全国新幹線鉄道整備法
第一章 総則
この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。
この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。
新幹線鉄道の路線は、全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであつて、第一条の目的を達成しうるものとする。
第二章 新幹線鉄道の建設
国土交通大臣は、鉄道輸送の需要の動向、国土開発の重点的な方向その他新幹線鉄道の効果的な整備を図るため必要な事項を考慮し、政令で定めるところにより、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線(以下「建設線」という。)を定める基本計画(以下「基本計画」という。)を決定しなければならない。
国土交通大臣は、建設線について、その営業を行う法人(以下「営業主体」という。)及びその建設を行う法人(以下「建設主体」という。)を指名することができる。
前項の規定による営業主体及び建設主体の指名は、建設線の区間を分けて行うことができる。
国土交通大臣は、第一項の規定により営業主体の指名をしようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、指名しようとする法人に協議し、その同意を得なければならない。
第一項の規定により営業主体又は建設主体として指名しようとする法人は、その営業又は建設を自ら適確に遂行するに足る能力を有すると認められるものでなければならない。
国土交通大臣は、前項の規定により行為制限区域を指定しようとするときは、あらかじめ、当該新幹線鉄道の建設主体の意見を聴かなければならない。
国土交通大臣は、第一項の行為制限区域の指定に関し必要があると認めるときは、建設主体に対し、必要な資料の提出を求めることができる。
国土交通大臣は、第一項の規定により行為制限区域を指定するときは、国土交通省令で定めるところにより、当該行為制限区域を公示し、かつ、これを表示する図面を一般の縦覧に供しなければならない。
国土交通大臣は、第一項の規定により指定した行為制限区域に係る新幹線鉄道の建設の工事が完了したときは、すみやかに、当該行為制限区域の指定を解除し、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。
工事の完了前において当該行為制限区域を存続させる必要がなくなつたと認めるときも、同様とする。
前条第一項の規定により指定された行為制限区域内においては、何人も、土地の形質を変更し、又は工作物を新設し、改築し、若しくは増築してはならない。
ただし、非常災害のため必要な応急措置として行なう行為及び政令で定めるその他の行為については、この限りでない。
前項の規定による行為の制限により損失を受ける者がある場合においては、建設主体は、その者に対して通常受けるべき損失を補償しなければならない。
前項の規定による損失の補償については、建設主体と損失を受けた者とが協議しなければならない。
前項の規定による協議が成立しないときは、建設主体又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条の規定による裁決を申請することができる。
第五条第一項の規定による国土交通大臣の指名を受けた法人若しくは建設主体又はその委任を受けた者は、新幹線鉄道の建設に関する調査、測量又は工事のためやむを得ない必要があるときは、その必要の限度において、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を材料置場若しくは作業場として一時使用することができる。
第一項の規定により建築物が所在し、又はかき、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があつた場合を除き、前項に規定する土地に立ち入つてはならない。
第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を材料置場又は作業場として一時使用しようとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その意見をきかなければならない。
土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入り又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。
前条第二項から第四項までの規定は、第一項の規定による立入り又は一時使用により損失を受けた者の損失補償について準用する。
第五項に規定する証明書の様式その他必要な事項は、国土交通省令で定める。
機構が行う新幹線鉄道の建設に関する工事に要する費用(営業主体から支払を受ける新幹線鉄道に係る鉄道施設の貸付料その他の機構の新幹線鉄道に係る業務に係る収入をもつて充てるものとして政令で定めるところにより算定される額に相当する部分を除く。)は、政令で定めるところにより、国及び当該新幹線鉄道の存する都道府県が負担する。
都道府県は、その区域内の市町村で当該新幹線鉄道の建設により利益を受けるものに対し、その利益を受ける限度において、当該都道府県が前項の規定により負担すべき負担金の一部を負担させることができる。
前項の規定により市町村が負担すべき金額は、当該市町村の意見を聴いた上、当該都道府県の議会の議決を経て定めなければならない。
営業主体と建設主体が同一の法人である場合において建設主体に対する第八条の規定による建設の指示が行われたときは、当該指示に係る建設線の区間について、当該法人は、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第三条第一項の規定による第一種鉄道事業の許可を受けたものとみなす。
営業主体と建設主体が異なる法人である場合において建設主体に対する第八条の規定による建設の指示が行われたときは、当該指示に係る建設線の区間について、建設主体が機構以外の法人である場合にあつては、営業主体は鉄道事業法第三条第一項の規定による第一種鉄道事業(建設主体が当該建設線を営業主体に使用させようとするときは、第二種鉄道事業)の許可を受け、建設主体は同項の規定による第三種鉄道事業の許可を受けたものとみなし、建設主体が機構である場合にあつては、営業主体は同項の規定による第一種鉄道事業の許可を受けたものとみなす。
建設線の建設については、鉄道事業法第七条から第九条までの規定は、適用しない。
建設線については、鉄道事業法第十条第一項中「工事の施行の認可の際国土交通大臣の指定する工事の完成の期限までに、鉄道施設の工事を完成し、かつ」とあるのは「鉄道施設の工事が完成したときは」と、同条第二項中「工事計画」とあるのは「全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)第九条第一項の認可を受けた工事実施計画」とする。
営業主体及び第二項の規定により第三種鉄道事業の許可を受けたものとみなされる建設主体は、当該建設線の営業が開始される前に、国土交通省令で定めるところにより、鉄道事業法第四条第一項第六号に規定する事業基本計画に相当する計画を定め、国土交通大臣に届け出なければならない。
この場合において、当該建設線の営業が開始されたときは、当該届出に係る計画は、当該建設線に係る同号に規定する事業基本計画とみなす。
国土交通大臣は、次に掲げる事項について、交通政策審議会に諮問しなければならない。
基本計画の決定及びその変更に関する事項
第六条第一項の規定による営業主体又は建設主体の指名に関する事項
整備計画の決定及びその変更に関する事項
第三章 新幹線鉄道の大規模改修
国土交通大臣は、新幹線鉄道を所有し、かつ、その営業を行う法人(以下「所有営業主体」という。)であつて、当該新幹線鉄道の一の路線のうち当該所有営業主体が所有し、かつ、営業を行う区間の営業の開始の日から経過した期間及び当該区間における車両の走行の実績並びに当該所有営業主体の財務の状況その他の事情を勘案して当該区間の大規模改修の実施に要する費用の支出に備えるため第十七条第一項に規定する新幹線鉄道大規模改修引当金を積み立てることが必要かつ適当であると認めるものを、当該区間を明らかにして指定することができる。
前項の「大規模改修」とは、新幹線鉄道に係る鉄道施設であつて車両の走行が直接その機能の低下をもたらすもののうち国土交通省令で定めるものの取替え又はこれと同等の効果を有すると認められる方法による改修に関する工事であつて、当該新幹線鉄道の一の路線のうち所有営業主体が所有し、かつ、営業を行う区間の全部にわたり行われ、着手から完了までの期間がおおむね十年以内であるものをいう。
前条第一項の指定を受けた所有営業主体(以下「指定所有営業主体」という。)は、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した新幹線鉄道大規模改修引当金積立計画(以下「引当金積立計画」という。)を作成し、国土交通大臣の承認を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。
実施すべき大規模改修(前条第二項の大規模改修をいう。以下同じ。)に要する期間及び費用の総額(国土交通省令で定めるところにより算定した金額をいう。)
次条第一項の規定により積み立てるべき新幹線鉄道大規模改修引当金の積立期間及び総額
前項の引当金積立計画には、工事方法その他国土交通省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。
国土交通大臣は、第一項の承認をした引当金積立計画が大規模改修の実施に要する費用の支出に備える上で不適当なものとなつたと認めるときは、指定所有営業主体に対し、その変更を命ずることができる。
所有営業主体は、大規模改修を実施しようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、路線名、工事の区間、工事方法その他国土交通省令で定める事項を記載した新幹線鉄道大規模改修実施計画(以下「大規模改修実施計画」という。)を作成し、これを国土交通大臣に提出して、その認定を受けることができる。
当該大規模改修実施計画に記載された改修が大規模改修であること。
当該大規模改修実施計画が鉄道営業法(明治三十三年法律第六十五号)第一条の国土交通省令で定める規程に適合するものであること。
第十二条の規定は、認定所有営業主体又はその委任を受けた者が大規模改修を行う場合について準用する。
認定所有営業主体が大規模改修を実施するに当たり鉄道事業法第十二条第一項の認可を受け、又は同条第二項の規定による届出をしなければならない場合においては、当該認定所有営業主体は、これらの規定による認可を受け、又は届出をしたものとみなす。
国土交通大臣は、認定所有営業主体が正当な理由なく大規模改修実施計画(第十九条の規定により大規模改修実施計画を変更したときは、その変更後のもの)に記載された大規模改修を当該大規模改修実施計画に従つて実施していないと認めるときは、当該認定を取り消すことができる。
第四章 雑則
この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、国土交通省令で定める。
第五章 罰則
第九条第一項の規定に違反して建設線の建設を行い、又は工事実施計画を変更した者(機構を除く。)は、百万円以下の罰金に処する。
機構が第九条第一項の規定に違反して建設線の建設を行い、又は工事実施計画を変更した場合には、その違反行為をした機構の役員又は職員は、百万円以下の罰金に処する。
この法律は、公布の日から起算して一箇月を経過した日から施行する。
ただし、附則第五項の規定による改正後の新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法の規定は、この法律の施行の際現に日本国有鉄道が営業を行つている東京都と大阪府とを連絡する新幹線鉄道以外の新幹線鉄道については、それぞれ、営業を開始する政令で定める区間ごとに、政令で定める日から適用する。
この法律の施行の際現に日本国有鉄道が営業を行なつている東京都と大阪府とを連絡する新幹線鉄道及びこの法律の施行の際現に日本国有鉄道が建設を行なつている大阪市と福岡市とを連絡する新幹線鉄道は、この法律による新幹線鉄道とする。
この法律の施行の際現に日本国有鉄道が建設を行なつている大阪市と福岡市とを連絡する新幹線鉄道の建設については、第五条から第九条まで及び第十四条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
国土交通大臣は、新幹線鉄道の整備に関する諸事情を踏まえ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の一部を暫定的に構成する新幹線鉄道に準ずる高速鉄道を整備することにより高速輸送体系の形成に資するため、当分の間、第八条の規定による建設の指示を行つた建設線の全部又は一部の区間について、政令で定めるところにより、次に掲げる新幹線鉄道規格新線及び新幹線鉄道直通線(以下「新幹線鉄道規格新線等」という。)の建設に関する整備計画(以下「暫定整備計画」という。)を決定することができる。
新幹線鉄道直通線
既設の鉄道の路線と同一の路線にその鉄道線路が敷設される鉄道であつて、その鉄道線路が新幹線鉄道の用に供されている鉄道線路に接続し、かつ、新幹線鉄道の列車が国土交通省令で定める速度で走行できる構造を有するもの
暫定整備計画に係る新幹線鉄道規格新線等の営業及び建設は、それぞれ、当該暫定整備計画に係る建設線の営業主体である法人(前項第二号の新幹線鉄道直通線にあつては、当該既設の鉄道の路線について鉄道事業法第三条第一項の規定による第一種鉄道事業の許可を受けている者)及びその建設主体である機構が行うものとする。
国土交通大臣は、附則第六項の規定により暫定整備計画を決定したときは、機構に対し、暫定整備計画に基づいて当該新幹線鉄道規格新線等の建設を行うべきことを指示しなければならない。
暫定整備計画を変更したときも、同様とする。
機構は、附則第九項の規定による指示により新幹線鉄道規格新線等の建設を行おうとするときは、暫定整備計画に基づいて、工事の区間、工事方法その他国土交通省令で定める事項を記載した新幹線鉄道規格新線等の工事実施計画を作成し、国土交通大臣の認可を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。
第九条第二項から第五項までの規定は、前項の工事実施計画について準用する。
この場合において、同条第三項中「建設主体(営業主体である建設主体を除く。第五項において同じ。)」とあり、及び同条第五項中「建設主体」とあるのは「機構」と、同条第三項及び第五項中「第一項」とあり、並びに同条第四項中「建設主体が機構である場合において第一項」とあるのは「附則第十一項」と、同条第三項及び第五項中「営業主体に」とあるのは「新幹線鉄道規格新線等の営業を行う者に」と、同条第四項中「第十三条第一項」とあるのは「附則第十三項において準用する第十三条第一項」と、「新幹線鉄道」とあるのは「附則第六項に規定する新幹線鉄道規格新線等(以下単に「新幹線鉄道規格新線等」という。)」と読み替えるものとする。
第十条及び第十一条の規定は附則第十一項の規定による認可に係る新幹線鉄道規格新線等の建設に要する土地に係る行為制限区域の指定及びその解除並びに当該行為制限区域内における行為の制限について、第十二条の規定は当該新幹線鉄道規格新線等の建設のため必要となる他人の土地への立入り又はその一時使用について、第十三条及び第十三条の二の規定は当該新幹線鉄道規格新線等の建設に関する工事に要する費用の負担その他必要な措置について準用する。
この場合において、第十条第一項及び第五項、第十二条第一項、第十三条第二項及び第四項並びに第十三条の二中「新幹線鉄道」とあるのは「新幹線鉄道規格新線等」と、第十条第二項中「当該新幹線鉄道の建設主体」とあり、並びに同条第三項、第十一条第二項から第四項まで及び第十二条第一項中「建設主体」とあるのは「機構」と、第十三条第一項中「新幹線鉄道の」とあるのは「新幹線鉄道規格新線等の」と、「新幹線鉄道に係る業務」とあるのは「新幹線鉄道及び新幹線鉄道規格新線等に係る業務」と、第十三条の二中「前条第一項」とあるのは「附則第十三項において準用する第十三条第一項」と読み替えるものとする。
第十四条第五項から第七項までの規定は、暫定整備計画に係る附則第六項第一号の新幹線鉄道規格新線について準用する。
この場合において、同条第六項中「第九条第一項」とあるのは「附則第十一項」と、同条第七項中「営業主体」とあるのは「新幹線鉄道規格新線等の営業を行う者」と読み替えるものとする。
暫定整備計画に係る附則第六項第二号の新幹線鉄道直通線の建設については、鉄道事業法第七条から第九条まで及び第十二条の規定は、適用しない。
附則第七項の規定により附則第十五項の新幹線鉄道直通線の営業を行う者は、その営業が開始される前に、国土交通省令で定めるところにより、当該新幹線鉄道直通線に係る既設の鉄道の路線について受けている鉄道事業法第三条第一項の規定による第一種鉄道事業の許可に係る同法第四条第一項第六号に規定する事業基本計画を変更し、国土交通大臣に届け出なければならない。
この場合において、当該新幹線鉄道直通線の営業が開始されたときは、当該届出に係る事業基本計画の変更は、同法第七条第一項の認可を受けたものとみなす。
暫定整備計画に係る新幹線鉄道規格新線等は、この法律による新幹線鉄道とみなして、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法(平成十四年法律第百八十号)その他の政令で定める法律の規定を適用する。
附則第六項から前項までに定めるもののほか、暫定整備計画に係る新幹線鉄道規格新線等の営業及び建設に関し必要な事項は、政令で定める。
機構が附則第十一項の規定に違反して新幹線鉄道規格新線等の建設を行い、又は工事実施計画を変更した場合には、その違反行為をした機構の役員又は職員は、百万円以下の罰金に処する。