後継者は執行役員から、節目は創業80周年

2022年は新卒の初任給を引き上げたのが話題となりました。

 コロナ禍が時代錯誤な賃金体系を見直すきっかけになりました。2019年、当社の平均年収は800万円強でした。2020年はコロナ禍で残業をカットしたり、有給を消化したりして680万円まで下がりました。ところが現在、業績は回復したにもかかわらず、平均年収が720万ほどまでしか上がらないのです。

(写真:加藤康)
(写真:加藤康)

 この原因は、コロナ禍でオンライン会議などデジタル化が進んだことで、業務効率や生産性が向上したからです。要するに、従来は労働時間に対して給料を支払う賃金体系で、残業を年間数百時間やって初めて年収800万円に到達していたのだと分かりました。これは良くないと思い、賃金体系を一新しました。2023年度は年間労働時間が2000時間かつ、有給を20日取得して、平均年収が880万円になるように設計しています。

 これまでは、日本とドイツを比べたときに、同等技能を持つ社員でも賃金は日本人のほうが明らかに低かったのですが、今回の賃金体系の改定でようやく解消されました。2030年には全世界でほぼ同じ賃金体系にするよう計画しています。今まで以上に社員の技能に対価を払うことになります。そのつもりで励むよう社員を鼓舞しています。

 この方針には賛否両論あります。しかし会社の経営とは仮説と検証です。今はこの方針で進めれば会社が成長すると信じていますが、検証してみないと分かりません。そのため、2023年度以降、次の中期経営計画までの3年間は10%ほどの高い利益率を維持することが重要です。達成できれば、当社を見て賃金を上げる企業も増えてくるかもしれない。ひいては日本における賃上げの流れを後押しできればと思います。

ご自身の後継者についてはどのように考えていますか。

 後任は今の執行役員から選ばれると理解してもらってよいと思います。彼らは共に修羅場をくぐり抜けた仲間です。それから、次期社長を支える生産系や開発系の大番頭も育成しています。

 経営のノウハウももちろんですが、ご飯の食べ方から服の着方、発言内容、毎日ご機嫌な顔で会社に来るなど、トップとしての振る舞いを基本的なところから厳しく指導しています。嫌になって辞めない程度に(笑)。

 しばしば、同族経営についての質問も受けます。私の息子は現在、京都大学の助教をしており、2025年に当社に入社する予定です。ですが、将来的に開発系の責任者のポジションに就く可能性はありますが、経営者としての後継者になるかどうかは未知数です。

 社長を退く1つの節目は2028年を考えています。この年で当社は創業80周年を迎え、私は社長に就いて30年となります。その後はグループの会長として、対外的な活動をしていく予定です。顧客とのつながりはもちろん、工業会や学会の活動や大学、自治体など社会とのつながりを保っていくのが重要だと思います。会社にとっても自分自身にとっても良い仕事がいろいろあります。

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