世界初、南米で「昆虫」に法的権利を承認。受粉の8割を担うハチを守る
世界初、南米で「昆虫」に法的権利を承認。受粉の8割を担うハチを守る
山、川、大地が法廷に立つ──そんなことが、起きうる世界になりつつある。人権が認められるのと同様に、木々や海、動物、山といった生態系にも法的な権利を認める「自然の権利(Right of Nature)」の考え方が着実に広がっているのだ。 例えば2025年1月には、先住民マオリ族の考えを反映してニュージーランド・タラナキ山が法的な人格を獲得。これによりタラナキ山は、人間と同様に代理人を通じて法的措置を講じることが可能となり、不当な開発や環境破壊が行われた際に、訴訟を起こすことができるようになった。 その新たな一歩として2025年10月、ペルーのアマゾン奥地に位置するサティポ市で「ハリナシバチ(Stingless Bees)」を法的な主体として認める条例が可決された。昆虫に法的な権利を認めるのは、世界で初めての事例である。この動きはその後、北東部のナウタ市にも波及し、同年12月に同様の条例が承認されている。 これまで「自然の権利」といえば、川や山などの事例が多く、権利獲得の議論となるのもイルカなどの哺乳類が中心だった。しかし今回光が当たったのは、生態系を支える小さな立役者たち・昆虫であった。 ハリナシバチは、世界最古のハチの一種で、約500種のうちおよそ半数がアマゾンに生息。ペルーには少なくとも175種が生息し、カカオ、コーヒー、アボカドなどの作物を含む植物の80%以上の受粉を担っている(※1)。森林の生態系において不可欠な働きをしているのだ。 そんなハリナシバチに対し、今回の条例は「生存する権利」「個体数を維持・再生する権利」「農薬や森林伐採によって汚染されていない生息地で暮らす権利」などを保障する(※2)。これにより、除草剤や殺虫剤の無差別な使用が制限され、彼らの生態系を守るための法的な根拠が生まれたことになる。さらに、人間がハチの代理人として訴訟を起こすことも可能になった。