20校以上が誘った“ある有望中学生”の争奪戦「両親との面談で“一枚の紙”を渡した」山口の私立・高川学園への進学を決断させた“その内容”
超有望選手でも“お客様”ではない…
熱心に勧誘すればするほど、指導者と選手の関係が狂うケースも少なくない。数ある選択肢から選んでくれた“お客さま”のようになるパターンだ。 そうあっては木下のためにも、チームのためにもならないと、折を見て厳しい言葉をかけてきた。象徴的だったのは、1年秋の投内連係の練習だ。カバーリングでミスをした木下に、西岡が理由を問うと、「わかりません」を連呼したという。 「ずっと主力でやってきた分、みんなの前で怒られることへの抵抗というか、プライドもあったんでしょうね。聞き方を変えても、考えることを諦めて、『わかりません』しか言わなかったので。その返事はなんや、とか根本的なことでしたけど、結構強く言いました。でも、チームとして日本一になりたい、彼は高卒でプロに行きたい。チームとして過去にないことに挑戦する“同志”なので、そこに遠慮があったらいけないし、伝わるとも思っています。木下も最終的には意図をわかってくれましたね」 木下の心をつかんだ育成計画書。西岡らスタッフの「こう育ててみせる」という覚悟の表れであると同時に、幾分かの“願望”も込められていたように思う。
高卒プロの条件「最速150キロ」
ただ、高校ラストシーズンを迎える今、改めて書いてある内容を振り返ると、驚くほど順調に来ていることに気づく。特筆すべきは「高校2年夏:最速145キロ超え。甲子園に出場して、ドラフト候補になる」。実際に木下は、昨夏の山口大会、甲子園ともに自己最速の146キロをマークし、4年ぶりの夏の甲子園出場に貢献している。 そして、来る3年春のセンバツ。計画書には、こう記されている。 「高校3年春:センバツで150キロを出す」 西岡が書き込んだ意図を説明する。 「話をするときに、説得力を出そうと、自分も色々なデータを見ました。ここ約10年のドラフト候補を見ると、150キロを出した高校生投手は、まず間違いなく指名されている。自分が調べた限りでは、最速150キロ以上で指名漏れは1人だけでした。だから、3年夏じゃなく、センバツで150キロを出せたら、かなりプロに行ける確率が上がる。木下は身長がある方ではなく(178センチ)、余計に球速が重要になってくると思うので」 西岡の話を聞いて、昨秋の中国大会で木下を視察した、あるプロ球団のスカウトの言葉が頭をよぎった。 「変化球で狙って空振りが取れるし、楽しみだよね。センバツでも上司に見てもらおうと思っています。そのときに、自己最速、欲を言えば150キロを出してほしい。やっぱり、僕らも地区担当として『いいんですよ! 見てください! 』と推薦して、思ったより球速が出ませんでした、だと立つ瀬がなくなっちゃう。だから、説得力をもたせるためにも、球速でもバンッとわかりやすい数字を出してほしいよね」 西岡自身、中学時代に本格派の藤浪晋太郎と競り合い、自分の持ち味を見つめた経験があるからだろう。「ピッチャーと球速について話すことは、ほとんどない」という。その西岡が、口を酸っぱくして「センバツで150キロ」と唱え続ける意味を、木下も理解している。 春の大台突破に照準を合わせ、冬のトレーニングで体の強さを求めた。スクワットでは、もっとも下半身に負荷のかかるフルスクワットでセットを組み、最大で150キロを持ち上げる。秋は体重78キロだったが、現在は80キロに増量し、「センバツまでに85キロまで持っていきたい」と余念がない。肉体改造の成果で、2月初旬の紅白戦では、早々に142キロを計測した。気温1桁台の悪条件であること、ここから再開される実戦で感覚が研がれることを踏まえれば、気温が上がるセンバツでの150キロ到達も現実味を帯びる。
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