【切弓】同じだけど、違う
FGO時空のアサエミ×エミヤ(切弓?)のお話。切弓というよりは完全にアサエミエミです。
捏造120%です。
二人を幸せにしたかったので、シリアスゼロのハッピー話。
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⚠️注意
・捏造120%
・FGO時空
・エミヤアサシン×エミヤ
・お互いに生前の記憶は摩耗していて、お互いのことも覚えていない。
・アサエミエミを幸せにしたかった。
・批判等はお受けできませんのでご了承くださいませ。
以上のことを理解していただき、自衛して頂ける方はお付き合いくださいませ。
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呼びかけに応え、目を開けて初めて見たのは、自分とよく似た色彩を纏った男と、一人の人間だった。
人間はマスターで、世界を救うだなんて大仕事を有無を言わさず任されたたった一人の生き残りらしい。
そして、その横に立つ少女はデミサーヴァント。
そして、僕とよく似た色彩を纏った男は、不思議なことに真名も同じだった。
アーチャークラスの英霊『エミヤ』
色味は似ているくせに、中身は全然違っていたけれど。
彼は、僕とは違って、世話焼きで面倒見が良くて、誰よりも真っ直ぐな男だった。
料理がとても上手で、食事の必要がないと拒む僕にも何度も声をかけ、『貴方と共に食べたいんだ』なんて不器用に笑う彼に結局絆されて一緒に食事をとるようになったのはいつからだっただろうか。
彼の料理は何故だかすごく懐かしい味がして、思わず口から『美味しい』だなんて、何十年以上も忘れていた感覚と共に言葉が零れ落ちた。
彼は目を見開いて。
そして、嬉しげに目を細め、それはそれは柔らかな笑みを浮かべて『ありがとう』と優しすぎる声音で言うから。
僕は心臓が痛くて、身体が熱くなって、初めての感覚に、戸惑うことしか出来なかった。
その後も、初めてのレイシフトからずっと、共に戦い続け、共に食事をし、共にマスターと人類のために最前線に立ち続けた。
いつの間にか、僕と彼はいつも一緒にいて、お互いのことは何も言わずとも理解し合っているくらいに親睦を深めていた。
初めは関わる気がなかったマスター達とも、彼のおかげでそれなりに仲良くなった。
全て、彼のおかげだった。
あるレイシフトの最中の出来事だった。
襲撃を受け、マスター達と、僕とアーチャーがはぐれてしまった。
敵の数が思いの外多く、アーチャーは僕を庇って傷を負った。
僕は彼を抱え、一旦近くにあった洞窟に避難した。
アーチャーをゆっくりと地面に横たわらせる。
彼は、酷く傷だらけで荒く息をしている。
その様子に思わず顔が歪むのを感じた。
「っ、すま、ない……」
「何がだい」
「あなた、まで、巻き込んでしまっ、て」
彼は痛みに顔を歪ませながらも、こちらに向かって苦く笑う。
こんな時まで、気を遣わなくていいのに。
この男の優しさと面倒見のよさは、このカルデアに召喚されてから嫌というほどに見てきたし、体感してきた。
そして、他者には優しいくせに、自分自身にはとことん厳しいことも。
「……僕は巻き込まれたなんて思っていないよ」
「……ありがとう」
彼は、そう言って微笑む。
その柔らかな笑みに思わず心臓が跳ねる。
「っ、…礼を言われるようなことはしてないつもりなんだけど」
「ふふ、あなたは、優しいな」
時折苦しそうに息を詰まらせながらも、彼は笑う。きっと、僕に心配させまいと頑張っているんだろう。
全く、本当に優しすぎる。
だが、いつまでもこうしてはいられない。
このままでは彼の魔力は尽きてしまい、カルデアに強制帰還させられる。
一刻も早くマスター達と合流しなければならないが、今は連絡が取れる状態にない。
──つまり、『魔力供給』をしなければ彼はあと少しで消えてしまう。
選択肢は二つ。
一つ目は、このまま彼の魔力が尽きるのを待つ。
二つ目は、僕の魔力を彼に与える。
実質、選択肢なんて無いに等しい。
ここで一番レベルが高く戦闘に慣れている彼が消滅してしまえば、このレイシフトを成功させることはかなり厳しいだろう。未熟なサーヴァントと一人のマスターが残されるだけだ。
となれば、『魔力供給』をするしかない。
残念ながらというか幸いというか、僕も彼も正真正銘男だ。
成人男性二人。
僕は気にしなくても、アーチャーは気にするだろう。
こんな男とキスしなければならないなんて。
申し訳なく思うが、致し方ない。
「……アーチャー」
僕の呼び掛けにアーチャーは苦しそうに答える。
「っ、あぁ…」
「……先に謝っておく。すまない」
僕の言葉に目を瞬かせ、きょとんとした表情になるアーチャー。乱れた髪も相まっていつもよりも幼く見える。
「な、にを…?」
「このままでは君はマスターと合流するまで持たないだろう。だから、今から僕の魔力を君に渡す」
アーチャーは驚きに目を見開いて、小さく声を漏らした。
「え……」
「すまない。これしか方法がないんだ」
「…………」
彼も分かってはいたのだろう。
少し視線を彷徨わせ、沈黙する。
何も言わずにいると、彼は口を開いた。
「…あ、なたは、……その、いいのか…?」
小さな声だった。
それこそ、本当に僕にしか聞こえない程の小さなか細い声。
その声は、少し、震えていた。
あぁ、本当に、優しすぎる男だ。
こんな時でさえ、彼は他人の心配をする。
思わず、笑みがこぼれる。
「……君は?」
狡いとわかっていた。
こんな聞き方をするのは。
きっと、彼のことだから、否定も拒絶もしない。
「………あなたが、いいのなら」
ほら、やっぱり。
戸惑うように視線を彷徨わせながらも、その答えは揺るがない。
「……ごめんね」
口先だけに聞こえるかもしれない謝罪を、彼にだけ聞こえる声で小さく呟いた。
彼は、微笑むだけで、何も言わなかった。
そして、お互いの言葉を呑み込むように、ただ、唇を重ねた。
あの日以来、彼はあまり僕に話しかけなくなった。
いつもは絶対に相手の目を見て話す彼だが、こちらから話しかけてもすぐに目を逸らされてしまう。
まぁそれもそうだろう。魔力供給のためとはいえ、僕のような男からキスをされたら嫌いにもなると思う。
とはいえ、少しだけ、寂しく思わないこともない。
さて、どうしたものか。
部屋でそんなことを考えていると、控えめなノックが聞こえた。
マスターなら先に呼び出しの連絡が来るから、マスターではない。ならばサーヴァントの誰かということになる。
しかし、僕に用事のあるサーヴァントなんてほとんどいないだろう。
などと考えを巡らせていたら、扉の向こうから声が聞こえた。
「……アサシン、いるか?」
この声は。
「……アーチャーか?」
僕は驚きのあまり、頭で考える前に思わずそう返してしまう。
扉の向こうで息を呑む気配がした。
「……そ、の、入っても?」
「あ、あぁ」
彼の戸惑うような声音につられて、こちらまで緊張してしまう。
機械音と共に扉が開き、身体に沿った黒いインナー姿の彼が現れる。
戦闘時は上げられている僕と同じような白髪は、今は下ろされていて、戦闘時よりも幼い印象を与えている。
「……どうかしたかい?」
俯いたままで、目元は前髪で隠されているため、目の前の彼の表情は見えない。
やっぱりあの時のことで怒らせてしまったかなとか、もう二度と顔も見たくないと言われてしまうだろうかとか、様々な思考が頭の中をぐるぐると巡る。
二人きりの部屋でお互いに目も合わせず、口も開かない状況が続く。
──と、漸く彼が口を開いた。
「……その、あのときの、こと、なんだが」
あぁ、やっぱり。
納得と、罪悪感と、なんとも言えない感情が胸を締め付ける。
「……すまな」
「すまなかった!」
とりあえず謝罪しようとしたが、それは目の前の彼の謝罪によって遮られた。彼は綺麗に頭を下げている。
「え……」
思わず言葉にもならないような小さな声が溢れた。
「その、私のせいで、貴方に、…嫌な思いをさせてしまった」
何を言ってるんだ彼は。
全部こっちの台詞なんだが。
「……アーチャー、謝るのは此方の方だ」
「え?」
僕の言葉にアーチャーは顔を上げた。
その顔は驚きに染まっていて、見開かれた目からは鋼色が溢れそうなほど美しく輝いている。
「謝る、って、なにを……?」
心底不思議そうな表情の彼はさらに幼く見えて、非常に愛らしい。
「だって、嫌な思いをさせたのは僕の方だろう?致し方なかったとはいえ僕のような男とキスするなんて」
「そんなこと!」
またしても僕の言葉は彼に遮られた。
「あ、すまない!途中で遮るなんて…」
アーチャーはあわあわと忙しない。
「いや、構わないけど……『そんなこと』って?」
先程の彼の発言が気になり、問うてみると、アーチャーは頬を赤く染めて息を呑む。
「いや、その、あれは……」
こちらから顔を逸らし、視線を右往左往させ、しどろもどろになるアーチャー。
「………」
──ふと、ひとつの可能性に辿りつく。
有り得ない。
きっと。
僕の願望かもしれない。
きっと、違う。
でも。
もしかしたら。
「……ねぇ、アーチャー」
僕は彼の手を取る。
彼の肩がビクリと跳ねる。
握り締めた彼の手は、酷く冷たくて。
すり、となぞるように指を添わせると、またビクリと跳ねる。
彼の方が背が高いから、自然と僕は見上げる形になる。
彼は、必死に目を逸らそうとしていて。
でもその顔は、桃のように、林檎のように、甘く色づいていて。
空いている右手で、彼の頬に手を滑らせる。
また、跳ねる。
「……ねぇ」
触れた頬は熱くて。
目元をなぞるようにゆっくりと、親指で撫でる。
彼の目元に影を落とす白い睫毛は、長くて、美しい。
そして、宝石のような鋼色の瞳。
決して折れない、鉄の色。
「………アーチャー」
ふるりと、睫毛が揺れた。
彼の、鋼色が、こちらを。
「…………綺麗だ」
思わず口から零れ落ちたその言葉に、彼はまた頬を赤く染める。
「っ……」
口を引き結んで。
恐る恐るといった風に、ゆっくりと僕を見る。
引き結んだ口が、ゆっくりと開く。
真っ白で整った歯がちらりと見える。
「……あ、さしん」
舌足らずな、言葉を覚えたての子どものような、淡い響き。
ぞくりと、甘い電流のような刺激が背筋をつたう。
あぁ、まるで、いけないことをしてるみたいだ。
「……アーチャー、好きだ」
鋼色が、零れ落ちそうなほどに、大きくなる。
口はぽかりと開いたまま。
本当に幼い子どものようで、可愛い。
「好きなんだ」
確認をするように、また告げる。
彼は我に返ったのか、今度は顔を真っ赤に染め、また視線を右往左往させている。
その瞳は潤んでいて。
可愛いな、なんて。
逃げ腰になる彼の細腰に右手を回し、引き寄せる。
完全に気を抜いていたのか、彼は簡単に引き寄せられてくれた。
「うわっ……!」
よろめいてこちらに凭れ掛かるアーチャーをしっかりと受け止め、先程よりもかなり近くなった顔を覗き込む。
予想外の出来事に彼はさらに混乱しているらしい。
可哀想なほどに顔を赤らめ、瞳を潤ませている。
するり、と左手の指を首に沿わせ、ちょうど項あたりを軽くなぞる。
「ちょ、っと、まってくれっ……!」
「あぁ、いくらでも待つよ」
耳元で甘く囁く。
彼は小さく声を上げ、耳を手で押さえる。
「アサシンっ……!」
「ねぇ、君は?」
「っ……」
「僕のこと、どう思ってる?」
抗議するような彼の声を無視して、言葉を続けた。
狡い聞き方。
あの時と同じ。
知ってるだろう?
ごめんね、狡い男で。
受け入れてほしい。
でも、断ってほしい。
優柔不断で、どうしようもない僕の心は、そんな矛盾を抱えたまま、彼に想いを伝える。
「……教えてくれないか」
懇願するように、彼に縋るように。
彼の髪に指を通し、軽く触れるようにその白髪に口付ける。
「………わた、しも」
小さな声だった。
か細い声だった。
あの時と同じ。
違うのは、彼の鋼色の瞳が真っ直ぐ僕を見つめていて、その顔は真っ赤に染まっていること。
その瞳の奥には、紅く、熱い、炎が。
「私も、貴方のことが、……好きだ」
時が止まるような感覚、というのは、こういうことを言うのかと、初めて理解した。
多分今の僕の顔は酷く間抜けなんだろうと頭の片隅で思う。
「……ほんとうに?」
子どもみたいな返事だと自分でも笑ってしまうくらい、つまらない問い掛け。
「あぁ、本当だ」
未だに赤い顔をしながらも、鋼色の瞳は真っ直ぐこちらを見つめ、輝いている。
「……好きだ」
彼の顔が、綻ぶ。
その声は甘く、僕の耳朶を打つ。
「……あぁ、僕も」
彼の背中に手を回し、しっかりと抱き締める。
彼も、恐る恐るといった風にゆっくりとこちらに手を伸ばした。
普段は大人びているのに、こういうふとした仕草が幼い子どものようで。
どうしようもなく愛おしく感じてしまう。
「……今度は、魔力供給じゃないキスをしようか」
僕は、また、囁いた。
さ、最高でした…