記事のポイント
①容疑者の通話を警察が聞く「通信傍受」が裁判で争点に
②日常会話や弁護士との通話が傍受された
③制度ができた当初から懸念があった
警察が、容疑と関係のない家族らとの電話の通話を傍受し続けた――。東京地裁で審理中のある事件で弁護側がそう訴え、警視庁による「通信傍受」が違法だったかが争われている。16日にある判決で、地裁がどう判断するかが注目される。
違法な傍受がされたと主張する男性被告(37)は「土地取引をめぐる詐欺組織の統括役」として組織犯罪処罰法違反の罪に問われた。「統括役ではなく、メンバーと共謀もしていない」として無罪を訴えている。
警視庁は逮捕前の2018年9月の15日間、詐欺行為や共犯者の特定に関わる通話を対象として、裁判所から令状をとって、被告の通話を傍受した。
捜査員「詐欺の話題になるかもと」
通信傍受法は、容疑との関連がわからない通話も必要最小限なら傍受できると定める。被告の通話には、数分傍受すると自動的に中断し、しばらくすると再び始まる「スポット傍受」がされた。国家公安委員会規則は、関連がないと明らかな場合は「直ちに終了しなければならない」とする。
傍受の録音は全て裁判所に保管し、傍受終了後は当事者に通知される。被告側が録音を確認すると、通話のほとんどは、パートナーの女性との「エサをやり過ぎたせいで金魚が死んだ」といったけんかやその息子との通話、飲食店への予約や、仕事のやりとりなどだった。
弁護士との通話も傍受されていた。同法は弁護士との通話の傍受を認めていない。担当した捜査員は公判で「弁護士だと判断がつかなかったのかもしれない」と説明。日常会話の傍受については「詐欺の話題が発生するかもしれないと考えた」などと述べた。
弁護側によると、傍受された784件の通話のうち、捜査員の判断で傍受を中断したのはホテルやスポーツジムの予約の電話などわずか5件にとどまったという。
弁護側「重大な違法にあたる」
判例により、捜査機関が証拠を集めた過程に「重大な違法」がある場合、裁判所はその証拠を採用できないとされる。弁護側は公判で、明らかに容疑と関係ない傍受が続いたのは「重大な違法」にあたると主張し、検察側が証拠請求した傍受内容の一部の文字起こしを、証拠から排除するよう地裁に求めている。
弁護人の高野隆弁護士は公判で、「法律を(警察が)真面目に守る気があるか疑問。安心して日常生活で会議や通話ができなくなる。日本をそういう社会にしてはいけない」と訴えた。
検察側は、結果的に容疑と関係ない通話があっても違法ではないと反論している。
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