡らせた。

「む、そうだなそれでは…、君の髪を一度整えさせてもらっても?」
「…髪ィ?」

青い自らの長く束ねた髪を見てクーフーリンが疑問符を浮かべる。
男の髪など整えてどうしようというのだ、という気持ちが湧くがそういえばこいつは。

「前々から思っていたんだ、君は整った容姿をしているし折角美しい髪なのに碌に手入れもしていないではないか。私がサラサラのツヤツヤに仕立てあげてやろう」
「…あー、おう」

割と面食いなのだこの男は。
そして美しいものには目がなくそのカテゴリに己も入っているのだと自覚してクーフーリンはなんとも言えない気持ちになってドヤ顔の赤い弓兵を見ながらその場で小さく身じろぎをした。

「?どうしたランサー」
「…まあお前さんがそれで良いなら良いけどよ」

この男が自分のことを思ったよりも好いているのかもしれないと言うことを改めて認識させられて、柄にも無く赤らんでいるかもしれない顔を背けてランサーはついてくる足音と共にシミュレーションルームへと足を向けた。

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