AIに卒論を丸投げ、書き直しに どこまでならOK?
大学の卒業論文を書く際に、学生は生成人工知能(AI)をどの程度、どういった形で利用していいのか―。学生と教員が頭を悩ませている。生成AIの進化は速く、教員自身も研究での使い方に戸惑う中、学生に利用方法を具体的に示すのが難しいようだ。卒論の一部を生成AIに「丸投げ」する学生もおり、大学は対応を模索している。 【画像】AIでノーベル受賞材料を研究
広島大(広島県東広島市)の情報メディア教育研究センターは昨年3月に卒業・修了した学生に生成AIの活用状況に関する調査をし、282人から回答を得た。卒論・修論執筆に生成AIを利用したのは128人で、うち53・1%が不安を感じていた。理由(複数回答)は「間違った内容を書くことにならないか」が46・9%と最多で、「研究不正にならないか」が27・3%で続いた。
教員からの指導の有無も全回答者に尋ね、「特に話はなかった」が最多で68・1%を占めた。「利用を認められているが、使い方については言及はなかった」は14・5%だった。 調査を担当した隅谷孝洋教授(教育工学)は「日本の学会自体が生成AIで作った文章や画像をどう扱えばいいか、基準を出していない場合が多い。研究者自身が戸惑っているため学生に明確な指示を出せず、不安を生んでいる」とみる。 国内の大学は近年、生成AIの利用方針を示し、情報の信ぴょう性を疑う必要があることや、気付かぬうちに著作権を侵害してしまうリスクなどを伝えている。ただ、より具体的なルールとなるとまちまちだ。「卒論やリポートの作成であらゆる形での生成AIの使用を禁止」と明示するケースがある一方、「学部単位の方針を決めていない」とする大学もある。
そんな中、就職活動との両立に忙しい学生が、AIに卒論の一部を「丸投げ」する事態が起きた。広島県内の複数の教員によると、文章は整っているが、普段その学生が使わない言い回しだったり参考文献が的外れだったり。内容の背景などを問うと学生が答えられず、教員が「丸投げ」を見抜き、書き直させるケースもあったという。 一方で、卒論に生成AIをうまく使うための模索も各地の大学で始まっている。広島経済大(広島市安佐南区)では、ビジネス情報学科の石野亜耶准教授が生成AIを活用した卒論の添削支援システムを開発した。本年度は15のゼミの学生が使い、システムの指摘で文法の誤りや文章のねじれを直した。教員は内容に集中して指導できる利点がある。 石野准教授は「研究活動に不慣れなために、AIの助言の真偽を見抜けず言いなりになる学生はいる。だからこそ、内容について各ゼミの先生からしっかり指導を受けてほしい」と話す。 独自の「信号機メソッド」を昨秋に取り入れたのが、千葉工業大工学部の山本典史教授(計算化学)だ。研究室に配属直後の学生は生成AI禁止の「赤信号」。論文の要点をノートにまとめ、専門知識を増やしてもらう。 次段階の「黄信号」の学生は、指導教員による生成AIの適切な使い方の実演を通じ、「いつでも丁寧なアドバイスをくれる頼れる先輩」にする手法を学ぶ。「青信号」の学生は、生成AIに自らの卒論を具体的に批判させる指示を出し、質を高める。山本教授は「具体的な活用方針を示すと学生は安心してくれた」と手応えを感じている。
中国新聞社