アマゾンから「重要なお知らせ」 報酬変更に嘆く配達員、法的問題は
通販大手アマゾンの荷物を運ぶ配達員たちに、「近く報酬の単価を変更する」という通知が同社側から届いている。減額になる人も多い。変更をのまないと契約を切られるという内容で、「一方的だ」との声があがっている。
近畿地方で配達員として働く男性(33)に、そのメールが届いたのは1月19日の夕方だった。件名は「重要なお知らせ」。差出人は「Amazon Hubデリバリーチーム」で、宛先は「Amazon Hubデリバリー パートナー各位」となっていた。パートナーとは男性ら配達員を指す。
1個あたり125円→100円
メールには、荷物を運ぶ報酬について、1個あたり125円を100円に変更すると記されていた。新しい契約は4月5日から。「お客様のニーズ」から、1週間あたりの稼働日数を4日以上とすることも求められていた。
「寝耳に水」だった男性が、アマゾン側の担当者に電話で理由を尋ねると、「アマゾンが決めたこと」と言われた。その後にこの担当者から送られてきたメールには、新しい報酬単価について「地域ごとの運営コスト、人口密度、労働市場を加味した」とあった。運ぶ荷物の量を増やしてほしい、との要望には「商品の需要で変わるので約束できない」とされた。
配達員向けのアプリには「Q&A」が記されていた。新たな単価に同意しない場合はどうなるかという問いへの答えは、「契約を終了させていただきます」だった。
アマゾンのHubデリバリーは、配達員の自宅までアマゾン側が荷物を届け、それを配る働き方。集配所に取りに行く手間が省け、仕事の合間に運ぶこともできる。アマゾンはホームページで「本業のペースに合わせながら効率的に副業報酬を得ることが出来ます」とうたう。
法的な問題は
アマゾン側による価格変更に法的な問題はないのでしょうか。記事後半では専門家の見解を紹介しています。
公正取引委員会に相談すると…
昨秋から始めた男性は「余計な人間関係もないので気が楽」と感じていた。Hubデリバリーの収入は月10万円ほどで、月収の半分を占める。
しかし新たな契約が適用されると、単純計算で約2万円分、手取りが減ることになる。個人事業主としてガソリン代や車の維持費は全て自腹だ。ガソリンの値上がりも気になる。国民年金や国民健康保険の負担も大きい。「当面のキャッシュが本当にしんどい」と話す。
ネット上では「許容できない」「あんまりだ」など、同様に減額を提示された配達員らとみられる憤りの投稿があった。中には「自分は据え置き」というものもあった。
男性が不当な商取引を監視する公正取引委員会に相談したところ、この件に関する相談が相次いでいる、と言われたという。アマゾンの担当者に尋ねると、同社側にも問い合わせが寄せられているということだった。「自分だけじゃないんだな、と思った」
「配達員を軽視している」
アマゾンにはこれまでも、問い合わせをしても返信が2週間後になるなど、「配達員を軽視している」と感じてきた。「今回の一方的な報酬値下げはグレーどころかアウトではないのか」と男性は言う。
朝日新聞はアマゾンに経緯を尋ねるメールを送ったが、返事はなかった。
今回のような配達の報酬単価の変更に、法的な問題はないのか。
取適法に抵触する可能性
公取委出身で早稲田大法学学術院の中里浩・准教授(経済法)は、取引の実態によっては、1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法、旧下請法)に抵触する可能性がある、と指摘する。
取適法は、仕事を受ける側が負担する燃料費や労務費などのコストの増加を考慮せずに、発注者側が価格を一方的に決めてしまうようなことを禁じる。中里氏は「軽バンやバイクを使っている事業者であれば、燃料費というコスト増が起きており、問題になり得る」という。
単価の決定方法が焦点となるといい、今回のアマゾンのように「同意しなければ取引できない」と迫るようなやり方では、「十分な協議をしたとは言えない」という。「特にプラットフォーム事業者と立場の弱い委託業者の関係では、形式的な同意を取るだけでは不十分だ」と指摘する。
中東情勢に伴って燃料費が高騰しており、中里氏は「報酬を巡る丁寧な協議が、業界全体としても一層重要になる」と警鐘を鳴らす。
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- 【視点】
アマゾン、あるいは米国発の大手IT企業はこのような「すべて決まってから」同意を求める例が多いですよね。 アマゾンの本社は米国になると思いますので、日本を含む米国外のアマゾンがどれだけ各国の法律を順守するかどうかも見極めないといけません。 アマゾンは労働者の権利を守るための労組の結成にも協力的ではなく、米国では一部の施設で労組結成が実現したものの、会社側が認定や団体交渉を拒否・法的に争うなど、労使交渉の実質的な確立には至っていないようです。 とはいっても、人がかかわることですから、ぜひ日本の法律を駆使して、働く人を守るようにしていただきたいですね。このような記事はそのためにも役立つと思います。
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