<未踏の頂へ・’26センバツ北照>/下 主力投手の故障「自分が投げきる」 覚悟決めた新エース /北海道
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大和ハウスプレミストドーム(札幌市豊平区)の熱気が一段と高まる中、すごみを帯びたエースの表情は変わらなかった。 【写真特集】センバツ2026出場の32校決定 各校の喜び 昨秋の道高校野球大会初戦の北海戦。北照の先発・島田爽介(2年)は、高い制球力を生かして打たせて取るスタイルで、その年の夏の甲子園に出場した強敵を八回まで2安打無失点に抑えていた。 ところが5点リードの九回裏を前に右足をつった。直後に四球から4安打を浴びるなどして3点を返される。窮地に追い込まれた島田を支えたのは、ある覚悟だった。 その5日前。チームは大きなアクシデントに襲われていた。 ドームでの公式練習中に、右腕・中谷嘉希(同)が背中の痛みを訴えた。183センチの長身から最速149キロの速球で押す中谷は、チームでただ一人、夏の南北海道大会にも登板した主力投手だ。 投げられない状態ではなかったが、上林弘樹監督(46)は腹をくくった。「いけるところまで島田で」。島田も「中谷が投げられるようになるまで勝ち続ける」と心に決めた。 北海戦で九回に2点差まで追い上げられた島田は、なおも2死一、二塁のピンチで次打者を遊ゴロに仕留めて勝利をたぐり寄せた。重責を力に変えてみせた133球の熱投だった。 この1勝で勢いづいた島田は道大会全4試合で完投。13年ぶりの秋季大会制覇の立役者となった。 ◇ だが、ここに至るまでの島田の道のりも順風満帆ではなかった。 東京都葛飾区出身。泥臭く粘り強い野球にひかれて北照を選んだが、最初はランニングでチームメートについて行くのもやっとだった。投球もスタミナが切れると乱れがちで、1年の秋にメンバー入りするも、2年の春、夏はベンチ外に。ストライクが入らず、「投手をやめようか」と悩むこともあった。 転機は新チームが発足した昨夏。毎朝、寮からグラウンドまで約45分間の走り込みを続けて体を作った。食事もたんぱく質中心に切り替え、好物のシュークリームも封印。入学当時88キロあった体重を10キロ以上落とした。 ウエートトレーニングで筋肉量を増やし、昨年6月に22%だった体脂肪率は約3カ月で16%に。スタミナが向上し、球速も139キロまで上昇する一方、制球力にも磨きをかけていった。 小樽地区大会で10だった背番号は道大会で1に。元々、背番号へのこだわりはなかったというが、覚醒した右腕には「自分が投げきって勝つという意識に変わった」とエースの自覚も芽生えている。 そんな島田が信頼を寄せるのが、捕手の横堀倖世(2年)だ。寮で同室の2人は対戦相手の分析や配球の振り返りなど、日々のコミュニケーションを絶やさない。練習試合で打たれた球を巡って議論するなど、ぶつかることもあったが、「隠さずに言いたいことを言い合う」ことで考えをすりあわせてきた。 道大会決勝の白樺学園戦では島田のチェンジアップが狙われていると見抜いた横堀が配球を工夫。打撃でも九回に貴重な適時打を放って島田を助けた。 大黒柱の技巧派・島田を中心に、復調した速球派・中谷、右横手投げの尹悠人(同)ら多彩な投手陣を支える横堀は「層が厚く、全国でも通用する」と自信をのぞかせる。 ◇ もちろん、勝利の鍵を握るのはバッテリーだけではない。長谷川世和(同)、畠山柊太(同)ら勝負強い中軸がそろう野手陣も、さらなる成長を目指して力を磨いている。 冬場は例年通りウエートトレーニングや基礎練習に重きを置きつつ、昨年11月の明治神宮大会でミスが出た走塁を強化。機動力を生かした攻撃で知られる健大高崎(群馬)の元アドバイザー、葛原美峰さんを招いて特訓も受けた。 「全員で一つになれないと勝てない。全力を尽くして勝利したい」と主将の手代森煌斗(2年)。攻守両面から総合力に磨きをかけ、13年ぶりに乗り込むセンバツの舞台で名をとどろかせるつもりだ。【森原彩子】