ASDやADHDの特性生かす場づくり 伊藤穰一氏が語るオルタナスクールの狙い
ニューロダイバーシティ始動 前編
学校のリーダーNeurodiversity School in Tokyo 共同設立者の伊藤穣一さん
Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)を組み合わせた「ニューロダイバーシティ」という言葉を聞く機会が増えた。脳や神経に由来するさまざまな違いを「多様性」と捉えて相互に尊重し、イノベーションや社会の発展につなげようという概念で、自閉スペクトラム症(以降ASD)や注意欠如多動症(ADHD)など非定型な発達も、障がいや能力の欠如ではなく「個性」と捉える。高い集中力や創造的思考力など、非定型発達の人たちが持つ特性を生かそうという取り組みが、日本でも少しずつ広がっている。
そんな中、2024年秋にニューロダイバーシティを基軸とするオルタナティブスクール「Neurodiversity School in Tokyo (NSIT)」が東京・青山で開校した。共同設立者の1人は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの元所長で、現在、千葉工業大学学長を務める伊藤穰一さん。伊藤さんに、ニューロダイバーシティをめぐる現状や教育への思いを聞いた。
MITメディアラボでの出会い
——伊藤さんはどのようなきっかけで、ニューロダイバーシティに関心を持つようになったのですか。
MITメディアラボにいた頃、多くのASD、いわゆる自閉症の学生たちに出会いました。MITの心理学の教授によれば、全体の6〜7割がそうではないかとのことで、私は所長として、彼らの特性を生かせる環境づくりについて考えるようになりました。その中で、1990年代後半に提唱され一種の社会運動となっていったニューロダイバーシティ・ムーブメントについて知ることになりました。
2019年には「WIRED(ワイアード)」というメディアに、「標準的な知能や集団行動を身につけさせようとする従来の教育は、非定型発達の人たちにはなじまない。彼らは、興味のあるものについて調べる、あるいは、課題解決型の学習や教師に教わるのではない学び方であれば大きく伸びる」といった内容の記事を寄稿をしました。
その少し後、娘が3歳のときにASDの診断を受けました。私自身、幼稚園をしょっちゅう脱走したり、本当に興味があることだけを勉強したりと非定型発達の要素が強かったですし、化学者だった父は診断がなかったものの間違いなくASDだったので、それほど驚きはありませんでした。ただ、自分の娘が当事者になったことで、大学生など年齢が高い層だけでなく、幼少期の子どもたちが育つ環境についても勉強を始めました。
そして21年、娘を連れて帰国することになり、日本の学校や企業の状況を調べるなかで、教育を変えるだけでなく、日本全体にニューロダイバーシティのムーブメントを広げていかなければ、子どもたちはハッピーに生きていけないのでは、と考えるようになりました。
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