light
pixiv's Guidelines will be updated on March 18th, 2026.
View details
The Works "カルデア感情論" includes tags such as "腐向け", "槍弓" and more.
カルデア感情論/Novel by 井形

カルデア感情論

19,983 character(s)39 mins

いいな いいな カルデアって いいな

ランサーから見たカルデアのマスターとアーチャーと概念礼装の話。

※注意※
・FGO時空
・真名、マイルーム会話、幕間、ボイス等ネタバレ多数
・SN(UBW)、HA(こちらはごく一部)の内容を含む
・息をするように捏造
 特に概念礼装(リミゼロ)について信じられないほど捏造しています。

 書いている人間はFGOから始めたド新規参入者なので、併せてご注意ください。

1
white
horizontal

 所変われば品変わる、とはよく言ったものだ。


 ランサーは知識として仕入れた慣用句を思い浮かべながら、頬杖の上に乗せた顎を意味もなく上下させた。
「何だ、腑抜けた面だな。槍でも失くしたか」
「叔父貴」
 隣の椅子が引かれ、その上に大きな質量がのしかかる。レイシフトから帰ってきた養父が空腹を抱えて食堂にやってくるのはいつものことであり、ランサーの姿を見つければ隣にやってくるのも常だった。どん、と乗せられた大きな丼の横には、ランサーが食べ終わった空の皿が横たわっている。
「いや、オレの槍は絶好調だが」
「夜の話か」
「違えよ。話振ってきたのそっちだろうが」
 夜の方も披露する機会がないだけで別に問題はないが、と話が膨らみそうになったところでフェルグスが立ち上がったので口を噤んだ。養父は台所の方までふらふらと歩いていき、何かを探すように辺りを見回している。
「おや、あの、赤いアレはどこだったか」
「一味ならそこの引き出しの中だ」
 老人のようなフェルグスの独り言に振り返りもせず、台所で作業をしていた赤いアーチャーは指を伸ばした。フェルグスは軽やかに礼を述べて調味料を手にし、またランサーの方へ戻ってくる。丼に容赦なく赤い粉をかけていく養父から視線を外し、ランサーはそれなりに広さのある台所の中を忙しなく動くアーチャーの背中を眺めた。
  立地条件故に時間感覚の乏しいカルデアだが、朝昼晩の食事は大切だというマスターの言葉により、その時間になると人間とサーヴァントを問わず自然と食堂に人が集まるようになった。食事はカルデアスタッフが用意しているものを拝借することが多かったが、人間と違って食事が必須ではないサーヴァントが備蓄を食い尽くしても困るということで、最近は自給自足が主となってきている。今日の昼食も種火を集める際についでに持ち帰ってきた獣の肉がメインだった。
  また、限られてはいるが、料理をするサーヴァントもいる。一応ランサーもそのメンバーの末席に名を連ねていた。得意不得意はあるにせよ、食糧が多く取れたときなど、メニューと呼べる程度に選択肢のある日すらある。その中でも主力となる褐色の肌に白髪の弓兵を、ランサーはよく知っていた。見飽きたと言ってもいい。戦闘の後そのまま台所に入ったのか、アーチャーの動きに合わせて揺れる腰の赤を目で追い、ランサーは鼻を鳴らした。自分の記録に残っている彼は気障で嫌味ったらしく、厭世的で戦い方にも誇りがない。やることなすこと気に食わず、徹底的に合わない人物。の、はずなのだが。
  食事の終わった皿を下げに来たサーヴァントと二言三言交わし、何の気負いもなく笑みを浮かべるアーチャーの横顔に、ランサーはもう一度がちり、と歯を合わせた。


  なんだか今度は随分、楽しそうだ。


  今回の人理修復のための召喚ではランサーの方が先に呼び出され、アーチャーがやって来たのはしばらく経ってからだった。召喚されたその日にカルデア内を案内しているマスターとアーチャーに出会い、恒例の言い合いを繰り広げたのは記憶に新しい。更にアーチャーが直接マスターに進言したのか、未だに同じチームになったことはない。自分たち以外にも相性の悪いサーヴァントの組み合わせはあるらしく、マスターは慣れた様子で無理に仲良くしろとは言わないよ、と笑った。
  あの赤い弓兵はよく見知った顔ではあるが、その正体が何なのかということは、実はよく分からない。エミヤという真名も、マスターが呼んでいるのを聞いて初めて知ったくらいだ。弓兵のくせに双剣を使い、防護の盾さえ繰り出してくる戦い方は見たことがないもので、何者かと問いただしたこともあるが、まともな答えは返ってこなかった。そういうところも気に食わない。
  もちろん、気に食わないから不幸になれ、と思っているわけではない。自分に迷惑がかからないのであれば、合わない相手がどう振舞おうと勝手だ。ただ、飽きるほど見た仏頂面がこうも簡単に解けるものかという驚きはあった。一体今までと何が違うというのか。
  サーヴァントとして召喚された以上、やるべき事は一つだ。マスターに従い、敵と見定められたものを倒す。もちろん他の全てのことに意味が無いとは思わない。召喚された時代に馴染んで生活を送るのは興味深く、また得意な方だという自覚もある。幸い今回のマスターは気持ちのいい奴だが、マスターによっては気が乗らない命令をぶつけられることも多々あった。しかし最終的に優先するべきものは、そして自分のあり方は、変わるものではないだろう。だとしたら、あの弓兵の浮かれようは何なのか。
「おい、クー・フーリン。いつまでぼけっとしてる。そんなに暇なら腹ごなしに付き合ってくれ」
 あっという間に丼を平らげたフェルグスがランサーの頭をはたく。遠慮のない殴打に頭を押さえながらもおう、と返事をして、ランサーは根を張っていた椅子から立ち上がった。空になっていた二人分の食器と調味料を持って返却台へと向かい、洗い物で溢れた台の隙間にねじ込む。乱暴にしたつもりはなかったが、触れた食器同士がむずかるように震えた。すかさずこちらへ向けられた鋭い視線に、ランサーは思わず両手を挙げる。
「倒してねえぞ」
「見れば分かる」
 肩を竦めて洗い物に戻るアーチャーをこれ以上刺激しないよう、静かに赤い粉を引き出しに戻し、ランサーはアーチャーの生真面目な横顔を見つめた。
  ふと、先ほどのサーヴァントと話していた時の表情を思い出す。あいつは何と言っていたんだったか。
「何をしている。後ろが詰まっているぞ」
 弓兵は再び顔を上げ、訝しげに眉を寄せてランサーに声をかけた。
「アーチャー」
「何だ」
「ごちそうさん、また頼むわ」
 いつもの応酬に向けて口を開いていたアーチャーの顔が固まる。何度か瞬きをする間にこちらを疑うような目も向けられたが、結局彼はため息をついて首を振った。
「どういたしまして」
 おや、とランサーが素直なやり取りに目を丸くしたのもつかの間、赤い弓兵はわざとらしく片目をつぶって言葉を続ける。やけに慣れている様子の仕草に、青い槍兵の眉がぴくりと反応した。
「次はもっと良い獲物を捕獲していただきたいものだ」
 そしてランサーは手で虫を払うように退去を命じられる。ランサーはそれ以上何も言わずさっさと踵を返し、養父の元へと向かいながら、なるほど、と頷いた。


 やっぱり、気に食わない。




 相性が良くない再確認はできたが、弓兵の変わりようの理由は分からないままだ。トレーニングルームで散々暴れまわり、アーチャーの態度への鬱憤を晴らしたはずのランサーは、自室への帰路を辿りながら再び同じ疑問へと立ち返っていた。今の状況下では弓兵の機嫌についてより考えるべきことは星の数ほどあるはずだが、カルデアにおける頭脳労働のいくらかはキャスタークラスの自分が担当しており、そもそも頭より体を使う方が性に合っている自分としては手が出せない部分だ。いやまあ、だからといってあの男のことを考える必要もないんだが、と堂々巡りになってきたところでランサーはため息をついた。こんな思考に意味はない。料理をするのが相当好きなんだ、だから機嫌がいい。それでいいだろう。それに記録をひっくり返してみれば、どうやら人の釣りに乱入してきたりプールでゲームを始めたり、なんだかんだはしゃいでいることはあったらしい。そう、こんなのは大した話ではないのだ。
  とりあえずの着地点を見つけ大きく伸びをしたところで、あちらに見えるのがクー・フーリンですと観光名所のような紹介を受け、ランサーは立ち止まる。声がした方を見れば、マスターが新しく召喚したサーヴァントたちのカルデア案内をしているところだった。真名をあっさりバラされるのにも慣れたなと思いながらランサーは軽く手を挙げて挨拶を済ます。
 召喚を行う度に行われるツアーは恒例となり、マスターの喋りも随分と流暢になっているのがおかしかった。ランサーはぞろぞろと歩く一団とすれ違う時にふと見覚えのある赤髪を見かけ、横目で追うと相手も同じようにこちらを見ていた。どことなくぼんやりとした輪郭に、ああ概念礼装なのかと頷く。記憶にあるより幾分年嵩の青年は真っ直ぐこちらを見つめ、久しぶりとでも言うように頬を掻きながら笑った。



Comments

  • わんわんお
    July 11, 2024
  • July 14, 2022
  • ぷよん

    概念礼装とアーチャー、二人とも無茶苦茶かわいいじゃないですか……‼‼

    June 25, 2017
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags