東京電力福島第一原発の事故は、周囲に大量の放射性物質をまき散らし、溶け落ちた核燃料が今もほぼ手つかずでとどまる。廃炉や解体作業に伴って出るさまざまな廃棄物を、当面は敷地内で保管するとしても、その先はどこに運ぶのか。答えを見いだすのは容易ではない。
日本で商業原発の運転が始まって60年になるが、放射性廃棄物のほとんどは処分先が未定のままだ。この根源的な課題に改めて目を向ける。
■消えた「本命」サイクル
昨年つくられた政府のエネルギー基本計画では核燃料サイクル計画の項目から「高速炉」という言葉がついに消えた。高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定から今年で10年となり、高速炉は将来実現すべき「次世代革新炉」のひとつという位置づけになった。
原発で使った燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、発電に使う核燃料サイクルは、70年前の原子力長期計画で掲げられた。プルトニウム利用の本命とされたのが高速増殖炉だ。発電した以上にプルトニウムが生まれ、半永久的に繰り返し使い続けることができ、廃棄物もそれほど残らないというのが思い描いた理想だった。
ところが、1990年代に「もんじゅ」が事故を起こして行き詰まると、「増殖」が消え、廃棄物の「減容」や「有害度の低減」が目的として強調されるようになる。
当初の理想からは大きくかけ離れたが、変わらない現実もある。次世代革新炉のうち、高速炉や高温ガス炉、小型モジュール炉は、いずれも人為的な核分裂反応を利用して電気をつくる基本的な原理でみれば初期のころと何ら変わらない。
核分裂反応を連鎖的に起こさせれば、原子核を結合させている力が膨大なエネルギーとなって放出されるだけでなく、やっかいな放射性物質が必ず残る。これが宿命だ。
■減らないプルトニウム
プルトニウムは核兵器に転用されうる物質でもある。
原子力の利用を「平和目的に限る」と法で定める日本は日米原子力協定が延長された2018年に「利用目的のないプルトニウムは持たない」とする原則を改めて確認し、「保有量を減少させる」という方針を決めた。現在、日本が保有するのは44・4トンで、当時から微減したが、依然として高い水準にある。
26年度は、青森県六ケ所村にある使用済み燃料の再処理工場の完成が控える。これまで27回の延期を繰り返しながらも「必ず成し遂げるべき重要課題」に位置づけられる工場がフル稼働すれば、年間6・6トンのプルトニウム生産が見込まれる。
しかしながら、高速炉が頓挫し、プルトニウムを混ぜたMOX燃料によるプルサーマルで細々と消費するしかない。電気事業連合会では、30年までに少なくとも12基の原発でプルサーマルを行う目標を掲げるが、現状で可能なのは4基。プルトニウムを消費できるのか綱渡りが続く。
朝日新聞の社説は、核燃料サイクルから撤退し、再処理を前提とした政策を改めるよう主張してきた。再処理工場の総事業費は15兆円を超え、経済合理性がないのは明白で、セキュリティー上のリスクもつきまとう。コストは電気料金に上乗せされる。工場の稼働は看過できない。
プルサーマルの後始末をめぐる問題も深刻だ。プルトニウムをより多く含む使用済みMOX燃料の再処理技術はまだ確立されていない。膨大なコストがかかり、廃棄物として処分せざるを得なくなる可能性がある。
英国は昨年、100トン超のプルトニウムを廃棄物として地中に処分する方針を決めた。日本もプルトニウムを廃棄物として処分する方法を検討すべき時期に来ている。
■増え続ける廃棄物
核燃料サイクルへの固執は、廃棄物の最終処分をめぐる政策にも矛盾をきたす。
政府は使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物を、地下300メートル以深の地層で処分する方針で、経済産業省と原子力発電環境整備機構が候補地選定を進める。
だが、サイクルの実現を前提にするため、使用済み燃料のほとんどが再利用可能で、廃棄物になるのはごく一部であるかのような説明をしている。あまりに非現実的で、地域住民に対して不誠実だ。
調査が進む北海道と佐賀県の3自治体に続き、経産省は今月、日本最東端にある南鳥島での調査申し入れを明らかにした。本土から遠く離れた島での最終処分は世界でも例がない。経産省は、候補になりうる地域を示したマップで「好ましい特性」が確認でき、国有地であることを挙げるが、マップで同じ位置づけの国有地を持つ自治体はほかにもある。選んだ理由について丁寧な説明が不可欠だ。
処分場ができても、原発を運転する限り廃棄物は増え続け、いずれはいっぱいになる。この当たり前の現実がある限り、基本計画にいう「原発の最大限活用」に持続可能性があるとは到底思えない。
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