なかつ なかつ
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不器用がお揃いのお返し

今回はこの作品の続編です!




3月14日。

朝5時、目が覚めた。

外はまだ暗い。でも、もう寝られない。

隣を見ると、美空が小さく寝息を立てていた。

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布団から少しだけ顔を出して、気持ちよさそうに眠っている。

髪が少し乱れていて、それがすごく可愛い。

今日は、大事な日だ。

ホワイトデー。バレンタインのお返し。

美空が一生懸命作ってくれたチョコレート。

あの時の美空の顔が、今でも目に焼きついている。

不安そうな顔。

震える手。

小さな声。

「このチョコ、受け取って、くれる、かな?」

消えそうなくらい小さな声で言った美空。

そして、受け取った時の、あの笑顔。

ほっとしたような、嬉しそうな、幸せそうな笑顔。

僕も、ちゃんと返したい。

美空が喜ぶものを。

美空が安心できるものを。

美空が、「あげてよかった」って思えるものを。

そっとベッドから出る。美空が起きないように、静かに。

着替えて、リビングに行く。

昨日の夜、色々調べた。

ホワイトデーのお返し。

買うのは簡単。

お店に行けば、綺麗なお菓子がたくさん売っている。

プロが作った、完璧なお菓子。

でも、それでいいのか。

美空は、手作りしてくれた。

初めてのお菓子作りで、一生懸命作ってくれた。

形が歪んでも、ラッピングがうまくできなくても、それでも作ってくれた。

なら、僕も手作りにしよう。

でも、何を作ろう。

クッキー? ケーキ? チョコレート?

色々調べて、クッキーにした。比較的簡単そうだし、失敗しても形になりそう。

美空を起こさないように、静かに家を出た。

ドアをそっと閉めて、外に出る。

朝の空気が冷たい。

でも、気持ちいい。

駅に向かって歩く。まだ人が少ない。

電車に乗って、街へ。

朝から開いている製菓材料の店を調べておいた。

駅から少し歩いた場所にある。

30分くらいで着いた。店はもう開いていて、中に入る。

店内は明るくて、色々な材料が並んでいる。

小麦粉、砂糖、バター、チョコレート。

色とりどりのトッピング。

可愛い型や道具。

何を買えばいいんだろう。

しばらく店内をうろうろする。

小麦粉だけでもたくさん種類がある。

薄力粉、強力粉、中力粉。

どれを使えばいいんだろう。

「何かお探しですか?」

店員さんが声をかけてくれた。

「あの、ホワイトデーのお返しを作りたいんですけど」

「手作りですか?」

「はい」

「素敵ですね。何を作る予定ですか?」

「クッキーを作ろうと思ってるんですけど、初めてで」

「初めてでございましたか!」

店員さんが優しく笑う。

「でしたら、こちらのセットがおすすめですよ」

店員さんが棚から、クッキー作りのセットを取ってくれた。

「これ、必要な材料が全部入ってるんです。小麦粉、砂糖、バターパウダー。卵だけ用意すれば作れます」

「これなら作れますか?」

「大丈夫ですよ。レシピも付いてますし、初めての方でもちゃんと作れます」

「ありがとうございます」

それから、型抜きを選ぶ。

ハート型、星型、丸型。色々ある。

ハート型と星型を選んだ。

美空が喜びそうな形。

ラッピング用の袋とリボンも選ぶ。透明な袋。ピンク色のリボン。

「お相手の方、きっと喜ばれますよ」

店員さんが笑顔で言ってくれた。

「そうだといいんですけど」

「大丈夫です。手作りって、気持ちが伝わりますから!」

「ありがとうございます」

レジで会計をして、店を出る。

袋を持って、駅に向かう。

袋の中身が、ずっしり重い。

これで、ちゃんと作れるだろうか。

電車に乗って、家に戻る。

時計を見ると、まだ朝の8時。美空はまだ寝てるかな。

家に着いて、そっとドアを開ける。

静かだ。

美空はまだ寝てるみたい。

リビングに材料を置く。

それから、寝室を覗く。

美空がまだ布団の中にいる。

こんな可愛い顔して気持ちよさそうに眠っている。

リビングに戻って、材料を確認する。

クッキーミックス、型抜き、ラッピング袋、リボン。

卵は冷蔵庫。

よし。

でも、いつ作ろう。

美空が起きてる時には作れない。

ばれちゃう。

そうだ。

美空、今日友達とランチに行くって言ってた。

確か、昼から夕方まで出かけるって。

その時に作ろう。

朝ごはんの準備をする。トーストとサラダ。コーヒーも淹れる。

9時頃、美空が起きてきた。

「おはよう♡」

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眠そうな顔で、でも笑顔。髪が寝癖でぼさぼさになってる。それがすごく可愛い。

「おはよう!美空」

「あれ、○○くんもう起きてたの?」

「うん。ちょっと早く目が覚めちゃって」

「そうなんだ♡」

美空がテーブルに座る。

「わあ、朝ごはん作ってくれたの?」

「うん」

「ありがとう♡」

美空が嬉しそうに食べ始める。

「美味しい〜♡」

「それならよかった」

二人で朝ごはんを食べる。

「そういえば、今日友達の桜とランチなんだ〜」

「そうなの?」

「うん。前から約束してて」

「何時くらいに帰ってくるかわかる?」

「夕方くらいかな?多分5時くらい!」

「わかった!」

美空が僕を見る。

「○○くん、今日は何するの?」

「んーまあ、家でゆっくりしようかな」

「そっか♡じゃあ、留守番お願いね」

「うん!」

美空がトーストを食べ終えて、コーヒーを飲む。

「ふう、美味しかった♡」

「おかわりいる?」

「ううん、大丈夫♡」

それから、美空は着替えて、準備を始める。

お昼前、美空が出かける準備を終えた。

「じゃあ、行ってくるね♡」

「いってらっしゃい」

「ちゃんとお昼食べてね?」

「うん」

「じゃあね♡」

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美空が手を振って、出ていく。

ドアが閉まる音。

静かになった。

よし。今だ。

リビングに材料を広げる。

袋から出して、テーブルに並べる。

クッキーミックス、型抜き、ラッピング袋、リボン。

冷蔵庫から卵を出す。

レシピを広げる。

まず、ボウルに卵を割り入れる。

それから、クッキーミックスを入れる。

混ぜる。

最初は粉っぽいけど、だんだんまとまってくる。

でも、思ったよりまとまらないなこれ。

レシピを見返す。

もっと混ぜる。

スプーンでぐるぐる混ぜる。

だんだん、生地っぽくなってくる。

でも、まだボロボロする。

手でこねてみる。

少しずつまとまってくる。

でも、ちょっと硬い気がする。

レシピには「耳たぶくらいの硬さ」と書いてある。

う〜ん、よくわからないなこれ。

でも、まあ、こんなものかな。

生地をラップに包んで、冷蔵庫に入れる。

レシピには30分寝かせると書いてある。

キッチンを片付ける。

使ったボウルやスプーンを洗う。テーブルの上も拭く。

それでも時間が余る。

ソファに座って、スマホを見る。

でも、集中できない。

ちゃんとできるだろうか。

美空は喜んでくれるだろうか。

バレンタインの時、美空はどんな気持ちだったんだろう。

きっと、こんな風に不安だったんだろうな。ちゃんと作れるかな、喜んでくれるかなって。

30分が経つのが、すごく長く感じる。

時計を何度も見る。

やっと30分経った。

冷蔵庫から生地を取り出す。

少し固まっている。

打ち粉をする、とレシピに書いてある。

テーブルに小麦粉を振る。生地を置く。

麺棒で伸ばす。

これが難しい。

最初、力を入れすぎて、生地が薄くなりすぎた。

慌てて元に戻す。

今度は優しく。

でも、優しすぎると伸びない。

力加減が難しい。

何度も麺棒を転がす。

少しずつ、薄く伸びていく。

5ミリくらいの厚さ、とレシピに書いてある。

定規で測ってみる。

だいたい5ミリくらい。

うん、まあ、たぶん、大丈夫。

型抜きをする。

ハート型を生地に当てて、ぎゅっと押す。

生地を持ち上げる。

成功。ハート型のクッキー生地ができた。

天板に並べる。

次は星型。これも成功。

調子に乗って、どんどん型抜きをする。

ハート、星、ハート、星。

生地がなくなってきた。

余った生地をまとめて、また伸ばす。

型抜きをする。

全部で25個くらいできた。

オーブンを予熱する。

レシピには170度と書いてある。

ボタンを押す。予熱が始まる。

待つ。

5分くらいで、ピッと音が鳴る。予熱完了。

天板を入れる。タイマーを15分にセットする。

オーブンの前に立って、中を見る。

クッキーが並んでいる。少しずつ色づいていく。

焦げないかな。生焼けにならないかな。

不安で、その場から動けない。

5分経った。まだ白い。

10分経った。少し色づいてきた。いい感じ。

そして、甘い匂いがしてきた。

バターの匂い。クッキーの匂い。

いい匂い。

でも、まだ焦げてない。大丈夫。

12分くらい経った時、急に色が濃くなってきた。

まさか焦げるのか

慌てて様子を見る。

でも、大丈夫。きつね色。ちょうどいい色。

15分後、タイマーが鳴る。

オーブンを開ける。

クッキーがきつね色に焼けている。

いい感じ。

でも、よく見ると、形が少し歪んでいる。

焼いている間に膨らんで、変形したみたいだ。

ハート型が、ちょっと丸っこくなっている。

星型も、角が丸くなっている。

それに、大きさもバラバラ。

最初に作ったクッキーは大きくて、後から作ったのは小さい。

ちょっと失敗したかな。

でも、まあ、仕方ない。

天板を出して、冷ます。

熱いから、触れない。

待つ。

10分くらい待って、クッキーを触ってみる。
まだ温かいけど、触れる。

固い。ちゃんと焼けてる。

一つ、味見をする。

サクッと割れる。

甘い。

バターの風味。

サクサクしている。

美味しい、と思う。

でも、美空はどう思うだろう。

喜んでくれるだろうか。

クッキーが完全に冷めるのを待つ。

その間、キッチンを片付ける。

使った道具を洗う。

散らばった小麦粉を拭く。

それでも、クッキーはまだ温かい。

ソファに座って待つ。

時計を見る。もう3時。美空が帰ってくるまで、あと2時間くらい。

クッキーを触ってみる。もう冷めてる。

よし、ラッピングしよう。

透明な袋を広げる。クッキーを一つずつ入れる。

割れないように、丁寧に。

全部入れた。袋の中に、クッキーがたくさん並んでいる。

袋の口を閉じて、リボンで結ぶ。

リボンを手に取る。ピンク色のリボン。

どうやって結ぶんだろう。

蝶々結び? 固結び?

とりあえず、蝶々結びにしてみる。

結ぶ。

でも、うまくいかない。リボンがほどけてしまう。

もう一回。

また失敗。リボンが曲がる。

何度も、何度も。

10回目くらいで、やっと形になった。

でも、少し曲がっている。リボンの片方が長くて、片方が短い。

美空のチョコレートも、リボンが曲がっていた。

あの時、美空は不安そうな顔をしていた。

「形が変で」「ラッピングもうまくできなくて」って。

僕も、今、同じ気持ちだ。

でも、美空は喜んでくれた。

だから、きっと、美空も僕の気持ちをわかってくれる。

そう信じる。

袋をテーブルの上に置く。

それから、ソファに座る。

待つ。

時計を見る。4時。あと1時間。

心臓がドキドキする。

美空は喜んでくれるだろうか。

笑ってくれるだろうか。

それとも、がっかりするだろうか。

不安で、落ち着かない。

スマホを見る。でも、何も頭に入ってこない。

テレビをつける。でも、集中できない。

ずっと、時計を見ている。

4時半。

5時。

そろそろかな。

5時10分。

ドアの音がした。

「ただいまー♡」

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美空の声。

心臓がバクバクする。

美空がリビングに入ってくる。

いつもの明るい笑顔。買い物袋を持っている。友達とショッピングもしたのかな。

「おかえり」

僕が立ち上がる。

「ただいま♡ あ、○○くん、今日ずっと家にいたの?」

「うん」

「そっか♡ 退屈じゃなかった?」

「全然」

美空が靴を脱ぐ。買い物袋を持ったまま、リビングに入ってくる。

「今日ね、桜とランチして、それからショッピングして……」

美空が話しながら、テーブルに買い物袋を置こうとして。

手が止まる。

「あ」

美空が見つめる。テーブルの上に置いてある、透明な袋。中にクッキーが入っている。ピンク色のリボンが少し曲がっている。

「これ……」

美空の声が、小さくなる。

僕の心臓が、バクバクする。手が震える。

でも、やるしかない。

袋を手に取る。

「美空」

「……ん?」

美空が僕を見る。その目が、少し驚いている。不思議そうな顔。

「これ」

袋を差し出す。

美空の目が、大きくなる。

「え……これ、まさか」

「ホワイトデー」

「……」

美空が黙って、袋を見つめる。

「受け取ってほしい。」

僕が言うと、美空がゆっくりと手を伸ばす。

買い物袋を床に置いて、両手を出す。

袋を受け取る。

その手が、震えている。

「手作り……?」

美空の声が、信じられないって感じだ。小さくて、震えている。

「うん」

「○○くんが?」

「うん」

美空が袋を見つめる。じっと見つめる。

リボンを触る。指でそっとなぞる。

クッキーを見る。ハート型、星型。少し歪んでいる。

「いつ……作ったの?」

「今日の昼。美空が出かけてる間」

「今日……?」

美空が僕を見上げる。

「そのために、朝早く材料買いに行って」

「朝……?」

「うん。美空が寝てる間に」

美空の目が、潤む。

でも、泣かない。

「開けてもいい?」

「うん」

美空がリボンに手をかける。

ゆっくり、ゆっくり。

まるで大切な宝物を扱うみたいに、丁寧にほどく。

リボンがほどける。

袋を開ける。

中を覗く。

「クッキー……」

美空の声が、すごく小さい。消えそうなくらい小さい。

「形が少し歪んでて」

僕が言いかけると、美空が首を横に振る。

「ううん」

「リボンもうまく結べなかったし、ラッピングも下手で」

「そんなことない」

美空が袋を、ぎゅっと抱きしめる。

胸に抱きしめる。

「すごく、嬉しい」

美空の声が震えている。

「すごく、すごく、嬉しい」

僕は何も言えない。ただ美空を見つめる。

美空が顔を上げる。

涙目だけど、笑っている。泣かない。

「○○くん、ありがとう」

「……喜んで、くれた?」

「うん」

美空が大きく頷く。何度も、何度も。

「すごく、嬉しい」

美空が袋をまた抱きしめる。

その姿が、愛おしくて、胸が熱くなる。目頭が熱くなる。

「食べていい?」

「うん。一緒に」

「うん♡」

美空がクッキーを一つ取り出す。

星型のクッキー。少し歪んでいる。角が丸い。

「可愛い」

美空が笑う。嬉しそうに笑う。

「可愛いよ、これ」

「そう?」

「うん。すごく可愛い」

美空がクッキーを見つめる。

「○○くんが作ってくれたんだ」

「うん」

美空がクッキーを一口齧る。

サクッという音。

美空が目を閉じる。ゆっくり噛む。味わうように。

「……」

美空が黙っている。

僕は不安になる。美味しくないのかな。

でも、美空が目を開ける。

「美味しい...!」

「本当に?」

「うん!」

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美空が僕を見る。その目が、キラキラしている。

「すごく美味しい」

「よかった」

ほっとする。胸をなでおろす。

美空がもう一口齧る。

幸せそうな顔で、ゆっくり食べる。

「○○くん、これ本当に初めて作ったの?」

「うん。初めて」

美空が目を丸くする。

「初めて? お菓子作り?」

「うん」

「すごい……」

美空がクッキーを見つめる。それから、僕を見る。

「私のために、初めてお菓子作ったの?」

「うん」

美空の目が、また潤む。

でも、泣かない。笑ってる。

「嬉しい」

美空の声が震える。

「すごく、嬉しい」

「座ろっか」

「うん」

ソファに並んで座る。

美空が隣に座る。いつもより近い。くっついて座る。

美空がクッキーを持っている。大事そうに。

「ねえ、○○くんも食べて」

「うん」

美空がクッキーを一つ取って、僕の口元に持ってくる。

ハート型のクッキー。ちょっと丸っこい。

「はい、あーん♡」

僕が口を開けると、美空が優しくクッキーを入れてくれる。

サクサクした食感。甘さ。バターの風味。

ちゃんと美味しい。

ほっとする。

「美味しい?」

美空が心配そうに聞く。

「うん。美味しい」

「よかった♡」

美空がほっとした顔で笑う。

それから、また自分もクッキーを食べる。

「本当に美味しい」

美空が幸せそうに笑う。

「○○くん、頑張ったんだね」

「まあ、色々失敗もしたけど」

「失敗?」

「うん。最初、生地がうまくまとまらなくて」

美空がくすっと笑う。

「私も同じだった」

「そうなの?」

「うん。生地、ボロボロになっちゃって、どうしようって思った」

「わかる。僕もそうだった」

「それでね、手でこねたら、なんとかまとまったの」

「僕も手でこねた」

美空が嬉しそうに笑う。

「一緒だね♡」

「うん」

「麺棒で伸ばすのも難しかったでしょ?」

「難しかった。力加減がわからなくて」

「私も。最初薄くなりすぎちゃって」

「僕もそうだった」

二人で笑う。

「ラッピングも、リボンがうまく結べなかったり」

「それも同じ」

美空が嬉しそうに笑う。

「お揃いだね♡」

「そうだね」

美空が僕の肩に頭を預けてくる。

温かい。柔らかい。

「手作りって、大変なんだね」

「うん。でも、楽しかった」

「私も」

美空がクッキーをもう一つ取る。

「このハート型、可愛い♡」

「ちょっと丸っこくなっちゃったけど」

「ううん、可愛いよ。むしろその方が好き」

美空が嬉しそうに食べる。

「ねえ、○○くん」

「ん?」

「私、バレンタインの時、すごく緊張してたの」

「うん。わかってた」

「わかってた?」

「うん。手、震えてたから」

美空が少し恥ずかしそうに笑う。

「バレバレだった?」

「ちょっとだけ」

「そっか」

美空が僕の服を掴む。

「あの時ね、本当に不安だったの」

「うん」

「ちゃんとできてるかな、喜んでくれるかなって」

美空が僕を見上げる。

「でも、○○くんが受け取ってくれて、喜んでくれて」

「うん」

「すごく嬉しかった」

美空が笑う。

「○○くんも、今日緊張してた?」

「……うん。すごく」

「やっぱり」

美空が笑う。優しく笑う。

「私も、○○くんの気持ち、わかるよ」

「ありがとう」

美空が僕の胸に顔を埋める。

「こうやって、お互いに作り合えて」

「うん」

「嬉しいね」

「うん」

しばらく、二人とも黙っている。

クッキーの甘い香り。美空の温もり。時計の音。

穏やかな時間。

「ねえ、○○くん」

「ん」

「もう一個食べていい?」

「全部食べていいよ。美空のために作ったんだから」

「ありがとう♡」

美空がクッキーを取る。

「でも、○○くんも一緒に食べてね」

「うん」

美空が僕にもクッキーを渡してくれる。

二人で一緒に食べる。

サクサクという音。甘い味。

「美味しい♡」

美空が満足そうに笑う。

「○○くんのクッキー、大好き」

その言葉が、胸に響く。嬉しくて、胸がいっぱいになる。

「ねえ」

「ん?」

美空が僕を見つめる。

「ホワイトデーって、お返しの日でしょ?」

「うん」

「バレンタインのお返し」

「うん」

「だから、ちゃんと気持ちを伝えたくて」

美空が少し照れたように笑う。

「私、○○くんがこうやって作ってくれて」

「うん」

「美空のために、初めてお菓子作ってくれて」

「うん」

「すごく嬉しかった」

美空が僕の手を握る。その手が温かい。

「○○くんにチョコあげてよかったって、心から思った」

「僕も、お返しできてよかった」

美空が嬉しそうに笑う。

それから、また僕の肩に頭を預ける。

「ねえ、○○くん」

「ん」

「美空たち、お揃いだね」

「お揃い?」

「うん。お互いに、初めてお菓子作って」

「そうだね」

「お互いに、形が歪んで」

「うん」

「お互いに、ラッピングがうまくできなくて」

「そうだね」

「でも、お互いに、一生懸命作った」

美空が僕を見上げる。

「お揃いだね♡」

「うん。お揃いだ」

美空が嬉しそうに笑う。

それから、また僕の胸に顔を埋める。

「ねえ」

「ん」

美空が顔を上げる。

その目がキラキラしている。

「ふふ……なんか」

「ん?」

「○○くんのこと」

美空が嬉しそうに笑う。

「もっと好きになっちゃった♡」

美空が笑いながら、僕の胸に顔を埋める。

僕は何も言えない。

ただ美空を抱きしめる。

胸がいっぱいで、言葉にならない。嬉しくて、愛おしくて。

「なんか、すごく嬉しくて」

美空が小さく笑う。

「○○くんが私のために、朝早く起きて」

「うん」

「材料買いに行って」

「うん」

「初めてお菓子作ってくれて」

「うん」

「一緒に食べて」

美空が顔を上げて、僕を見つめる。

「やっぱり好きだなって思った♡」

僕は美空の頭を撫でる。

言葉が出てこない。

ただ、美空を見つめる。

「僕も」

やっと声が出る。

「僕も、やっぱり好きだって思った」

美空が嬉しそうに笑う。

「うん♡」

美空が満足そうに目を閉じる。

僕は美空を抱きしめる。

リビングの窓から見える夜空は、バレンタインの夜と同じように、少しだけ特別に見えた。

クッキーの甘さと、美空の温もりと、この瞬間。

「ねえ、○○くん」

「うん」

「来年もこうしようね」

「うん」

「バレンタインも、ホワイトデーも」

「うん」

「二人で作り合おうね」

「うん」

「約束♡」

美空が満足そうに笑う。

僕は美空の頭を撫で続ける。

この温もりが、ずっと続けばいいのに。

「美空」

「ん?」

「……ありがとう」

「こちらこそ♡ ○○くん、ありがとう」

美空が僕の胸に顔を埋めたまま、小さく笑う。

それから、しばらく二人とも黙っている。

ただ、抱き合っている。

クッキーの甘い香りが、部屋に漂っている。

美空の温もりが、心地いい。

「ねえ、○○くん」

「ん?」

「このクッキー、明日も食べていい?」

「もちろん」

「やった♡」

美空が嬉しそうに笑う。

「明日の朝ごはんに食べよう」

「いいね」

「それから、おやつにも」

「うん」

「全部食べるまで、大事に食べる」

美空が満足そうに笑う。

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僕も笑顔になる。

ホワイトデーの夜は、甘くて、温かくて、少しだけ特別な時間になった。

バレンタインの時と同じように、お互いの気持ちを確かめ合えた夜だった。

手作りのお菓子を通して、お互いの想いが伝わった。

それが何より嬉しくて、幸せだった。

美空と一緒に過ごせる毎日が、こんなにも幸せなんだと、改めて感じた夜だった。

しばらくして。

クッキーの袋は、テーブルの上で少しだけ減っていた。

美空がさっきから「もう一個だけ♡」と言いながら食べているからだ。

「ねえ」

「ん?」

僕の胸に顔を埋めたまま、美空が小さく声を出す。

「これ、本当に○○くんが作ったんだよね?」

「うん」

「すごいなぁ」

美空がクッキーを見つめる。

「だって、朝材料買いに行って、初めて作って…」

美空がくすっと笑う。

「絶対いっぱい調べたでしょ?」

「まあ…ちょっとだけ」

「ちょっとじゃない顔してる♡」

美空が僕を見上げる。

その目が、すごく優しい。

「でもね」

「ん?」

「すごく○○くんっぽい」

「どういう意味?」

「形がちょっと歪んでるところ」

「それ悪口?」

「違うよ♡」

美空が笑う。

「一生懸命なところ」

そう言って、またクッキーを一口かじる。

「ちゃんと美味しいし」

サクッという音。

「でも、ちょっと不器用で」

もう一口。

「すごく○○くんらしい」

そう言って、美空は満足そうに笑った。

「だから好き」

僕は少し照れる。

「そんな褒められると恥ずかしい」

「褒めてるもん」

美空が肩に寄りかかる。

さっきよりも、少し体重を預けてくる。

「ねえ」

「ん?」

「○○くん」

声が少し甘くなる。

「今日さ」

「うん」

「朝からずっと、私のこと考えてた?」

「まあ…うん」

「ふふ♡」

美空が嬉しそうに笑う。

「わたしも」

「え?」

「今日ね」

美空がクッキーの袋を指でなぞる。

「桜とランチしてる時」

「うん」

「ホワイトデーどうなるかなって考えてた」

「そんなに?」

「うん」

美空が少し照れた顔をする。

「○○くん優しいから」

「うん」

「きっと何かしてくれるんだろうなって」

それから少し間があって。

「でも」

美空が僕を見る。

「こんなに嬉しいとは思わなかった」

その言葉に、胸がじんわりする。

美空が僕の服をきゅっと掴む。

「ねえ」

「ん?」

「わたしね」

少しだけ声が小さくなる。

「○○くんが作ってくれたって聞いた瞬間」

「うん」

「胸がぎゅってなった」

美空が自分の胸を押さえる。

「ここ」

「そんなに?」

「うん」

それから、少しだけ笑う。

「なんか」

「ん?」

「大事にされてるんだなって思った」

その言葉が、まっすぐ胸に届く。

僕は美空の頭を撫でる。

美空は気持ちよさそうに目を細める。

「○○くん」

「ん?」

「今日のホワイトデー」

「うん」

「今までで一番好きかも」

「そんなに?」

「うん♡」

美空がくすっと笑う。

「だってさ」

クッキーを一つ持ち上げる。

「これ、世界に一個だけのクッキーでしょ?」

「まあ、そうだね」

「私のために作ったやつ」

「うん」

「それを一緒に食べてる」

美空が幸せそうに笑う。

「最高じゃない?」

僕も笑う。

「そうだね」

美空が僕の肩にまた頭を乗せる。

静かな時間。

クッキーの甘い香り。

時計の音。

夜の静けさ。

「ねえ」

「ん?」

美空が小さく言う。

「来年も楽しみ」

「ホワイトデー?」

「うん」

美空が少し顔を上げる。

「○○くん、来年は何作るの?」

「もう来年?」

「うん♡」

美空がにやっと笑う。

「だって楽しみなんだもん」

それから少し考えて。

「でも」

「ん?」

「来年は私の方がすごいの作る」

「対抗してくるの?」

「うん」

美空が自信満々に言う。

「○○くんびっくりさせる」

「それは楽しみ」

「でしょ?」

美空が満足そうに笑う。

それから、僕の胸にもう一度顔を埋める。

「○○くん」

「ん?」

「やっぱりさ」

少しだけ声が柔らかくなる。

「美空ね、」

小さく笑う。

「○○くんのこと」

少しだけ間をあけて。

「大好き♡」

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僕は何も言わずに、美空を抱きしめた。

クッキーの甘い香りと、美空の温もり。

ホワイトデーの夜は、まだ静かに続いていく。

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