【追跡事件簿】高齢者の性被害 実態見えず 「異性介助」も要因に 元准看護師の男に実刑判決
熊本市の病院で入院患者の高齢女性2人に性的暴行を加えたとして、元准看護師の男(28)が不同意性交などの罪で懲役7年の判決を受けた。男は他にも複数の高齢患者に同様の行為を繰り返したと認めたが、立件には至らなかった。識者は「高齢者の被害は認知症や身寄りがないなどの事情で表面化しにくい現状がある」と指摘する。
2月24日の熊本地裁判決によると、男は西区の病院で准看護師として勤めていた2023年6月、入院患者の80代女性に性的暴行を加えた。25年1月にも別の80代女性に性的暴行を加えて、その様子をスマートフォンで撮影した。被害者は認知症などを患っていた。
男は被告人質問で「仕事のストレスを発散するため犯行に及んだ」と答えた。カーテンを締め切った室内での犯行だったという。判決で裁判長は「被害者らが病気で意思表示ができないことにつけ込んだ。医療従事者としてあるまじき卑劣な犯行だ」と述べた。
熊本県警は昨年7月に男を逮捕し、押収したスマホに少なくとも十数人の高齢女性に性的暴行を加える動画や写真が残っているのを確認した。だが、起訴されたのは被害者2人についてだけ。捜査関係者は「性犯罪の立件は家族の協力も不可欠。被害者の中には既に亡くなった人もいて、立件のハードルは高かった」と明かした。
高齢者福祉に詳しく、介護サービスの質を第三者として評価している公益財団法人「Uビジョン研究所」(東京都)の本間郁子理事長は「介護現場での高齢者の性被害は実態が見えにくい。身寄りがなかったり、認知症だったりすると被害申告が難しい」と話す。
厚生労働省が高齢者虐待防止法に基づき全国の自治体を対象にした調査では、24年度に介護施設職員らに性的虐待を受けた高齢者は76人(熊本県内4人)。警察庁の統計によると、高齢者が被害に遭った不同意性交事件の認知件数は、25年は全国で29件だった。
本間理事長は、高齢者の入浴やトイレをサポートする介護・看護の現場では、男性が女性を、女性が男性を世話する「異性介助」が配慮なく行われる場合があり、性犯罪の要因になり得ると説明する。原則は同性による介護が望ましいが、現場の人手不足で難しいケースが多いという。
「高齢者は性被害に遭わない、という思い込みが多くの人にある」と本間理事長。厚労省の統計では介護施設での「性的虐待」は全体の3・4%だが、「氷山の一角に過ぎない」と話す。
40年には国内の65歳以上の高齢者は全人口の3割を占めると推計される。本間理事長は「誰もが高齢者になり、介護を受ける可能性がある。職場での職員教育だけでなく、行政も性的虐待を防ぐ制度を考える必要がある」と語る。(清水咲彩、小山智史)
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