ニューヨーク南部地区連邦地裁のJ・ポール・オトケン判事は2月26日、東京近郊の仏教寺院と神社に油状の液体をまいたとして日本で建造物損壊に問われているマンハッタン在住の医師で日本国籍の金山昌秀被告(63)の身柄引き渡し差し止め請求を退けた。金山被告側弁護人のマイケル・ジギスムンド弁護士は控訴する方針を示したが、すでに10年に及ぶ法廷闘争を経ており日本への移送が確定。同被告は3月3日、ニューヨークで千葉県警に引き渡され、日本行きの航空機の中で建造物損壊の容疑で逮捕された。
オトケン判事は「複数の裁判官が十分かつ慎重に審理してきた」と指摘し、連邦最高裁も執行停止を認めなかったと述べたうえで、引き渡し直前での停止は米政府に不利益を与えるだけで、米国が他国との犯罪人引き渡し条約を履行することは極めて重要と判断した。
被告は1962年に在日韓国人の両親のもと東京で生まれ、1967年に日本に帰化した。米国の医大を卒業後、30年にわたりマンハッタンで産婦人科医として活動。米国永住権を持っている。2015年3月25日、千葉県成田市にある成田山新勝寺の主要な門に、指で油のような液体を付けるような行為をしたとされる映像が防犯カメラに記録された。翌日には、同県の香取神宮でも、階段や柱、賽銭箱に油を塗るような行為があった。千葉県警は監視映像やレンタカー、通行料金、航空機利用記録などから金山被告を特定、被告が神社に油を注ぐことについて話している2012年頃のYouTube動画も根拠としている。同様の被害は全国で見られた。
日本は2016年に米国に対し金山被告の身柄引き渡しを要請。2017年に連邦捜査官は日本政府の要請を受け入れ逮捕した。保釈後、被告側から身柄引き渡し阻止の申し立てが行われたが、連邦裁判所は繰り返し却下してきた。
金山被告の弁護側は、油を塗った行為そのものが器物損壊に当たらないか、損害が一切なかったとして無実を主張している。また、被告が熱心なキリスト教徒で、また韓国系であることで不当な扱いをしているとして訴追の動機を問題視している。被告は、日常生活や仕事の中で祈りを通じた神との個人的な関係に焦点を当てた宗教団体「インターナショナル・マーケットプレイス・ミニストリー(IMM)」の創設者。「聖書に基づき施設を浄化した」などと主張していた。
日本では本件を建造物損壊と共に文化財保護法違反の疑いとして扱っており、刑事責任も問われて有罪となれば最長5年の懲役刑が科される可能性がある。NY日本総領事館は昨年、請求は法と証拠に基づくもので政治的・宗教的動機はないと説明している。