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2010年代とはNewspicksとケアをひらくの両面のことである  #流通会議室 を終えて

TaiTanさんのPodcast「流通空論」のイベント「流通会議室」に出演してきた。プロデューサー論に始まり、2010年代総括、今後やっていきたいことなど、さまざまな面白さがあったのでぜひみてほしい!(といっても5/29中に購入期限が来てしまうのでおはやめに……視聴は5/30までです!)

のだが、このなかで私とTaiTanさん(ともに93,94年生まれの同い年)が「2010年代の学生時代、文化系の友人たちが一気にビジネス起業界隈に向かった」思い出について盛り上がったのだ。まあようはNewspicksをはじめとした2010年代の「意識高い系のビジネスマンが意外と一番かっこいい」カルチャーって過小評価されているかもしれないけれどあのときは本当に影響力があったのだ、とくに大学生にとっては、という話である。そしてその流れは実は2010年代に電通をはじめとする広告代理店の勢いが落ちていたことと裏表にあり、起業家が言論人になる流れのなかにもあった。……という話をイベントではしたのである。人には人の『花束みたいな恋をした』があり、こないだまで文化系仲間だと思っていた友人たちがベンチャーや外資系コンサルに就職していく風景のちょっとした寂しさというものがたしかにあったのである。って私もベンチャーのインターン行ったから人のこと言えないわけだが。

まあそんな思い出話はともかく、イベント後に「結局2010年代とは何だったのか」ということを考えると、もうひとつ補助線があるのではないか、と感じる。

それはつまり、人文学における「ケアをひらく」シリーズの流行のことである。

じんぶん大賞のyoutube動画でも少し触れたのだが、2010年代後半、人文学の世界では「ケアをひらく」というシリーズをはじめとして、ケアを主題とした書籍の流行が始まっていた。


『中動態の世界』が2017年に小林秀雄賞、『居るのはつらいよ』が2019年に大佛次郎論壇賞、そして2019年には「ケアをひらく」シリーズ全体が毎日出版文化賞に選ばれている。2010年代後半、書籍の世界では、ケアというひとつの主題がたしかに注目されていたのである。

この「ケアをひらく」シリーズの編集者である白石正明さんの『ケアと編集』という書籍が最近出ていたのだが、ここに面白いことが書かれてある。ケアについて書くのは難しい。その理由はどこにあるのか、という点について白石さんは以下のように語る。

 何がむずかしいのか。一つは今の世の中の基本的な価値観と逆のことをやっているからだ。自分の身は自分で守るという「自立/自律志向」とか、最小のインプットで最大のアウトカムを得ようとする「効率志向」にまずは反している。それだけではない。この”志向”という言葉が前提にしていること、つまり「未来の目標のために現在を手段にする」という姿勢そのものから、ケアはかけ離れているからだ。
 むしろケアは「現在志向」だと思う。今を少しでも楽にする。痛いことはしない。この場にある不快をとにかく除去する。そこに居られる「現在」をつくる。

白石正明『ケアと編集』岩波書店、2025


――むしろケアは「現在志向」だと思う。今を少しでも楽にする。痛いことはしない。この場にある不快をとにかく除去する――この言葉の対極にあるのは、まさに同じく2010年代に活躍した編集者の箕輪厚介『死ぬこと以外かすり傷』ではないか。

つまり従来の文化系エッセイが、人文書的ケアをひらくと、ビジネス書的Newspicksに分かれていった軌跡こそが2010年代だったといえるのではないか。――なんてまとめてしまうともちろん雑な物言いなのだけど。

しかしこれはこういうふうにも言い換えられる。

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2010年代とはNewspicksとケアをひらくの両面のことである  #流通会議室 を終えて|三宅香帆
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