第169話 ナーリッツ君のやらかし

 俺は夜、風呂から上がって魔力量を上げるトレーニングをした後に、フジさんから譲ってもらったヤマト村で使われている農業資料に目を通していた。


 口伝で済ませてそうだと思っていたが、ヤマト村ではちゃんと書物に纏め、保管していて、その写しを今回譲ってくださった。


「やっぱり農業分野はヤマト村の方が先進的だな……凄いな……外部と隔離されていたのに、収穫量や味を良くするために品種改良にも積極的に取り組んでいるし……」


 小麦に関しても、ヤマト村では背丈が低く、穂が多い小麦が栽培されていた。


 小麦……いや、麦系って意外と成長すると丈が高くなるのである。


 前世の歴史の授業で緑の革命というのを習ったが、太平洋戦争で日本がアメリカに負けて、日本の小麦の品種がアメリカに持ち込まれ、それをアメリカの品種と交配したところ、背が低くて多く実る小麦が出来上がり、その品種が緑の革命で各地に配られたという流れがあった。


 緑の革命以後の小麦の丈の長さは60センチから80センチくらいであるが、それ以前の小麦は高い物だと1.5メートルくらいデカくなる。


 こっちに来てから小麦ってこんなに丈が高くなって、これっぽっちしか収穫できないのか……と落胆した事もあった。


「ヤマト村の小麦も収穫量が上がりそうだな」


 そんな事を考えていると、コンコンコンと部屋のドアが叩かれた。


「ん? 誰だ?」


「ヒナタです。あとランコ以外の皆も居ます。少しお話したいことが……」


「入っていいぞ」


「失礼します」


 入ってきたのは今うちに来ているくノ一エルフ達であった。


 ランコが居ない事に少し違和感を持ったが、まぁあまり気にしていても仕方がない。


「なんの用だ?」


「いえ……ナーリッツ様の財力に皆腰抜かしてしまって……あ、ランコはトレーニングのやり過ぎで胃もたれ起こして寝ています」


「あー、慣れないうちは量見誤るからな……しゃーないね」


 俺はせっかく来てくれたしとお茶を異空間から取り出そうとするが、コップだけ出してくれればとリンが竹筒に入れられた粉をコップに入れて、魔法でお湯を作り出して、粉末を溶かした。


「ヤマトの村でよく飲まれている抹茶です。お口に合うか分かりませんけど」


「ありがとう」


 俺は特に気にすることなく、抹茶を飲んでいくと、懐かしい味がした。


 上質な抹茶を使っているからか、苦味の中に美味しさと仄かな甘さを感じ取れる。


「毎日飲めるわけじゃないんですけど、眠気覚ましとかでうちの村では活用されていて」


「へぇ……」


 実に美味しい。


 せっかくだと思い、俺は抹茶に合いそうな菓子を異空間から取り出して、皆に振る舞う。


「よかったらどうぞ」


「た、食べても良いんですか?」


「ああ、せっかく来てくれていたし、明日にはランコにもあげるから気にせず食べてくれ」


 正直に言うと他所の貴族がミクの子供が産まれた時に贈ってきた焼き菓子である。


 多くの貴族が保存の効く焼き菓子を贈ってきたので、異空間内に結構な量が蓄えられていたので、偶に孤児の子供達に贈ったり、女性陣に振る舞ったりして消費していたのだが、なかなか減らなくて困っていたのである。


 ちょうど抹茶にも合いそうだし、これ幸いと彼女達に振る舞った。


 リン達はそれは嬉しそうに焼き菓子を食べるし、抹茶で口を潤している。


 雑談したり、せっかくだからとフジさんから譲られた農業資料の写しで意味が分からない部分を聞いていたりすると、徐々に思考がトロンとしてきて、下半身が熱くなってくる感覚に襲われた。


「はれ……」


 見るとリン達も顔が火照っているようで、なんか服を脱ぎ始めて下着になっていた。


 そのまま頭が回らないまま、なんだか楽しい気分になり、セクハラまがいの事をしたような感じがして……ベッドにダイブしてから記憶が途絶えた。









 翌朝、俺は起きると何故か全裸になっていて、周囲には寝息を立てて全裸で床やベッド、ソファーでぐったりしている女性陣……しかも股や周囲には白い液体が大量にこびりついているでは無いか。


「……昨日の記憶がほぼ飛んでるが……これは……やらかしたな」


 俺は自分の体をとりあえず洗浄の魔法で綺麗にし、服を着てからメアリーを念話ですぐさま招集するのだった。


「派手にやったねぇ……ナツ」


「本当にすみません」


「不倫だよ不倫! 僕良くないと思うなーこういうの」


「本当にごめん」


 俺は土下座し、額を床に擦り付けながらメアリーに謝罪する。


 しかし、昨日体が熱くなり、意識が徐々に朦朧となっていった事について説明すると


「盛られた?」


「かもしれん」


 薬を盛られた可能性が浮上してくる。


 俺は裸のくノ一エルフ達を叩き起こし、とりあえず体を洗浄して綺麗にしてから服を着せて、俺を含めてメアリーの前で正座する。


「まず先に聞いておくけど……薬盛ったでしょ」


 メアリーが女性陣にそう聞くと意外にも全員首を横に振った。


「あれ?」


 メアリーは読心術で確認をしているが、これでも反応しない。


 念話で確認を取る。


『どういうことだ?』


『わかんない……でも彼女達は薬はもってないよ』


 じゃあなんで俺の部屋を訪ねてきたのか聞いてみると、ヤマト村の事を考えてご機嫌取りをしに来たのがメインで、次点として男性への免疫を付けたかった、男性とお喋りしたかったと言う各々の目的があったらしい。


 それであばよくば性的な事に発展すれば良いなぁ程度に思っていたらしいが、薬を盛るとかはしていなかったし、なんか途中で俺がテンション上がってきて服脱ぎ出したし、彼女達も体が火照ってきて、薄着になっていったのは覚えているらしい。


 その後交わった時は皆記憶が飛んでいたっぽい。


『これ俺悪い可能性が出てきたか?』


『おやおや? ナツ……もしかして? 悪徳領主になっちゃった感じ? 領民に手を出すのは悪徳領主ムーブだよ! 僕らが革命する感じかな〜』


『本当にごめん』


 とりあえず彼女達は加害者では無く、被害者であることが確定し、じゃあ皆の記憶が飛んだのは何が原因であるのかと言う話へと変わる。


 次に呼ばれたのはアキであり、アキに頼んで自分達が口にしたコップと残った抹茶、それに俺が振る舞った焼き菓子を調査してもらった。


「ナツーなんで他の女性にも手を出すかなー」


「本当にごめんなさい」


 ちなみに俺と交わったくノ一エルフ達は記憶が飛んでいた事を凄い後悔していた。


「せっかく男性と良い思いができたのに!」


「記憶が無いなんてー!」


 初めてを失ったことよりも、交わった記憶が無いことの方が悔しいらしい。


 避妊薬を飲んでほしいと伝えたら、全員に拒否られた。


「避妊! とんでもない! 子供は絶対に産みますから!」


「養育は私達でやるのでナーリッツ様は気にしないでください!」


「そうそう! どうせ産まれてくる子供は私達の場合女の子だし」


 妊娠してるかも分からないが、彼女達は絶対に避妊しないと断言してしまった。


 結局シュネにもバレて


「価値観が違うし、彼女達の場合避妊できるような感じじゃないじゃん……ただ記憶が飛んでいるとしても交わったナツの責任大きいよ」


「すみません……」


 逆に褒めたのはラインハルトで、異文化交流並びに他のグループを繋がりを深めるなら婚約や子供を作ることが一番良い為よくやってくださいました! 


 と、ベタ褒めされた。


 俺の心境は滅茶苦茶である。


 アキの検査結果、原因は俺が振る舞った焼き菓子が問題だったらしい。


 俺は詳しく知らなかったが、子孫繁栄の為に精力剤となる成分を多く含む焼き菓子を贈るのが貴族の間では普通だったらしく、贈った貴族も良かれと思っているし、常識の範囲内。


 それを興奮作用を増加させる質の良い抹茶と合わせて飲んでしまった為に効果が高まり……行為に至ってしまったというのが判明したのだった。


「ナーリッツ様……妾でいいのでどうかお側に……」


 ダメとも言える雰囲気では無くなり、メアリー達には土下座して、彼女達を迎え入れることになるのだった。

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