ホルムズ海峡の緊迫化に中国が「怒り心頭」の理由…厄介な立場になったイラン・中東の上客「中国」
中国はイランの行動に「怒り心頭」か
そもそも中国は独自の中東外交を展開しており、2023年3月にイランとサウジアラビアの国交が正常化した際の立役者であったことでも知られる。自らのエネルギーの供給源である中東の安定化を重視する中国は、中東では中立外交を貫いてきた。ゆえに中国は、主要国から制裁を科されたイラン産原油を輸入し続けたとも言えるだろう。 中国はイラン産原油の9割を輸入しているとも言われる。中国の機嫌を損ねれば、イランは原油を輸出できず、外貨を稼げない関係にある。そうした一番の得意客の要請にもかかわらず、イランはホルムズ海峡の封鎖し、中国との関係も深い、近隣の中東諸国の産油・精油施設まで破壊した。面子を潰された中国の内心は怒り心頭ではないか。 イランの狙いは、自らを空爆したアメリカやイスラエルに対する反発を国際社会に喚起することにあるようだ。まさに捨て身の戦術だが、同時に他の中東諸国を巻き込むという悪手でもある。これまで中立外交に徹してきた中国によるイランへの働きかけが期待される一方、中国は被害を受けた他の中東諸国にも配慮しなければならない、複雑な立場になった。 対アメリカの観点では、中国はさらに複雑な問題を抱える。まず、中国が前面に出過ぎると、今度はアメリカのトランプ政権を刺激しかねない。それよりも懸念されることは、アメリカから今回の事態の後始末を押し付けられることかもしれない。 いずれにせよ政治の観点からしても、中国にとってイラン情勢の緊迫化は、中東外交戦略を大きく揺るがす、非常に厄介な出来事といっていいだろう。
中国国内の油田開発が加速する可能性
ここで、中国が産油国であることを思い出す人がいるかもしれない。 東北部の黒竜江省にある大慶油田が有名だが、それ以外にも新疆ウイグル自治区(タリム油田)やオルドス盆地(長慶油田)といった内陸部に大型の油田があるほか、渤海には海上油田(渤海油田)も存在する。イラン情勢の緊迫化をきっかけに、こうした国内油田の開発に弾みがつく可能性も意識される。 国内油田の開発を進めて安価な原油を入手できれば、ロシア産などの輸入原油に対する価格交渉力も高まる。加えて、中国は非常に高い製油能力を持っている。これも大きなアドバンテージだ。ベトナムやインドネシアなど他のアジアの産油国が原油価格の上昇に脆弱なのは、国内の製油能力が低く石油製品を輸入する必要があるためである。 ただし、国内の油田開発もまた長期を要するプロジェクトであり、原油価格の安定に直ぐつながるような即効性はない。 結局のところ、イラン情勢の緊迫化は中国にとっても大きな頭痛の種である。アメリカの動きを睨みつつも、中国が今後、イラン情勢にどう関与していくのか。中東との関わりが深い日本もその動向に注目する必要がある。 ※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です
土田 陽介